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「これにて新装備の試験運用を終了します。色々とありましたが、皆さんお疲れさまでした!」


晴れやかな藤原さんの笑顔と共に挨拶で締めくくられた試験運用。試験以外のことで大きな問題に1つ直面したが、それ以外は順調に事は進み、皆が大きなケガをすることもなく無事に終えることができてホッとしている。


……いや、試験を無事に終えたことに対する安堵だけではない、皆の表情には隠し切れないほどの喜びの色が見えている。


何が彼らをそうさせているのか?今回の依頼の報酬がそれなりに高額だから?いや違う。新装備の試験運用と言う栄誉ある仕事を完遂させたから?これも違う。考えるまでもない、みんながリュウイチさんからもらったドラゴンの素材を心の底から喜んでいるのだ。


あるヒトは防具を、あるヒトは武器を、あるヒトは素材を売却することで得られるであろう金銭に大きな期待を寄せ、そのことを考えると思わず頬が緩んでしまうことも仕方のないことなのだろう。


そんな、みんな妙に高いテンションのまま打ち上げへと移行し、テンションが高いまま打ち上げも終了となる。


気持ちが高ぶっていることが原因だろう。みんながいつも以上にアルコールを摂取しており、そんな場の空気に流されて俺もそれなりの量のアルコールを摂取してしまった。そんな、ほてった体を冷やすためにホテルを出て外を散歩することにした。


『ダンジョン』の中は小春日和の温かい気候であるが、夜間の間は気温が少し下がっている。かといって肌寒いというほどでもないので、少し体を動かすにはちょうどいい温度だともいえるだろう。


行先もないので適当にウロウロとしていると否が応でも目に入って来る、現在建築中の大きなお屋敷。


『前線基地』では今でも様々な場所で様々な建物が建築されており、種族を問わず多くの建築関係者が額に汗を流しながら懸命に働いている。しかし今はあらゆる建築物の工事はいったん中止されており、全リソースは俺の目の前にある屋敷を建てることに注がれていた。


昼夜を問わず工員が働いているため絶え間なく工事の音が聞こえてくるが、流石は夜間の間はあまり音が響くような工事をしていないので騒音で問題になったという話は聞いたことはない。


いや、仮に多少騒音が耳障りであったとしても、あのお屋敷がリュウイチさんのものであると聞けば、多少の溜飲は下げざるを得ないはずだ。


そんなリュウイチさんは『協会』や各所属の代表と話し合いの場を設けた後も、ホテルの大広間に滞在している。


何が目的かなのか?そんな答えの分かり切った疑問を口にする関係者は皆無だろう。皆が分かっている、彼はニホンの食事や文化をこの上なく気に入ってしまい、何もない『新天地』に戻るのが嫌になったのだということを。


自分の鱗やら牙が高く売れることを知っていて、それを対価として支払うことで『ダンジョン』の中に自分の家を建てることをアッサリと決めた。


流石にニホンの地をふむことは尚早であると理解しているらしい。だが、いずれは……そんな考えもあるのか『協会』や『ダンジョン』関連の企業の役員との会合にも積極的に顔を出して自分の無害さを必死にアピールしている。


『協会』も、実力はもとより知識も豊富で分別を弁えるだけの理性もあり、なによりもキチンと対価を支払うという道理にかなった行動をするリュウイチさんの要請を断ることはできなかった。そうして方々に手をまわしてお金を作り、あらゆる業界にこれまでの恩を返してくれとばかりに要望をして早急に彼の立派なお屋敷を建てる運びとなったのだ。


ちなみにヒト型になっているとはいえ彼はかなりの大きさだ。そのため既存の日用品では不便も多いとかで彼専用のすべてが大きめに作られた特注品を一から準備しているらしく、これもまた手間暇とお金がかかっていて工事責任者は大変な目にあっているとのことらしい。


そんな『協会』の尽力を知ってか知らずか、当の本人であるリュウイチさんは会合の日以外は極めて自堕落な日々を送っている。具体的には日に三度の食事と二度のおやつの時間以外は、ゲームか漫画かネット三昧の日々を楽しんでいるとのことだ。


創作物では人型のドラゴンを『ドラゴ()()()()』と呼ぶものもあるが、彼の場合だと『ドラゴ()()()』と呼ぶのがふさわしいだろう。もちろん本人の前では言えないけれど。まあ知られたとしても、笑って許してくれそうではあるけどね。


………そろそろホテルに戻って風呂に入って眠ることにするか。リュウイチさんが発見されてから彼を一目見ようと各種族、各分野からもこの『前線基地』にヒトが大挙して押し寄せている。


そのためホテルの予約はかなり先まで埋まっているらしい。チェックアウトギリギリの時間まで滞在してはホテル側にも悪いので、朝食を食べたら明日は早々に出発することにしよう。

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― 新着の感想 ―
>ドラゴニート その発想はなかったw 
ドラゴニート(笑)
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