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「…えっ?ホントに食べちゃったんですか?」


「いや、大丈夫って言ったのは服部さんじゃないですか。もしかして…実は人体に有害な物質が含まれていたとか…?」


「そのような話は聞いていませんが…でも、まさか、本当に食べられてしまうとは…いえ、人体実験がまだでしたので良い被検体見つかったことを喜ぶとしましょうか」


多分最後のセリフは冗談のつもりだろうが、俺からすれば微妙に笑うことは出来なかった。まぁ、これと言って体調が悪いということもない。どうせ誰かは一番最初というものを経験しなくちゃいけなかったことだ、それがたまたま俺になったという事だ。


『ダンジョン』解放後も趣味として野菜の栽培を続けるのも悪くないだろう。なにせ完全無農薬の野菜だ。きっと、スーパーで売られている野菜よりも健康に良いはずだ。ま、残留農薬を気にするほど、健康に気を遣って生きているわけではないけどな。


「綿花の方はまだ花も咲いていないみたいですね。それは生育期間の違いでもあるんでしょうが」


「みたいですね。ですが既に芽は出ていますし、直に花も咲きそうな気もしますが。春に種を植えて綿花からコットンボールとかいう奴が収穫できるのは秋ごろらしいですが、ダンジョンの気候は一定ですからその辺りがどう影響してくるのか」


「こればかりは、その時になってみないと分かりませんからね。…と、そう言えば、ダンジョン産の植物を買い取らせてほしいと協会から要請がありました。よろしければ綿花を含め、いくつか買い取らせてもらってもよろしいでしょうか」


「もちろん構いませんよ。実はこちらからも一つ頼みたいことがあったんですが」


実家に帰るため、その間プランターの植物に水をやっておいて欲しいと頼むことにした。元々『ダンジョン』の中で野菜を育てるのも場当たり的な考えであり、家を空ける間のこととかは深く考えてはなかったのだ。


当然こんなに早く結果が出ることなど予想できるはずもない。かと言って、ここまで育てた?ので、水やりをさぼって枯らしてしまうのは心が痛む。よって『ダンジョン』の中で研究をするという職員に水やりだけでも頼めないかとお願いすることにしたのだ。


服部さんも年末年始は仕事をちゃんと休むタイプらしく、他の職員さんに頼めないか聞いてくれるとのことだった。気分転換と、野菜の急成長の理由を考察する職員もいるだろうから問題ないだろうとの事で、安心して実家に帰ることが出来そうだった。


そうして憂いを無くした俺は親戚の待つ実家に帰ることにしたのだ。







年末年始を実家で自堕落に過ごし、祖父とその兄弟を招いて『ダンジョン』を発見したこととその管理をすることを伝えた。羨まれることも権利の一部を返せとも言われることなく、円滑に話が進んだのは僥倖であった。


藤原さんから聞いた話だと『ダンジョン』の発見によって、そこから生まれるであろう莫大な金銭に目がくらみ、親族同士のドロドロとした闘争もあるとのことだったので多少身構えていたが、そういったことが無かったのは祖父とその兄弟の人格が素晴らしく、また関係が良好であったためであろう。そのことに素直に感謝し、今後彼らが困ったことがあれば全力で協力をしようと心に誓った。


そうして久方ぶりに自宅に戻った俺は『ダンジョン協会』の職員さんが水をやり、十分に成長しきった野菜を消費する日々を送った。もちろん職員さんにもおすそ分けを渡したが、思ったよりも大量に収穫できたので三食ほうれん草のおひたしを食べる羽目になったのは少しばかり想定外であった。


と、言うのも、当初は間引きするつもりで多めに蒔いた種すべて大きく成長してしまったのだ。野菜が育つための栄養がどこからきているのか気になったが、そもそもこんな短期間で野菜が成長することすら異常なのだ。深く考えるのは止めることにした。


しばらくの間はのんびりとした日々を過ごすことが出来たわけだが、いよいよ『ダンジョン』の開放日が近づいてきていた。


期待と不安が入り混じった感情になる。果たして俺の『ダンジョン』が人々に受け入れられるのだろうか。


その不安からか、俺が『ダンジョン』の近くの空き地を整備して作った駐車場の駐車料金は1日停めても500円と言う格安設定だ。1台当たりの収入は微々たるものだが、幸い土地はめちゃくちゃ広いのでかなりの数の車を停められるようになっている。薄利多売?というやつだ。


…人がいっぱい来てくれると嬉しいな、借金もあるし。

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肥沃な状態が土の正常な状態で自動修復され続けるとしたら肥料もいらず連作障害もない畑になる?
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