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「ほほう…まさか『クラッシュライノ』を一発で捕縛できるとは。この『ネットランチャーMk-2』、聞いていた以上の性能ですね」


目の前に網で拘束されているとは言え、全長10メートルを優に超える巨大なモンスターを前に呑気に語る藤原さん。


『クラッシュライノ』は気性も荒いうえに肉食性であり、顔全体が強固な骨の外骨格に覆われて口は猛禽類のように鋭くとがった嘴が、頭からは直径20センチを超える太くて長い角が2本も生えている強力なモンスターだ。


その反面、頭が重いためか動きは鈍重で俊敏性と機動性には欠けているが、その頑丈な頭をその角ごと振り回せば並みの相手なら一瞬で無力化できるため、この過酷な生存競争が行われる『新天地』でもトップクラスのヒエラルキーに位置している。


そんな強大なモンスターの弱点が、戦闘力のほとんどを頭部に依存しているため胴体の方がおろそかになっている点といえるだろう。とはいっても、自動車でぶつかったぐらいではうんともすんとも言いそうにないほど頑丈そうではあるので『弱点』というのは言い過ぎなきがしないでもないが。


と、まあ、そんなところに目を付けたのが藤原さんだった。Mk-2の試験運用とするならなかなか良い相手だと判断し、エルフに索敵を任せてクラッシュライノを探し出す。そうして苦労して見つけたヤツの、その脆弱とは言い難いが、それなりに頑丈そうな胴体に向けてMk-2を放つ。


網は以前の物よりも更に強化改造が施され、編み込まれた針にはより強力な麻痺毒が塗布されているらしい。動けば動くほど網は複雑に絡まり、針によって付けられた傷口から麻痺毒が体内に入り、血液の循環とともに体中に回っていき体の自由を奪っていく。


そうして10分もしないうちにクラッシュライノは無力化され、今のように力なく横たえているというわけだ。


「網も強靭そうですが、麻痺毒の方も強力そうですね」


「ええ。ですがこの方法で倒すとモンスターのお肉は食べられなくなっちゃいますが、緊急時においてはこれほど心強いものはないでしょうね。お値段も相応なものではありますが、いざというときの保険と考えておけばそれほど高価とも言えませんね」


今回『協会』が技術面で協力したというのがこの麻痺毒らしい。


モンスターからドロップされる毒を『薬学士』の『エクストラスキル』を持つ方が『錬金』する。そうした幾人もの一流と呼ばれる人たちの手が入ることでようやく完成にこぎつけたのだとか。


「この麻痺毒、単品で売らないんですか?あらかじめ武器に塗っておけばかなりの成果をあげそうですが…」


「聞いた話ですとこの麻痺毒、空気に触れるとすぐに毒性を失っていくらしいんですよ。ですからこのMk-2の網が入っている部分を特殊な空気で満たした後はすぐに密閉して、毒性を失わせないような措置が施されているんです」


「なるほど。……ん?毒性が失われるなら、お肉は食べられるんじゃないですか?」


「食べることは可能ですが、毒のせいで肉がトンデモなく臭くなるらしいんですよ」


「なるほど、そいつは致命的だぁ」


網が絡まった状態のまま命を頂戴し、借り受けたマジックバッグに収納する。網がどのように絡まったのかとか、どの部分に負荷がかかるのかも含めて研究するとのことらしい。そうして研究を重ねたうえで、ようやく市場に売り出すことになる。こうした商品のお値段がお高い理由がよくわかるというものだ。


そうして映像を撮りながら、さらに幾体ものモンスターをマジックバッグに収納していく。そうしてほどほどに時間が経過したので、そろそろお昼ごはんにしようという運びになった。


「今日はビーフシチューを持ってきました」


「いいですねぇ。疲れた体には味の濃いものがベストです」


「ゾウ印さんから供与されたお鍋に入れて持ってきました。あ~~イケナイ。時間が経っているからビーフシチューが冷えちゃった。でも大丈夫!なんとこのお鍋、蓋についているポッケに魔石を入れてツマミをまわすと再加熱することもできるんです!」


「「「ええ~~っ!」」」


「し~か~も!本体が自動回転をするので加熱時も鍋底が焦げ付く心配も無し!そんなお鍋が今ならなんと!」


「「「なんとっ!」」」


「……すみません、お値段は聞いていないので分かりません」


「そりゃ残念。ま、どうせ帰ったらわかることだからな。詳しいことは帰ってから調べることにしよう」


エルフやドワーフの反応が面白かったので、ついつい通販番組っぽく話を進めてしまった。


さてと、ご飯の準備に取り掛かることにしよう。これだけの人数の食事ということで、かなり大きな鍋を複数持ってきている。それを『収納』から取り出し、付け合わせのパンの準備も進めて……ん?どこからか視線を感じるような……

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