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「なるほど、確かに鶏卵よりも大きいですね」


「でしょ?黄身の部分も濃いオレンジ色で、高級感がありますよ」


殻の色は茶色を更に濃くした焦げ茶色に近い。遠くから見れば地面の色に紛れて発見することが難しいだろう。聞けばこの卵を産むモンスターはとても弱いらしく、今のように家畜化される前、少しでも敵性モンスターに発見されないために独自の進化を果たしてきた結果なのかもしれない。


俺は河村さんに連れられて少しこじんまりとした食料品店にやって来ていた。王都には百貨店のように品ぞろえが豊富な大きなお店もたくさんあるが、新鮮な食材を入手するのはこうした場所の方が良いとのことだ。


そこで卵を始めいくつかの食材を物色。ハヤトが最初から強い興味を示していたお肉も含めて諸々を手に取り買い物かごの中に入れていく。


そして買い物かごをお支払いをする台の上に乗せ購入する段階になってようやく、自分が値札をあまり気にしていなかったという事に気が付いた。値段をあまり気にせず買いものをする。俺も随分とブルジョワになったものだと感慨深い気持ちになった。


と言ってもココはごくごく一般的な食料品店だからな。トンデモなくお高い食料品などは置かれていないと聞いていたので、最初から値段を気にせず安心して買い物をすることが出来たという訳だが。


店から出ると空の端の方がわずかに赤く染まっていた。河村さんに案内され、そこかしこを回っていたから自分が思う以上に時間が経っていたのだろう。


「さてと、そろそろ帰りましょうか」


「ですね。今日は一日付き合っていただいてありがとうございました」


「いえいえ。私もよい雑談相手がいて楽しかったですよ」


帰りの道中もそこそこ回り道をしながらの移動であり、屋敷に着く頃には辺りが暗くなり始めていた。


屋敷に入り、リビングに行くと何人もの知らない人がいた。河村さん、そして島田さん以外のここの住民達とのことだ。山田さんがあらかじめ話を通してくれていたらしく、すんなりと受け入れてくれた。


そんな彼らに軽く挨拶を済ませて一度自分の部屋に戻って買って来た物を整理し、再びリビングに顔を出す。


朝昼は自前だが、夕食だけは雇った家政婦さんのようなエルフが作ってくれているとのことだ。もちろん俺もこの屋敷に泊るという情報は伝わっており、俺の分の夕食もちゃんと用意されていた。


ちゃんと挨拶をしておきたかったが、俺が帰る前に屋敷の雑務と夕食を作り終えていたとかですでに帰られていた。まぁ、明日以降も会う機会はあるはずだ。その時にでも構わないだろう。


本日の夕食は具がたくさん入ったポトフのようなスープと色とりどりのサラダ、そしてバスケットボールぐらいの大きさもあるパンがいくつも用意されていた。残ったパンは明日の朝に食べる人もいるので多めに用意してくれていたのだろう。


それを各人食べる量を皿に盛り、自分たちのタイミングで食べ始めるという寸法だ。


リビングには大きなテレビがあり、そこでニホンのニュースが流れている。これも『協会』が何かしらの手段で視聴できるようにしてくれているのだろう。


「テレビは見れるしネットも繋がる。何というか、異世界感ってのがあんまりありませんね」


「そのうえニホン語も何不自由使えますからね。まぁ正確に言えば、彼らとは違った言語を話してはいるようですが……」


俺がハヤトの夕食の準備をしている間に、河村さんが俺の食事の準備もしてくれていた。お礼を言って席に着き、雑談を続ける。……このスープ美味いな。シンプルな作りだからこそ、具材である野菜やお肉の旨味が引き立っている。


「結局、なぜ互いの言語が通じているのかって理由は不明なんですよね?」


「学者さんはそのことで頭を悩ませていますが、私たちのような比較的若い世代だと子供時代にダンジョンが出現した影響で摩訶不思議が普通な世の中でしたから、その原理とか法則とかをあまり気にせず付き合うことも出来ますからね」


「あの頃はホント色々ありましたよね……自分なんて好きなアニメや特撮番組がダンジョン関連の情報番組で潰れて、腹が立った記憶が未だに残っていますよ」


「あ!私もです!」


その後は河村さんと好きだったテレビ番組の話で盛り上がり、その騒ぎを聞きつけてやってきたここの住民とも盛り上がる。


現在トゥクルス共和国に派遣されている世代は比較的若い人達が多いからな。結構話が合うのだろう。そうしていつの間にか夜が更けていき、楽しい気持ちで床についた。

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