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「お~~っ!流石、元はお金持ちのお屋敷だけあって部屋の内装とかも豪華ですね」


しばらくはこの国で生活するため、生活拠点とするため空き部屋の1つを使用することにした。どの部屋も高そうな家具は勿論のこと映画でしか見たことが無いような天蓋付きのベッドまであり、1人と1匹だけで使ってしまうのはもったいないと思える程の広さと快適そうな空間であった。


『協会』の支部で借りた、来客用の布団をベッドに敷きながら窓を開けて部屋の中に風を通して空気の入れ替えをする。別に空気がよどんでいたとかではないのだが、新しい環境でする一種の儀式の様な感覚だ。空気の入れ替えをしている間、職員さんに気になっていたことを質問することにした。


「電気が使えるのも驚きましたが、まさかネットにまで接続できてしまうとは……」


「色々と苦労しましたよ。まぁ、支部が近くにあるおかげで楽になった部分もあるんですけどね。でもそのおかげで、コチラで生活を送る人たちも大分仕事がやり易くなったと大好評ですよ」


異世界特有の謎の物理法則によって今はまだ支部の近くにしか電波が届いていないらしいが、その技術的な問題もいずれは解決されるだろうというのが『協会』の導き出した答えらしい。


その技術がトゥクルス共和国を始め、コチラの世界にある国に広めていくことが出来ればそこから生み出される利益は計り知れないものになるだろう。


回収できる見込みのある投資は人気がある。話を聞いていくと『協会』としても、思いのほか簡単に出資者を集めることが出来て万々歳。ここはそのための技術の試験場的な意味あいもあると考えると、これほど恵まれた環境にある理由にも納得がいくというものだ。


そして部屋の中を色々と見てみるが埃ひとつ見つからない。普段からしっかりと手入れされているのだろう。ありがたいことだ。部屋の空気の入れ替えも終わったので、最後にハヤトの寝床を設置して職員さんと一緒に1階にあるリビングに戻った。


リビングにも極めて現代チックな文明を感じさせるような品々が置かれている。


大型テレビに高級そうなステレオに給湯器なんかもあり、驚いたことにマッサージチェアなんかも置いてある。そのどれもが、かつてこの屋敷で生活をしていたニホンから派遣された企業戦士からの寄贈品らしく、今この屋敷に住んでいる住民たちも感謝しながら使用しているとのことだ。


「トゥクルス共和国に来られている人たちはもっと不便な感じの生活を送られているのだと思っていましたけど、かなり文明にあふれてて充実していそうですね」


「私も新参者の部類に入るので檀上さんの気持ちはよく分かります。ホント、ここまでの環境を整えて下さった先達の方々には頭が上がりませんよ」


腕を組みウンウンと頷きながら話す職員さん。


とりあえず、思っていたよりも遥かに早くに部屋の準備が終わったので職員さんと一緒に給湯器でお湯を沸かしてお茶を飲むことにした。幸いにして贈答用として菓子の類はかなりの貯蔵があるので、それを食べる。


「羊羹は久しぶりですね~」


「贈答用として持ってきたんですよ。日持ちもしますし、ニホンの伝統的なお菓子ですからコチラの文化を知ってもらうって意味でもちょうど良いかなって思ったんです」


「ナルホド、おもしろい着眼点ですね」


他にも芋けんぴやらお煎餅とかも大量に持ち込んできている。研究所近くに住むエルフに味の評価などを頼んでいたのだが、どれもこれもが高評価であったので安心して持ってくることが出来た。


もっとも評価を頼んだのがかなり前から研究所近くで生活を送っている、役職だけは駐在武官という立派な立ち位置にいるである御二人なので、味覚が完全に『コチラ』側に寄っている可能性もあるのでその点だけは不安点だったのだが……ま、多分大丈夫だと思いたい。


しばらくの間他愛のない雑談に興じていると玄関の方から扉を開く音が聞こえて来た。その後ペタペタと廊下を歩く音が聞こえて来て、リビングの扉が開かれる。


「おや、山田さんどうされたんですか?……っと、そちらの方は初めてお目にかかりますね」


「おかえりなさい、河村さん。コチラ、この屋敷の所有者である檀上さんです。そしてアチラが河村さん。某お菓子メーカーの社員さんです」


河村さんと呼んだ人に俺を紹介し、そして俺に河村さんを紹介する。……言葉にするとややこしいな。それにしても、この職員さんの名前は山田さんだったか。最後まで思い出すことが出来なかったな。情けない。


「貴方があの……初めまして檀上さん。先程紹介に預かりました河村です。以後よろしくお願いします」


「檀上です。コチラこそ、よろしくお願いします」


パッと見は動きやすそうな服装に身を包んだ、体格のいいお兄さんと言った風貌だ。仕事着がスーツ姿でないことに違和感を覚えない程度にはこの国での生活に慣れた気がする。


偏見ではあるのだが、お菓子メーカーの職員さんは試食をしまくってポッチャリって印象ではあるのだが、この人はどちらかと言えば体全体が引き締まっていて筋肉質って体形だ。まぁ、異世界なんて不明な点も多くある場所に派遣されているような人だ。体力がある若い人を中心に選ばれていたのかもしれないな。

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