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「確か檀上さんが来られた目的は、ご自身のお屋敷を確認するために来られたのでしたよね?」


「ええ、詳しい場所を全く覚えていないので場所を教えてもらえますか?」


「もちろん構いません。まあ、わざわざ説明する必要はないんですけどね」


「と、おっしゃいますと?」


「この建物の、道を挟んだ向かい側にある建物が檀上さんに譲渡されたお屋敷ですから。よろしければ、ご案内しましょうか?」


距離が離れているのであれば遠慮したであろうが、近くにあるというのなら話は別だ。せっかくの提案だしご好意に甘えさせてもらうことにしよう。


「よろしくお願いします」


ハヤトを起こして部屋を出る。その後長い廊下を抜けて支部のある建物を出て、庭を通って道に出る。目と鼻の先にはあるのは間違いないのだが、庭も建物もついでに道も広々としているので思っていたよりも移動に時間がかかるのが面倒に感じるな。


……ふむ、なるほど。金持ちにスマートな体型な人が多いのは、家が広くて歩く距離が長くなるからと見た。多分違うだろうけど。ちょっとした移動にもそんなしょうもないことを考えてしまうということは、俺にはやはり手の届く範囲に必要なものがすべて揃っている、こじんまりとした生活が似合っているということなのだろう。


「協会の職員さんが屋敷の管理をして下さっていると聞いています。本当に感謝の言葉しかありませんよ」


「いえいえ。コチラとしても、トゥクルス共和国で活動されているニホン人の為に、拠点となる建物を提供していただいていることを感謝していますよ」


「まあ、普段俺がコッチの世界にいませんからね。人が住んでいた方が屋敷の方も喜んでいるでしょうし……っと、そういえば、協会の職員さん達はどこで寝泊まりをされているのですか?もしかして俺の屋敷とかですか?」


「支部のある建物の2階になりますね。建物自体が広くて空いている部屋がいくらでもありますので。通勤時間もゼロですし、夜寝る前とかに、ふと気になった仕事の確認なんかもすぐに出来るんで色々と都合がいいんですよ」


これが鍛え抜かれた一流の『社畜』と言う人間のはく言葉か。


といっても、俺もリーマン時代は寝ている間にも、ふとした瞬間に仕事のことが気になってしまって、目が覚めてしまった経験を何度も経験しているのでその気持ちも分からなくはない。それを思えば、今のストレスフリー……とまではいかないが、あまりストレスを感じない生活環境は天国にも思える。


「さて、それでは中に入りましょうか」


いよいよ到着した俺の屋敷の玄関の扉を開け広げる。広い玄関を抜けて広い吹き抜けを通り過ぎ、長い廊下を進むとソファーやらテーブルの置かれているリビングのような広々とした部屋に到着した。


「空き部屋が各住民に与えられ、リビングやキッチン、お風呂や洗面所といった場所は共同です」


要するにシェアハウスのような形態になっているとのことである。


個人部屋の数は18ほどもあり、そのうち15部屋が埋まっているとのことだ。今は平日の日中という事もあり人の気配を感じないが、大体夕方を過ぎたあたりでパラパラと人が帰って来るとのことらしい。


「基本的な管理作業は私達と現地で雇ったエルフの方にも任せていたりもしますね。仕事が忙しい時は、彼女にまかせっきりになってしまいますが…」


「職員さん達の仕事はあくまでも支部に関する方面ですからね」


「たまに仕事を依頼する、とある『スキル』を持つ方などは重宝させていただいていますよ」


「とある『スキル』?」


「〈清掃魔法〉という、メチャクチャ便利な『スキル』です。この『スキル』を使うと埃とかは勿論のこと、しつこい油汚れや水垢、頑固なカビなんかも綺麗に消すことが出来るんです」


「へ~~、世の中にはそんな便利な魔法なんかもあるんですね」


「ニホンにはこの『スキル』を持っている人はいません。習得には何か特別な条件がいるのか、はたまた人間には習得することが出来ない魔法なのか。『ダンジョン』が発見されてかなりの月日が経過していますがまだまだ分からない事だらけですよ」


ヤレヤレといった感じで話してはいたが、それほど面倒だと感じているようにも見えなかった。世の中は分からない事があるからこそ面白いと感じるタイプの人なのかもしれないな。


ちなみにだが、その〈清掃魔法〉なる『スキル』を持つエルフさんはかなりの高給取りなのだと聞かされた。確かにそんな便利『スキル』があるのなら、どこのお屋敷からでも引っ張りだこだろうからな。


ニホンではスキル=暴力というイメージがあって、スキルを持っている探索者に恐怖を感じ敬遠している人も一定数いると聞いたことがある。しかしコッチの世界では、スキルがいい感じで生活に溶け込んでいるって感じがしてチョットほっこりした気分になった。

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