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明けて翌朝。窓から差し込まれた朝の気持ちのいい温かな陽ざしによって目が覚めるという何とも贅沢な方法によって目を覚ますと、まるでそれを見計らったかのようなタイミングで部屋の扉がノックされた。


「おはようございます檀上様。朝食の準備が整いました」


「おはようございます、すぐ行きますね」


ソファーの上で寝ていたはずのハヤトがなぜかベッドにいた。しかも枕を半分以上も占拠している。寝ている間にハヤトが俺の頭の位置を動かしたのだろうか、寝違えたみたいで首にちょっと違和感がある。


思うところはあったが気持ちよさげに熟睡していたハヤトを揺すって起こし、服を着替えて一緒に客室から出た。


広い屋敷と言っても何度も通ったということもあって、客室から食堂までならなんとか迷わず行くことが出来る。食堂に到着した俺に気が付いたのか新聞を読んでいたアルベルトさんが顔を上げた。


「おはようございますアルベルトさん」


「おはようございます檀上殿。昨夜はよく寝られましたかな?」


「ええ、おかげさまで。自宅の布団よりも高価な布団だったおかげか、いつもよりぐっすり眠ることが出来ましたよ」


ぐっすり眠っていたせいで、頭を動かされても起きなかったのだろうか。……いや、ハヤトが俺の頭を動かしたという確たる証拠はどこにもないんだ。変に疑ってしまえばハヤトが可愛そうだ。


「それはそれは。もうすぐ朝食が来ます。どうぞお座りになってお待ちください」


アルベルトさんに促されるままに席に座った。するとすぐに朝食が俺とアルベルトさんの前に配膳され始めた。多分、俺が来るのを待っていてくれたのだろう。昨夜に続き、こうまで丁寧に接待されると更に申し訳ない気持ちになる。


朝食はサンドイッチだった。ただ、中の具材は俺が知っているような普通のハムやらタマゴではなく、俺が知らないような、つまりメッチャ高級そうな肉厚ジューシーなハムやら色も濃くて見るからに濃厚そうなタマゴが挟まれていた。


イヤイヤ待てよ、と。もしかしたらすごそうなのは見た目だけで、味は大したことないってパターンだってあるじゃないかと。そう思い、一口かじって食べてみる。


―――旨い。


焼きたてと思われるパンから香る穀物の香りと、肉厚でありながら簡単に嚙み切れる柔らかくジューシーなハムとの相性はバツグンだ。そこそこのボリュームであったハムが挟まれていたサンドイッチをあっという間に平らげてしまう。


そして、間を置かずに二つ目のタマゴが挟まれているサンドイッチを手に取り口に運んでしまう。これもまた当然のように旨い。タマゴ本来の美味しさを極限まで引き出したようなコイツは、パンに塗られたマヨネーズの酸味と少量のからしの辛味によっていくらでも食べられそうな中毒性がある。


2つ3つと食べまくり、食後のフルーツまでちゃっかりと完食してようやく俺の手を止めることが出来た。が、その代償はあまりにも大きかった。


「うっぷ……」


「だ、だいじょうですか?」


朝から食べ過ぎお腹がキツイ。アルベルトさんに心配されてしまった。食事をご馳走になったうえに心配までさせてしまうとは……正直な話、恥ずかしすぎる失態だ。


「すみません……その……食事があまりにも美味しくって…」


「その話を聞けばうちの料理人も喜ぶでしょう」


嬉しそうに微笑んでいるアルベルトさん。気分を害しているようには見えないのが唯一の救いだな。


食後のお茶を飲みながらマイ胃袋が消化してくれるのを待ち、何とか動けそうになったタイミングで客間へと戻った。


「一応戻っては来たけど、この部屋で特にすることも無いんだよなぁ」


ハヤトの頭を撫でつつ独り言を零す。荷物はすべて〈収納〉の中に入っているのだ。わざわざこの部屋まで戻る必要はなかったのだが……まぁいいか。最後にこの部屋から見える庭の美しい景色を記憶しておこう。


ほどほどの時間が経過し、十分に動けそうになったので、使用人さんを呼んでお暇させてもらう旨を伝えた。

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