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「お待たせしました」


そう言って松重さんがお茶とお茶菓子、そして皿に盛ったフルーツをお盆に乗せて持ってきた。彼の足元に猫がじゃれついている。多分皿に盛られたフルーツが目的なのだろう。


テーブルの上にお茶とお茶菓子を置き、ハヤトの目の前にフルーツの盛られた皿が置かれた。ハヤトが俺の許可を求めてくるような視線を送って来る。“松重さんにお礼を言ってから頂きなさい”というと、松重さんに向かってひと声吼えて、フルーツを食べ始めた


「すみません」


「いえいえ、ちょうどこの子達にも用意するつもりでしたので」


そう言ってハヤトに上げた物とは違う皿を床に置くと、松重さんの足元にじゃれついていた猫は勿論のこと、さっきまで大人しく俺に撫でられていた猫までもその皿の中身に夢中となる。…なんとなく、寝取られたような気もしないでもない。


ハヤト達も美味しそうに食べているので俺もお茶菓子を頂こう。ちょっと高級そうな雰囲気を漂わせるカステラだ。フォークで切って口の中に入れる。……うん、甘すぎない上品な味。まず間違いなく高い奴だ。


口の中の甘味を中和するためお茶に口をつける。……美味い。それにしても、つい最近どこかで飲んだことがあるような味だが…


「もしかしてこのお茶、トゥクルス共和国産のものですか?」


「よくご存じですね。その通りです」


「つい最近、飲む機会があったものでして」


美味い食べ物と美味い飲み物があれば自然と話は盛り上がる。


「ニホンからの輸出品も、トゥクルス共和国からの輸入品も、全てはこの村を経由して各地に運ばれて行きますからね。村の外には大きな集積場もありますし、この村では両国の産物が比較的簡単に手に入るんですよ」


「なるほど……あっ!そういえば、さっきこの村にあるラーメン店に行ってきたんですが…」


「味がニホンの物と差が無いことに驚かれたのでは?」


「ええ、その通りです。もしかして、こうして日本の物が手に入りやすい環境が影響しているという事ですか?」


「そう言う事です。最近では他の飲食店の出店も計画されているとかで、私としてもニホンの味が簡単に食べることが出来るようになって嬉しい事このうえないですよ」


やはりと言うべきか何と言うべきか。俺のこの国に日本の食べ物を出す飲食店を出すという計画は、計画を立てる前に頓挫してしまったというわけだ。まぁ、最初からあまり期待していなかったので喪失感とかは一切ないのだが。


「そう言えば、松重さんはどうしてこちらに?」


「研究の一環です。地球の動植物がコチラの世界で生活すれば、どのような影響があるのかというね。ここに猫達もいますが、他の場所ではネズミやら昆虫、植物なんかも育てています」


「それはまた、随分と難しそうな案件を……ちなみにですが、動物たちに何か変わった現象とかが起きたりしたんですか?」


「しばらくコチラで育てていた動物たちなんですが、いつの間にか『スキル』を獲得していたんです。モンスターを倒さずとも『スキル』を獲得できる。少し前までならトンデモない発見でしたが、檀上さんの『ダンジョン』が発見された後だと、どうしても見劣りすると言いますか……」


俺の『ダンジョン』が発見される前なら、確かに安全に『スキル』が獲得できる環境というのはとても素晴らしいものだったのだろう。しかし『トノサマンバッタ』という最弱にわをかけた様なモンスターが発見された今、そちらを倒して『スキル』の獲得の方が楽であるのだろうな。


そういえば、松重さんの話だとこの猫たちも『スキル』を獲得しているというわけか。〈鑑定〉を発動……ナルホド、確かに〈忍足〉という『スキル』を獲得しているな。


ただ、使う機会がないのかスキルレベルは1のままだ。ま、ここにいれば衣食住の心配はいらないもんな。満たされた生活を送っていれば、わざわざ努力してまで研鑽を積む必要はないという事なのかもしれない。

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