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気のいいエルフの兄さんとしばらくの間雑談に興じる。日本のことをたくさん聞かれたのでたくさん答え、トゥクルス共和国のことをたくさん聞いてたくさん答えてもらった。


初めてのことを見聞きするのは思いのほか楽しくアッという間に時間が過ぎ去り、それに伴ってラーメン屋の前に並んでいた行列もアッという店内に消えていく。


「じゃぁな、あんちゃん。また機会があれば!」


「ええ、色々と教えて下さってありがとうございました」


「なぁに、気にすんな。こっちも面白い話を色々と聞けて楽しかったぜ!」


店員さんが店から出て来て“次のどうぞ”と言い、その案内に従ってエルフの兄さんが店内へと入って行った。話に夢中になっていたのであまり気になっていなかったのだが、俺の後ろにもすでに何人も並んでいた。


やはり、かなりの繁盛店なのだろう。俺もこの村でニホンの食べ物を出す飲食店を開けばそれなりに儲けることの出来る可能性も……まぁ、無いわな。


ノウハウも無ければ食材を仕入れるツテもない。そんな初めて尽くしの状況では失敗するのは目に見えている。それに何よりも、俺程度の思いつくことが他の企業の方が思いつかないとは思えないのだ。


トゥクルス共和国に商機を見出した企業はすでに行動に移しているはずだ。そんな中にド素人の俺が顔を突っ込んでも、ド突きまわされた後に排除されるのが関の山。大人しくただのお客として付き合うのが一番だ。


そんな事を考えていると、店員さんが“次の方どうぞ”と、俺を呼びに来た。いよいよ俺の番か。エルフの作ったラーメンとやら、俺が吟味してやるわ!!


………と、意気込んだのはいいものの、ハヤトが俺の方をジッと見つめて来た。『俺を置いて自分だけ美味い物を食いに行くのか?』そんなことを考えているような表情だ。…スマン、今日の晩飯には高級ドッグフードを出してやろう。悪いが、それで許してくれ。




「あ、どうも」


「お、おう……」


俺が案内されたカウンター席の隣には、先程別れたばかりのエルフの兄さんが少し気まずそうな表情で座っていた。隣人が食べ終わって席を離れ、その席を清掃し終えた店員が次の客を店内に入れようとしている姿を見て俺が隣に来ることを事前に察していたのだろう。


さっき爽やかに別れの挨拶をしたばかりなのだが……何というか少し気まずい。互いに苦笑いをしつつ俺は案内された席に着きメニュー表を開いた。


……が、当然ながらエルフの言語は読めない。見栄を張らず助けを乞う事にした。


「すみません、おすすめの商品は何ですか?」


「ん?…あぁ、こっちの文字が読めないのか。そうだな…やっぱ、ラーメンセットは鉄板だな。何を頼むか悩んだ日でも、これを頼んどきゃとりあえず失敗は無い」


腕を組み、堂々とした態度で教えてくれた。会話のきっかけが出来たことで気まずさもちょっと和らいだ。店員さんを呼んで注文して、引き続きエルフのお兄さんとの会話をすることにした。


「この後この村のことを色々と見て回ろうと思うんですが、どこか珍しい建物とか建造物とかあったりしませんか?」


「珍しい建物か……ってなりゃ、あそこになるかな?」


ザックリとした場所の説明を聞いていると、エルフのお兄さんの注文していたラーメンセットが到着する。そこで話を切り上げて、エルフのお兄さんがラーメンを食べ始めた。


流石に人が食事をしている最中に話しかけるといった無作法をするつもりも無く、また食事中の人をじっくりと見るわけにもいかないので手持ち無沙汰となる。仕方ないのでメニュー表を眺めて時間を潰す。


写真で撮影したと思われる商品が載せられており、メニュー表のクオリティはかなり高いと感じられた。もしかしたら俺が知らないだけで、この店の設立にもすでにニホンの企業が関わっているのかもしれない。


「お待たせいたしました」


そんな事を考えていると商品が到着。パッと見は俺が良く知るラーメンセットとの違いを感じられない。とは言え重要なのは味の方だ。レンゲを使って、まずはスープを一口啜った。

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