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祝賀会もいよいよ佳境に差し掛かる。そう、プレゼント交換?というやつだ。
「皆さん。今まで本当にお世話になりました。そのお礼と言うのは何ですが、エルフとドワーフの皆様方に私達からささやかな贈り物があります。ご笑納いただければ幸いです」
剣持さんの合図によって、俺が〈収納〉から彼らに送る贈答品を取り出した。それなりの量があるがエルフには〈収納〉を持っている人もいるし、ドワーフ達の膂力を考えればこの程度の重量はさしたることもない事も知っている。
まずは1つあたりの単価が高い代わりに、品数が少ないドワーフ達に渡すことにした。
「おおっ!まさか、これほどの物を貰えるとは!!」
「全くじゃ。しかもこの酒は確か…数が少ない、貴重な品じゃと聞いておったんじゃがな。いや~たまらんの!」
流石はドワーフ、お酒に関する知識は俺よりも深い。ちなみのそのお酒は『協会』の伝手を頼って取り寄せた逸品だ。それなりにお値段はしたが、そのお酒を造っているメーカーさんに送る相手がドワーフであると伝えると優先して送ってもらうことが出来た。
実力のあるドワーフの手に渡れば、運が良ければドワーフの国の重鎮、もしくは有力な商人に対する宣伝効果にもなるという思惑もあるのだろう。
実際、『ネイティブ・ワイバーンの祝勝会』で俺が一番気に入り、ゴルド兄弟に紹介したお酒はドワーフの国でも人気火が付いたらしく、すでにその酒造メーカーに対する注文が後を絶たないとのことらしい。
まぁ、生産量が少なくてすべての注文に応えることが出来ていないらしいが、それは嬉しい悲鳴だろう。つい最近連絡を取ったその会社の担当者さんからは“銀行の融資を受けて、新しい工場を建てている最中”とのことだった。
ドワーフと言う種族から人気を獲得できれば銀行からの融資すら簡単に受けることが出来る。聞いた話によると、クオリティの高いドワーフ製品が輸入されるようになりかなりの額の日本円がドワーフの国に流れている。
そして、ドワーフの国のニホンからの輸入額第一位は間違いなくお酒関連の商品だ。そういった理由もあってか、銀行からの融資も簡単に取り付けることが出来たのだろう。
俺達が渡した酒瓶をウットリとした表情で眺めるドワーフ達。口元にたっぷりと髭を蓄えたおっさん達のそんな表情に需要は無いだろうが、こうして喜ばれたことは素直に嬉しく感じる。続いてエルフ達に渡すプレゼントの準備をする。
何せ、エルフ達に渡すプレゼントはインスタントやらレトルト食品が大半を占めているのだ。ドワーフ達との金額的な差別をなくすためには、自然と量が多くなってしまうのも仕方のない事だった。
俺が〈収納〉からせっせと取り出して、剣持さん達が渡しやすいように並べていく。……こうしてみると、結構カレー味の商品が多いな。多分、無意識のうちにエドワルドさんの好みに合わせた結果だろう。
とは言え、他のエルフの方々の中にもカレーが嫌いなんて人はいないので問題は無いはずだ。カレーは万国共通の国民食なのだ。
「……ふぅ、やっと終わりましたか。……さて、こちらがエルフの皆様に渡すプレゼントとなりますが、エドワルドさんには本当にお世話になりましたので、貴方には別に用意したものがあります」
と、前置きしたうえで、ドワーフ達に渡した貴重な酒や、高級な缶詰、乾物といった高級品を取り出した。
「ほほぅ……これは、これは」
「お気に召していただけましたか?」
「無論だ。むしろ、これだけの量を貰ってしまうと恐縮してしまうな」
「恐縮だなんてそんな……エドワルドさんには大変お世話になりましたので、むしろこれでも足りないかと思っていたぐらいです」
「そんなことは無いぞ?トゥクルス共和国では人間の食べ物は人気で手に入れるには少しばかり骨が折れるからな。これだけあれば、しばらくは楽しめるだろう」
とりあえず喜んでもらえたことでホッとした。俺達がプレゼントしたものを見て、眉目秀麗なイケメンエルフ達がキャピキャピとしている。興味がある人なら金を払ってでも目に焼き付けたい光景だろう。ドワーフ達とはえらい違い………いや、趣が違う光景だな。




