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「今日という日を、誰一人欠けることなく迎えることが出来て本当に良かったと思います。それでは皆さん……乾杯!」
剣持さんの音頭により、一斉に肉を焼き始めるパーティーメンバー。最初に集まった親睦会の時はグリルやらトングなどに興味津々、また使い方にも苦戦していたというのに今では勝手知ったるなんとやら、と言った印象だ。
そのことに関して頼もしく思うし、ここに来るまでに感じたこと、そして考えていたことが次々と頭をよぎっていく。
今日が最終日だったと言う事もあり、昼食を取り終わると少し早めに『ダンジョン』に帰った俺達一行。理由は勿論、こうして無事にみんなで『新天地』での活動を終わらせることの出来た祝賀会を開催するためだ。
ホテルに帰って体を清め身支度を整える。会場は俺達が最初に集まった、つまり焼肉パーティーを開いたあの広間だ。少し早めに部屋を出たがでに何人か集まってきていた。その中には当然というべきか剣持さんの姿もあり、今後の予定もあるのでとりあえず彼と雑談に興じる。
「何と言うか……あれほど大変だと思っていた『新天地』での活動も終わってみれば楽しかった、と思えてくるんですから不思議なものですよね」
「全くです。最初は……いえ、最初から驚きの連続でしたし、最後まで別の意味でハラハラの連続でしたね。でもこうして皆が無事に最終日を迎えられたことは本当に良かったと思います」
しばらくの間雑談をしていると、槍木さん、そして弓取さんがやって来た。予定時刻にはまだ早かったが、こうして人間組が集まって祝賀会が始まる前にしなければならない込み入った話があったというわけだ。
「念のために聞いておくが、ちゃんと持ってきたよな?」
「勿論ですよ」
弓取さんに指摘された、俺が持ってきた物。それは共に戦い、共に勝利を分かち合ったエルフとドワーフに渡すプレゼントであった。それはこのパーティーの解散の日付が決まった日から様々な所で情報を収集し、少しずつ買い集めていった品々だ。
『協会』の職員さんという強力なスパイによって、同じパーティーメンバーであるエルフやドワーフの方々も俺達にプレゼントを用意しているという情報を入手。彼らが渡すであろうプレゼントに見劣りしないだけの品を頑張って選び抜いたのだ。
単に価値があるものを渡せばよいのなら、特に悩むことなくパソコンといった電化製品を中心に送っていただろう。すでに異世界には『魔石』を使った発電機などもそれなりの数が出回っており、異世界でも電気で動く便利な製品を問題なく使用できるからだ。
しかしそういった製品はすでに『国』単位で購入されており、有力者を中心に個人的にも所有している人が増え始めている。つまりエドワルドさんのような国の重鎮であればそういった先端機器も優先的に回されているだろうから、彼にとっては送られてもあまり嬉しくない贈り物になるかもしれないということだ。
そこで考えた。というよりは贈り物はやはり食べ物の方が良いという原点に立ち返る。お中元やお歳暮と同じ考えだ。では何が喜ばれるのか?知り合いのエルフに片っ端から聞いて回り、エルフというの種族の好みを徹底的に研究した。が、エルフであればこれは間違いない!と言うものは残念ながら特に見つからなかった。まぁ、逆を言えばすべてが好物になりえるので、選択肢が多くどれが良いのか単に迷ってしまっただけであるのだが。
エルフの代表であるエドワルドさんがカレー好きという情報は知っていたが、贈り物すべてがカレー味では流石に怒られ……はしないだろうが、思うところがあるはずだ。仕方ないのでありとあらゆる飲食料品を買い集め、エルフ相手に送るという事になった。
ちなみにエルフに送るプレゼント選びにはかなり時間がかかってしまったが、ドワーフに関してはほとんど選択に時間がかかっていない。何せ彼らにはお酒を渡すだけでとても喜ばれることは目に見えていたからな。
とは言え先日行われた東条さん達主催の祝勝会で集めた情報をもとに、ドワーフの評価が高かったお酒を中心に選んだので間違いは無いだろう。
ほどなくして時間となりパーティーメンバー全員が集まった。いよいよもって、このパーティー最後の催しだ。最後まで楽しもう。




