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祝勝会という大きなイベントも終わり、俺達の日常は平常に戻っていった。
祝勝会がある前と、やった後で大きく変わった点は2つ。1つ目は東条さん達のパーティーが、今俺達が狩場としているエリアの近くで狩りを始めるようになったこと。そして2つ目がエドワルドさんの長期休暇?が、いよいよもって終わりを迎えそうであるということだ。
1つ目に関しては良い事しかない。何せあの辺りには巨大で強力なモンスターが我が物顔で跋扈しているのだ。限られたモンスター素材の奪い合いなんて起きるはずもない。むしろ時折〈索敵〉によって彼らの反応を感じることで、頼もしい人達が近くにいることに安心感すら覚えるほどであるぐらいだ。
2つ目に関しては……まぁ、いずれは来るものだと覚悟していたので、これと言って何かあるというものでもない。
エドワルドさんは“ちょっと休みが短すぎないか?”なんて愚痴をこぼしていたが、俺達が『新天地』で活動している期間は1カ月間にも及んでいるのだ。それを短いと取るか長いと取るか。
ニホン人の感覚であるなら“かなり長い”という人が大多数であると思うが、長命種であるエルフだとそうでもないのかもしれない。これもまた、異種族であるが故の感覚の違いなのかもしれないな。
エドワルドさんの帰国に合わせて俺達のパーティーも解散することになった。本来ならもう少し早めに解散する予定ではあったのだが、何となく間延びしていって今日にまで至っていた。その期日がようやくきた、そんな感じの印象だ。
このパーティーで過ごす時間もあとわずか。エドワルドさんのおかげでかなり稼ぐことも出来たし、残りの期間は金を稼ぐことよりも他のパーティーの『為』になることをしようというのが、俺達パーティーの総意となっていた。
そして他のパーティーの『為』になる事というのが、より正確なマッピング作業やらモンスターの正確な戦闘風景を記録をすることに決まり、俺達はカメラやビデオを使ってより詳しいデータ収集に明け暮れている。
「ふむ……静止画を記録するときはこのボタンで、動画を記録するときはこちらのボタンか…」
せっかく電子機器を使って活動しているのだ。どうせなら、エルフやドワーフ達にも使い方をレクチャーしておけば、今後その知識が彼らの役に立つ日だって来るだろうと思い教えることにしたのだ。
実際彼らは知識の吸収に貪欲であり、こちらが教えたことをしっかりとメモを取っておくほどの真剣っぷりだ。この程度のことを教えているだけなのにな、むしろ恐縮してしまいそうになったほどの真面目さがあった。
「そして、録画した映像はこのボタンから再生ですか……おっ!ちゃんと録画できていましたね」
真剣に俺達の話を聞いてくれているおかげだろう、すぐに使い方を覚えてくれた。録画された映像を見て何ら問題もなさそうだったので、次の戦闘からエルフとドワーフが交代で動画記録を撮ってもらうことにしよう。
「おっ!あっちの方に、良い感じのモンスターがいるな。……いや、しかし…こっちの方も捨てがたい…」
と、新しく与えられたおもちゃを喜ぶ子供のように、妙にテンションの高いエドワルドさんの索敵によって、俺達が戦うモンスターが選び抜かれていく。
“モンスターとの戦闘を映像記録として残すので、エドワルドさんのような規格外の人物にはあまり表立っては戦ってもらいたくない”と、剣持さんにやんわりと言われたときは肩を落としていた。彼自身、自分の戦闘風景を記録しても他の人の参考にならないという事を自覚していたのだろう、渋々ながらも素直に受け入れていた。
しかし、カメラという新しい『おもちゃ』を与えられたときは、それが嘘であったように喜んでいた。かなり年を食っているみたいだが、意外にもおちゃめな所もあるもんだなと思った。
そんな彼には、映像の記録係兼『魔法』を使ったサポート役に徹してもらっている。あくまでもサポートなのだ。彼の力をかなりセーブしてもらう事で、何とかモンスターと『一方的な虐殺』ではなく『戦闘』と言えるだけの戦いをすることが出来たわけだ。
「う~ん。モンスターの迫力を引き出すためには、こっちのアングルの方が良かったか…いやいや、やっぱり、ここはこういった演出を挟むことで…」
と、正確な記録を撮る事よりも、映える映像を撮ること自体に注力している節がみられるセリフが聞こえて来た。……よく考えたらこの人、結構映画なんかを見ていたな。それに触発されて演出家として目覚めたのか…?まぁ、映像自体は明瞭で見やすいし、問題があるわけでも無いからな。俺がとやかく言う事でもないだろう。




