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「全部で『ワイルド・ボア』が23体、『カレイド・バタフライ』が1体、『ガイア・ディア』が3体。『ワイルド・ボア』の幼体の1体は『協会』に寄贈とのことで間違いありませんか?」


「はい、間違いありません」


「『ワイルド・ボア』は指名依頼の品となりますので、後日そちらから入金となります。『カレイド・バタフライ』と『ガイア・ディア』に関しては『協会』で査定後ご入金となりますのでご確認ください」


「分かりました」


本日の仕事も何事も無く終わらせ、剣持さんと一緒に買取出張所にまでやってきた。


「それにしても、『カレイド・バタフライ』をこのような完璧な状態で仕留めてしまうとは……やはり、剣持さん達のパーティーは他のパーティーよりも一回り上だということなのでしょうね」


「いやいや、私達はいたって普通ですよ?ただ、エドワルドさんのような規格外な人物のおかげですって」


「優秀な人材がいらっしゃることに違いはないでしょうが、それをまとめ上げていらっしゃる剣持さんの指揮能力の高さもなかなかのものだと思われますが?」


「だから、そんなことないですって。エドワルドさんも少し尊大な所もありますが、私のような『凡人』にとても気を遣って下さいますから。自分なんてホント、大したことないですから…」


謙遜ではなく、本心からそう語っているように見える剣持さん。確かにエドワルドさんからは少しだけ高慢な雰囲気を感じるのだが、彼の戦闘力の高さを知ってしまえばその程度の態度は気にもならない。むしろ強者が強者らしく振舞うことでホッとする面もあるぐらいだ。


例えるなら大企業のお偉いさんが腰を低くしながらこちらに応対したとしよう。偉い人にヘコヘコされて自尊心が満たされて気持ちいいという感覚よりも、一体何を考えているんだ!?という不安の方が強くなってしまうはずだ。


まぁ、それはさておき最近気になることがある。それは、剣持さんが今まで以上に謙虚さに拍車がかかっている気がすることだ。俺の主観ではあるのだが、頂きのあまりの高さを知り自信を無くしてしまった、そんな感じだな。


確かにエドワルドさんのような規格外のような人と一緒にいれば、そんな感情になってしまう気持ちも分からなくもない。


剣持さんとていっぱしの上級探索者、つまり強者としての自尊心とか誇りとかがあったはずだ。それをここ数日で木っ端みじんに打ち砕かれたんだ。これも剣持さんが探索者として長い間活動し、身に付けてきた常識というやつが原因なのかもしれないな。


俺はどうなのかと聞かれたら………傷つけられるような立派な自尊心何て最初から持ち合わせていないから問題ナッシングだ。


何せ俺の周りには常に、俺よりも遥かに強い人達がウジャウジャいた。そこに新しい人が1人加わったぐらいでは、傷つきようが無いというわけだ。これもまた、普通の探索者としての常識が無かったことで良かったことと言えるのかもしれないな。


素材の納入を終わらせ、明日以降の予定の打ち合わせをしながら移動する。


「明日以降の予定はいつも通りといきましょう。『バイオレント・レックス』とかの素材も、最近ではじわじわと人気が出始めているらしいですからね。他の参入者が出てくる前にある程度は稼いでおかないと」


「ですね。他の方の参入がイヤってわけでも無いですが、やはり先駆者としての特権はあった方が良いですからね。……じゃ、自分はこの辺りで。1時間後ぐらいに、食堂で会いましょう」


そう言って、情報収集のためいったん剣持さんと別れる。向かった先は、ホテルの外にある『協会』の事務職の方々が仕事をされている詰所だ。


かつて彼らの書類仕事を手伝ったこともあり、そう言った場所でも比較的顔を出しやすいのだ。とは言え、流石に手ぶらで向かうのは少し寂しい。まずは売店に行き適当につまめそうなお菓子を買って、手土産として持っていくことにする。


仮に有用そうな情報が無かったとしても、そういった物を持っていけば有用な情報が入ったとき優先して情報を貰えるだろうからな。それが俺の処世術なのだ。




「おや?お久しぶりですね檀上さん」


「お久しぶりです、作田さん。まさか、ずっとこちらで働かれていたんですか?」


「いえ、『前線基地』に来られる方も多くなり、事務仕事の量が増えて余裕のある職員がここに派遣されるようになったんですよ。その流れで『前線基地』で働いた経験のある私が優先的に選ばれてしまいましてね」


「ナルホド。あ、これ陣中見舞いです。よろしかったら皆さんで食べて下さい」


そう言って、先程買ってきたお菓子の山を作田さんに渡す。それにしても運がいい。作田さんとは、それなりの付き合いがあるからな。彼のような親しい人がここにいれば、『協会』の情報もより一層入手しやすくなるというものなのだ。

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