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「お見事ですっ!私たちと一緒に『ダンジョン』に挑んでいた頃よりも大分腕を上げましたね」


パチパチと手を叩きながら、お世辞ではなく本心からそう語っているように見える剣持さんが柔らかな笑みを浮かべながら近寄って来る。


彼と俺はメインとなる武器が同じであるため、弓取さんや槍木さんよりも武器の扱いや戦い方などについて質問する機会は多かった。そのため俺の成長を一番喜んでくれているのだろう。


「うん。君が自己申告していた以上の強さを持っていることはよく分かった。つまり、君はアレだ。自己評価が低いと言う奴だな」


エドワルドさんからも及第点は貰えたようだ。それにしても、自己評価が低いのか?俺は。如何せん、そういったことは自分では分からないからな。


「確かに、それは私も以前から思っていました。まぁ、彼を取り巻く環境を考えますと致し方ないような気もしますが」


と、剣持さんがちょっと曖昧な感じでフォローしてくれる。


「俺を取り巻く環境と言いますと?」


「藤原さんに作田さん。最近だと東条さんとかも含まれていますね。檀上さんはこれまで『協会』が経験してこなかった『未知』の部分の最前線に立たれています。そんな場所には当然探索者としても優秀な方ばかりが派遣されています。彼らと同じような環境に常日頃から身を置かれている檀上さんは、ご自身の実力を世間一般的な視点から客観的に見ることが出来なかったのでしょう」


幾分か同情が混じったような口調でそう語る剣持さん。確かに、彼が言うように俺の周りには下級探索者はおろか中級探索者ですらほとんどいない。常に上ばかり見てここまで来ている。なにせ周りは世間一般的にも上澄みの上級探索者並の実力を持つエリートしか存在していないためだ。


そんな場所で、果たして探索者としての強さの『常識』という奴が身に着くのだろうか?……まぁ、難しいのだろうな。剣持さんも俺自身の責任でないことを確信していたからこそ、俺に若干の同情を示していたのだろう。


「それにしても、まさか『魔剣』まで持っていたとはな。驚かされたわ。自分の装備にも手を抜かないのは良い事だ。ただ、そのせいで先ほどの『ワイルド・ボア』では相手が少々不足していたみたいだったな」


うんうんと頷きながら語るエドワルドさん。確かに、終わってみれば俺の圧勝であったかもしれないが、少しでも作戦が狂えば負けていたのは俺の方であったことには違いないので、個人的には僅差での勝利であったと思う。


「檀上君も消化不足ではないかな。もう少し手ごわい相手との再戦をしないか?あちらの方に良さげな奴がいるんだが」


エドワルドさんが指さした方角に集中し、〈索敵〉を発動してみる。……が、それらしい反応は返ってこない。弓取さんに視線を向けるが、彼もまた『ワイルド・ボア』の反応を感知することが出来ていないみたいだ。難しい顔をして首を横に振っている。


やはりというべきか、エドワルドさんは俺たちのパーティーの役割として〈索敵〉をしてはいないのだが、弓取さんやヘンリーさんよりも広い感知能力があるのだろう。普段口を出さないのは弓取さん達を立ててのことだと思う。


「せっかくのご提案ですが、俺にばかりお時間を割いていただくのも心苦しいので…それに、今回の戦いで新しい課題も見えてきました。もう少し鍛錬の時間を置いて、今度また再戦したいと思います」


「そうか、まぁ、これは私が無理に勧めるものでもないからな。だが、何かあれば遠慮なく私に聞きに来ると良い。弓や魔法ほどでもないが、剣の扱いに関してもそこそこ通じているからな」


「その時は、よろしくお願いします」


エドワルドさんの自己評価では“そこそこ”とは言っていたのだが、彼の言う“そこそこ”と俺の持つ常識の範囲内での“そこそこ”とではレベルが違うことは想像に難くない。


と、ここでようやく剣持さん達が、俺が少しばかり常識の範囲内にいないと言っていた意味が本当の意味で理解できた気がした。まさかエドワルドさんはそこまで知ったうえでご教示されようと提案されたのか………?ま、ないだろうな。

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