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目の前に現れたるは醜悪な面容の1体のゴブリン。『ダンジョン』の入り口近くにポップするゴブリンは装備品が棍棒のみであり、仮に攻撃を受けたとしても大きなダメージにはならない。


加えて俺はこの『ダンジョン』に潜るまでにかなりの数のトノサマンバッタを倒しており、少なくないだけの『格』を上げている。負ける要素は無いと言ってもいいだろう。初戦の相手がゴブリンという探索者がほとんどであることを踏まえて考えればかなり恵まれているはずだ。


「グギャギャギャギャ」


汚い笑い声?を発しながら警戒することなく接近してくるゴブリン。無造作に降り降ろした棍棒を半歩程バックステップすることで回避し、降り降ろし切った棍棒を振り戻す前に接近し〈剣術〉の『スキル』の発動を意識してゴブリンの胸をめがけて横薙ぎの一閃を放つ。


念のため再びバックステップで距離を取りゴブリンの様子を窺う。俺に斬り裂かれたことにより上半身をフラフラとさせたと思うとすぐに、ドサッという音を立ててその場に倒れこみ、光の粒子となって消える。その場にはドロップアイテムである『魔石』が取り残されていた。


そんな俺の戦闘を眺めていた剣持さんがパチパチと手を叩きながら近づいてくる。


「お見事です。実戦は初めてと聞いていましたが、基本がしっかりしている様で安心して見ることが出来ました」


「藤原さん…戦闘方法を教えてくださった人の指導法が良かっただけですよ。それに上級探索者である剣持さんに褒められるのは少々面映ゆいです」


「指導法が良かったとは言うがな、檀上さんはスキルを獲得してまだ数カ月だろ?普通にすごいと思うけどな」


「同意する。だが…もしかしたら、檀上さんのダンジョンにそういった使い道があるのかもしれないということか」


「そういった使い道、と言うと?」


「戦闘系のスキルを訓練する場所としても有用なのではないか?と言うことですよ。私もちょうど同じことを考えていたところです」


『戦闘スキル』は戦闘中常に意識して発動していないと効果を発揮しない。しかし初心者だとこれは意外にも難しいのだ。更には、強い『モンスター』相手だと常時『戦闘スキル』2つ3つ発動させた状態でないと碌に戦うことのできない超強い個体もいると聞く。


例えるなら、ペーパードライバーなら車を運転するときすべての集中力を運転にのみ注がなければならないが、熟練のドライバーともなると、仲間たちと楽しい会話をしながら片手で運転し、もう片方の手でジュースを飲むことも出来るといった感じか。


つまり上級探索者には複数の『スキル』を無意識下でありながら常に同時に発動し続けることを求められているのだ。無論今の俺の状態は、運転にのみ集中しているようなペーパードライバーである。


「本来ならもう2・3体との戦闘を挟んでから奥に行くつもりでしたが、その必要は無さそうですね」


「少しばかり不安はありますが…剣持さんがそうおっしゃるなら、それに従います」


「俺から言わせりゃ、檀上さんはビビりすぎだ。少しぐらいの危険が無いと、つまり恐怖と言うものを知っておかないといざと言う時ビビッて動けなくなっちまうからな。俺達がいる間に慣れとく方がいいだろ」


「ああ、確かに危険から遠ざかるための努力を怠るのは愚かであるが、俺達は探索者だ。ダンジョンという危険地帯に入り込んでいることを考えれば、コイツの言っていることも最もと言えるだろう」


「わ、分かりました。頑張ります」


「ま、ダンジョンに入る前にも言ったが、いざとなったら俺らがサポートしてやるからあんま気負わずに戦いに集中する事だな」


弓取さんの言う通り、上級探索者に同行してもらいながら戦闘を積むという事は余程の事でもなければ得ることのできない経験だろう。ならばそのせっかくの機会を十全に活かさなければ勿体ないというわけだ。


剣持さんに案内されながら狩場を『ダンジョン』のより奥地に移し、俺の戦闘訓練を継続した。

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