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もはやエドワルドさんが何をしたのか考える事すら放棄したのか、剣持さん達も特に気にする様子も無く倒されたばかりのバイオレント・レックスに近寄った。


切断された首の断面からドクドクと血が流れ出ており、すでに血の流出の止まっている頭をマジックバッグに入れ、胴体から流れ出る血が止まるのをのんびりと待つことにした。


「コイツもかなり強かったんでしょうが、相手が悪すぎましたね」


「違いない。俺らだけでコイツを倒すってなったら、今の何十倍もの時間がかかっただろうなぁ」


弓取さんの見立てでは一応は倒すことは出来たみたいではあるが、時間をかければその分だけ他のモンスターが参戦し混戦になる可能性も増えるので出来れば戦闘を避けたい相手ではあったみたいだ。


バイオレント・レックスはかなりの巨体なだけあって、すでにかなりの量の血を流しているが依然として流血が止まる気配は見られない。時間を持て余しそうになったので、少し早いが昼食を摂ることになった。


「今日はハンバーガーにしました。かなり大きいですが食べやすいですし、濃い味付けが疲れた身体にちょうど良いでしょう」


『新天地』に挑む、重労働をする人たちに向けて販売されている昼食だ。当然ながら、その辺りのチェーン店で販売されている物よりもずっと大きい。ポテトが無いのは残念ではあるが、そんな物を求めることが出来るほど『新天地』の環境は甘くは無いだろう。


今回はそのハンバーガーを保温バッグに入れて持ってきているので、昼前にも関わらずアツアツのホカホカだ。この保温バッグも剣持さんが用意してくれた物であり、お値段は結構するらしいが性能は折り紙付きだ。


「ふむ……購入してから大分時間が経っているがアツアツなのだな」


「ええ、不思議ですよね。何でも、保温バッグとか言う奴に入れておいたそうですよ?お値段もお手頃らしいですし、国に帰るときいくつか買って帰ろうかと思っています」


「そうか、その時は私の分も買っておいてくれ」


最後の一口を名残惜し気に口の中に放り込み、手にわずかばかり着いたソースを紙ナプキンで拭きながらエドワルドさんが答えていた。


「毎度のことではあるが、人間の世界には我らの世界にはない興味深いものがたくさんなるな。毎日が新しい発見の連続だ。そういった物を買うためにも、もっと頑張らなくてはならないな!」


これ以上エドワルドさんが頑張ると一体どうなってしまうのか?その矛先が向かうであろうモンスター達には同情を禁じえない。この『新天地』に調査任務で訪れていた時は恐ろしくて仕方なかった強力なモンスター相手に、まさか同情する日が来ようとは夢にも思っていなかったなぁ。


―――バイオレント・レックスを見る。出血の勢いは衰えてはいるが、血が抜けきるにはまだまだ時間がかかりそうだ。よし、暇をつぶすために世間話でも振ってみるか。


「ちなみにですが、エドワルドさんは普段はどのような方法で人間世界の品々の情報を集めていらっしゃるのですか?」


「主にドラマや映画だな。我らの世界では本や演劇といった方法で物語を楽しんでいたが、日本では音声と映像付きの動画で、物語をいつでもどこでも楽しむことが出来るのはとても羨ましい」


口ぶりからすると、もしかしたらエドワルドさんはそう言った娯楽が好きなのかもしれない。そんな彼からすれば、ホテルにあるテレビでドラマや映画が見放題と言う環境は非常に心が躍る環境なのだろう。


「俺もドラマや映画は結構見ますね。エドワルドさんはどういったジャンルのものがお好きなんですか?」


「ドキュメンタリーや歴史ものだ。君たちの世界のことがよく分かる。あと、コメディも悪くない。文化文明の違いか笑いどころが分からない事もあるが、あの明るい雰囲気は見ているだけで楽しくなる」


逆にあまり見ないジャンルを聞いてみたら“アクションやパニックもの”と答えてくれた。


まぁ、何となくではあるが理解することが出来た。何せエドワルドさんは人間よりも遥かに強い力を持つお方だ。そんな人からすれば激しい銃の打ち合いだとか、謎の巨大生物に襲われる映像を見せられても『これのどこにハラハラさせられるのだ?』と思ってもおかしくはない。


彼からすればマフィア同士の抗争だって蟻んこの縄張り争いぐらいにしか思えないのだろう。実際、『ダンジョン』だの『スキル』だのが発見されて以降はそういった作品が作られる機会が少なくなっているとも聞いたことがある。


何せ『ダンジョン』の中に入れば、作り物とは違うリアルなモンスターに会うことが出来るのだ。わざわざ高いお金を払ってまで作品を作るのは……と製作者側からも思われているのかもしれない。世のクリエイターさんにとっても大変な時代になったものだと思った。

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