表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
176/301

175

焼肉パーティー開始から30分。美味しい飯に美味しい飲み物。そんなものがあれば、自然と場の空気は暖かなものに変わっていく。俺はかねてより気になっていた事を、俺の隣でサイドメニューのビビンバをホフホフしながら食べているエルフのヘンリーさんに聞くことにした。


「あの…1つ気になっていたことがあったんですが、質問いいですか?」


「モグモグ……ゴクリ。ええ、何でしょうか?」


「どうして、『エドワルド』さんがこんな場所にいらっしゃるんですか?弓取さんから、彼はかなり上の役職の方だと聞いたんですが……」


ヘンリーさんが『やっぱり、そこは気になるよね?』といった意味合いを含んでいそうな苦笑いを浮かべる。


「あ、もちろん、答え難いのでしたら無理に聞き出そうとは思っていませんので」


「いえいえ、別に深い事情があるとか、複雑な問題が絡んでいろとかでは全然ないんですがね。ただ、どこから話してよいのか…」


そう言って、思案気な表情でエドワルドさんが座るテーブルの方に視線を向けるヘンリーさん。俺もつられてそちらを見る。そこのテーブルには、エドワルドさんと弓取さん、そしてドワーフが2人席に着き仲良く楽しんでいるように見える。


ドワーフの2人のドリンクがお酒であることはすでに先刻承知の上であるが、エルフであるエドワルドさんもお酒を注文している。そして、意外なことに弓取さんのドリンクもお酒であったのだ。


多分、その場でお酒を注文せざるを得なかったのだろう。弓取さんはそういった空気をちゃんと読むことの出来る人だからな。ただ、空気を読み過ぎた結果だろう。周りのお酒を飲むスピードについて行ってしまった結果か、すでに彼の顔色が茹蛸のように真っ赤に染まっていた。


「すごいですね。弓取さんはすでにかなり酔われているみたいですが、エドワルドさんの顔色が全く変わっていませんよ」


「まぁ、あの人はかなりの酒豪ですからね。我々部下に対して気配りも出来て仕事も出来る。上司としては申し分ないのですが、絡み酒が鬱陶しい、それが彼の最大の弱点でしょうね……あ、この話は出来れば本人には内緒にしておいてくださいね」


口の前で人差し指を立てて“シーッ”と言ってくる。『本人には』と限定したという事は、他のエルフとは共通の認識であるという事か。


「むしろお酒にとんでもなく強いと噂のドワーフと一緒に飲みまくって、少しは痛い目を見れば私たちの気持ちも……」


と、今度は若干恨みのこもったような視線をエドワルドさんに向け、小さな呟きが声が聞こえてきた。まぁ、ここは華麗にスルーしてあげよう。これからしばらくは一緒に仕事をする仲間なのだ。少しぐらいの毒を飲み込んであげるぐらいの度量の深さを見せておこう。


「『閣下』は……いえ、エドワルドさんは檀上さんもご存じでしょうが、我がトゥクルス共和国に3人しかいらっしゃらない将軍と言う非常に高い地位に就かれています。エドワルドさんが他の2名の将軍と決定的に違う事が1つあります。それは彼が現場たたき上げの人物であるという事です」


自衛官に幹部候補生と言うのがあるのと同じように、トゥクルス共和国でも軍で上役に出世するにはそれなりの『学歴』が必要であるという事だ。エドワルドさんを除く他2名はそういった学歴を積んでいるが、エドワルドさんの場合はそうではないという事か。


例えるなら、エドワルドさんが高校卒業後即座に自衛隊に入隊したような形であり、他2名は防衛大学校の卒業者であるという事だろう。自衛官でもそうだろうが、この2つには大きな『差』があるはずだ。そしてその差を埋めるだけの圧倒的な功績を、彼が打ち立てたという事なのだろう。


それなら周りから一目も二目も置かれるのも当然と言えば当然の話だし、尊敬されるなと言われても土台無理な話のはずだ。


彼がいったいどのような功績を打ち立てたのだろうか。王族の窮地を救っただとか、街を襲うモンスターの群れを撃退したとか。聞いてみたい気もするが、ひとまずは後回しにしよう。長命種であるエルフのことだ。そう言った話も1つや2つではないだろうからな。絶対に話が長くなると俺の第六感が騒いでいる。


「エドワルドさんがとんでもなくすごい人だという事は分かりましたが…彼がここにいる理由の説明になっていないのでは?」


少し失礼な聞き方になってしまったかな?とも思ったが、気分を害したようには見えなかった。先程と同じような苦笑い…いや、少し疲れを含んだような笑みを浮かべている。


「現場至上主義…いえ、より正確に言えば現場が大好きなんですよ、あの人は。つまり、執務室で周りからあげられてくる情報をもとに指示を出す。そんな事務仕事ばかりの現状に彼は満足していないという事なんです」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ