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明けて翌日。いつもより少し遅めに起きたのは、昨夜はワイバーンのことが頭から離れずなかなか寝付くことが出来なかったことが原因だろう。


ちゃっちゃと着替えて食堂に行く。朝食のバイキングに舌鼓を打ち、食後のコーヒーを堪能していると少し眠そうな顔をした弓取さんが食堂に入ってくるのが見えた。俺の姿を視認すると、朝食を摂るよりも先にコチラに挨拶をしに来る。


「おはよっす、檀上君。随分とはや……いや、俺が遅いのか?」


「まぁ、世のサラリーマンなら今頃は電車の中で揺られている人が大多数であるぐらいの時間帯ではありますね」


自分も少しお寝坊気味であった為、若干のフォローを入れつつ朝の会話を楽しむ。どうやら弓取さんも緊張して昨夜はよく眠れなかった……と、言う事ではなく、単にドラマを夜遅くまで見ていたがための遅めの起床であったらしい。


「『新天地』に行くのは明日からだからな。今日くらい夜更かししても大丈夫だろ」


「まぁ、今日は顔合わせとミーティング、その後に軽く連携の訓練をする程度と剣持さんが言っていましたからね」


食後のコーヒーを飲み終わったので弓取さんに別れを告げて自室へと引き上げる。ミーティングにはまだ時間があったので、タブレット端末に買いだめしていた本を読みながら時間を潰した。




「えっと……まずは自己紹介からしましょうか。私は剣持卓。主な武器は剣で近接戦闘を得意としています。主な戦闘スタイルは、一撃必殺よりもヒットアンドウェイの方が得意でして…」


ホテルの会議室を借りて、俺達の新たなパーティーメンバーとの顔合わせが開始した。


人間・エルフ・ドワーフの各種族が4名ずつ、合計12名からなるここにいるメンバーの中に残念ながら強くてカッコいい女性エルフの姿は無く、強くてカッコいいイケメンエルフの姿しかなかった。


また、ドワーフも全員強そうで重厚そうな男のドワーフしかおらず、はたから見れば…いや、はたから見なくても男臭い華のないパーティーになってしまったことに、ほんの少しだけ気落ちしてしまう。


「自分は檀上歩です。一応剣を使った近接戦闘を主な戦闘スタイルとしていますが、『魔法』を使った遠距離戦闘もそこそこ出来ます。あと、『支援魔法』なんかも使うこともできますね。…って、そう言うと、万能っぽい感じに聞こえるかもしれませんが、実際は器用貧乏と言った感じでどちらも専門職の方には二歩も三歩も劣りますが、頑張りたいと思います」


剣持さんに続いて弓取さん、槍木さんと自己紹介が続き、俺の番となっていた。


客観的に見ても俺の自己紹介はまずまずの反応と言ったところだろう。まぁ、あまり期待されすぎるのも望むべきものではないので、このぐらいの反応の方がちょうど良いなと思ってしまう。


自己紹介を終えたというプレッシャーから解放されたためか、弓取さんと槍木さんの様子がちょっとおかしいことにようやく気が回った。先程からチラチラと1人のエルフの姿を盗み見ている。…いや、盗み見るというには少しばかり分かり易い見方であったが。


そのエルフと言うのが、エルフには珍しく少し老けた様な顔つきをしている方だ。どことなく、エルフの大商人であるアルベルトさんを想起させるような雰囲気の人…つまり、いかにも出来そう!と言った、古強者と言うべき雰囲気が無意識のうちにでもにじみ出ているような人であるという事だ。


幸いにしてか俺達人間の次に自己紹介をし始めたのはドワーフの方々だ。とりあえず、俺の隣に座る弓取さんに小声で話を聞いてみることにした。


「弓取さん、あの古強者って感じのエルフさんのことご存じなんですか?」


「……あぁ、俺らがアリサちゃんに連れられてエルフの国に行っただろ?その時あった人物の一人だ」


つまりエルフと、彼の国では空想上の生き物であった人間と最初に邂逅したときにいた人物であったという訳か。それが彼の国ではとんでもない歴史的な出来事なわけでして……つまり、それだけの場面に立ち会うことの出来る権力、もしくは発言力を有する人物であるという事か。


「アリサちゃんの話じゃ彼女よりもずっと上の立場にある、トゥクルス共和国でも3人しかいない将軍の地位を与えられた偉人らしいんだ」


「え?なんでそんなめちゃくちゃ偉そうな方が、こんなところにいらっしゃるんですか?」


「んなもん、こっちが聞きたいぐれーだぜ……」


こそこそと話しているとドワーフの自己紹介が終わり、エルフの方に自己紹介が移る。幸いにして、ドワーフの中には彼のようなお偉方と言った雰囲気の人物はいらっしゃらないっぽかった。…まぁそれが『普通』なんだけどな。

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