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「君が檀上さんか。話は聞いている、これからよろしく頼むよ」


差し出された右手を握り返す。掌は固く、戦う男の手だと感じた。彼が相応の実力者であることは語られずとも理解することが出来る。


「よろしく頼むのはこちらの方ですよ。未熟者ですが精一杯頑張ります」


「ま、俺達がいるから安心してモンスターと戦いな。フォローは任せてくれ」


彼らは30代前半の3人組のパーティーであり、名前を剣持さん、弓取さん、槍木さんと言う。メイン武装が彼らの名前に関するもので揃えていることもあって、割と有名なパーティーなのだそうだ。


彼らは小学校のころからの付き合いらしく、真面目な剣持さん、少しばかりチャラい弓取さん、寡黙ではあるがしっかりものの槍木さんと言った感じ性格がバラバラであるが、昔から妙に気が合っていたらしく高校を卒業後一緒に探索者になることにしたらしい。


全員が上級探索者の第3級探索者である。本人たちは『運に恵まれただけ』と謙遜してはいるが、それに見合った威風を感じることが出来た。


探索者の資格を有している日本人は1000万人にも及ぶが、その内約90%が下級探索者であり9.9%が中級探索者、残りの0.1%が上級探索者に分類されている。つまり上級探索者とは選ばれし才をもつエリート中のエリートというわけだ。


探索者とは常に命の危険が付きまとう過酷な職業だ。そんな危険な『ダンジョン』に進んで挑戦することを野蛮であると批判する人もいるが、未知を既知に変え、人類の発展に寄与する素晴らしい職業だと俺は思う。まぁ、金目当てな部分も多くを占めるだろうが、それでも多くの貢献をしてくれていることもまた事実である。


実際、『ダンジョン』から産出される『魔石』によって日本のエネルギー事情が大幅に改善された。20年前の震災の影響で他国からの石油などのエネルギー資源の輸入が滞り、危機に瀕したときの希望となったのはこの『魔石』だ。少しずつ減っていく石油の貯蔵量に頭を悩ませていた当時の為政者がいったいどれほどこの希望に救われただろうか。


『魔石』からエネルギーを取り出すには『ダンジョン』産の特殊な素材が必要であるとはいえ、火力発電とは違い二酸化炭素の排出もない環境にも配慮した親切っぷり。これを喜ばない人はいなかっただろう。…いや、石油の元売り会社などはそうではないか。ひと悶着あったらしいが、一般人である俺の記憶にはほとんど残っていない。


「これから向かうのはダンジョン協会が所有するダンジョンです。入口付近こそ人の出入りは多いですが、少し奥に行けばそれほどでもないですからね。最初のうちの戦闘はそこそこに、後半から頑張っていきましょう」


「分かりました。それにしても、皆さんに同行してもらうことが出来て本当に運が良かったです」


『ダンジョン協会』が所有する『ダンジョン』は基本的には入場料が無料。個人で所有する『ダンジョン』の多くが有料である。そのため多くを占める下級探索者は『ダンジョン協会』が所有する『ダンジョン』を利用しているため入り口付近には多くの人がいるのだ。


それを嫌い、かつ入場料程度のはした金を気にしなくてもいいほどの稼ぎのある中級探索者以上の探索者は個人で所有されている『ダンジョン』を利用することが多いと聞く。肩書こそ俺も立派な中級探索者ではあるが、俺の今までの戦闘経験の相手はトノサマンバッタのみである。そう言った意味ではほとんどの下級探索者未満であるといえるだろう。


雑談を交えながら『ダンジョン』に向かう。俺よりも年齢が上と言う事もあり少しばかり緊張してしまったが、弓取さんのチャラさもあってかすぐに仲良くなることが出来た。


「え?じゃぁ、俺の曾祖父と剣持さんのお爺さんって知り合いだったんですか?」


「そうみたいですよ。今回の話を聞いたとき、住所が私の実家と近かったことと檀上という苗字に聞き覚えがあったもんですから、祖父に聞いてみたんです。そうしたら案の定」


「ま、せまい町だからな。そう珍しい事でもないだろ」


「…だが不思議な縁ではあるな」


「違いない。そう言うわけで、私も祖父から檀上さんの力になる様にってきつく言われていましてね。大船に乗ったつもりでいて下さい」


曽祖父の人脈の広さに感謝した。それに『ダンジョン』の出現した土地も元は曽祖父のものだからな。感謝の意を込めて、今度仏壇に曽祖父の好物をお供えしようと心に決めた。

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