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ホテルのフロントにてチェックインを済ませた後、カードーキーを受け取ってエレベーターに乗りこむ。


「1階にはフロントと売店、そしてゲームセンターといった各種娯楽施設。2階には大浴場とレストラン。3階以上は宿泊部屋か」


エレベーターの中に貼ってある案内状を見ながら剣持さんが呟いていた。


「レストランの朝夕の食事はバイキングらしいな。たくさん食えるから、体を動かす探索者にはピッタリなスタイルだ」


「別料金ではありますが、ビールなどのお酒類も注文できるらしいですね。皆さんはお酒はよく飲まれるのですか?」


「人並みには嗜みますが、特別好きというわけでも無いですね。あるなら飲むし、なくても問題ない程度です」


剣持さんの意見に同意するように頷く2人。


大人の嗜好品として酒やタバコが上げられるだろう。探索者には酒を飲む人は結構いるが、タバコを吸う人はほとんどいない。酒は百薬の長とも呼ばれており、適量であるならむしろ健康に良いが、タバコは百害あって一利なし。体が資本である探索者には忌避すべき存在の一つなのだろう。


その為『協会』の関連施設には、基本的には喫煙所すら存在していない。『場所を選んで吸え』ではなく、『そもそも吸うな』というのが『協会』からの暗黙のメッセージなのだろう。


目的の階層を告げる“チーン!”と言う音が鳴り響き、扉が開きエレベーターから降りる。


「それでは荷物の整理が済みましたら、ミーティングをしますので私の部屋に集まってください」


という剣持さんの言葉に従い、各自が自分の部屋に向かって散って行った。


俺の場合は最初からすべての荷物が『収納』に入っているのでわざわざ部屋まで置きに行く必要は無いのだが、とりあえず自分の部屋を見たいという欲望もあるので、まずは自分の部屋に向かう。


ドアノブにカードキーをかざして部屋の中に入る。室内の様子は――普通のビジネスホテルといった感じだな。入口横にはシャワールームと浴槽付きのトイレがあり、部屋の奥にはベッドとテーブルが置いてある。テレビが思っていたものよりも大きいサイズのものがあったのは予想外だ。小型テレビが嫌だというわけでも無いが、やはり画面が大きい方が嬉しいのは当然の反応だと思う。


とりあえず『収納』から着替えなどが入ったカバンを取り出してテーブルの上に置き、あまりにも早く行きすぎると迷惑になりかねないので少しの間テレビを見ることにした。


インターネットに繋がっているようで某無料動画配信サイトを視聴することもできるし、ドラマや映画なども視聴することが出来るっぽい。これなら休日も暇を持て余すという事も無いだろう。しばらくはニュース番組を見て時間を潰し、適当なところで切り上げて剣持さんの部屋に向かった。




「……と、言った具合で、明日の午前中に『協会』から紹介してもらうエルフとドワーフの方々との顔合わせ。その後、親睦会を兼ねて昼食を一緒に摂りまして、午後からは連携の取り方などの打ち合わせをすることにしましょう。…何か質問は?」


俺の横で弓取さんが“エルフの中に女の子はいるかな?”何て調子のいいことを俺に聞いてきたが、俺が答える前に剣持さんに睨まれて黙ってしまった。


まぁ、美人さんがいればそれだけで全体の士気が上がるから、いないよりはいた方が良いに違いない。だが、俺はどちらかと言うと強くて経験のあるエルフがいるのであれば、例え強面のおっちゃんでも、そちらのほうが望ましいと思った。もちろん、強くて経験豊富な、美人なエルフさんであれば言うことなしだが贅沢は言ってられない。


そんな事を考えていると先ほどまで暢気にしていた弓取さんが急に眉間に皺をよせ、真剣な表情を見せたかと思うと、ある一点の方角に意識を向け始めた。そのあまりの変わりように俺は驚き少し混乱してしまったが、剣持さんは慌てることなく冷静に質問を投げかける。


「何かあったのか?まさか…近くに強力なモンスターの反応でも?」


「いんや、強いモンスターが出現したとかではないな。少し……おかしな反応があったんでな。こちらの方角だと………窓から見えるな」


そう言うやいなや窓の方にツカツカと歩いて行き、窓から外の様子を見下ろして“うおっ!”という驚きの声を上げてた。緊急事態と言うよりは、どちらかと言えば感嘆に近いような声色だったのでとりあえず大きな問題ではなさそうなことに安堵。弓取さんの後ろから俺も窓の外を覗き込むように見下ろした。


するとそこには、首長竜のような超巨体なモンスターの死体が横たわっていたのだ。

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