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「このグラスの素材、先程檀上さんはガラス製とおっしゃっていましたが、正しくは『シャイン・クリスタル』で間違いないと思います」


「『シャイン・クリスタル』って何ですか?」


真剣そうな表情で答えてくれた剣持さんに聞くのは少し謀られたが、知らないことはきちんと聞いておこう。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥と言うしな。…まぁ、ここで知ったかぶりをする必要は一切ないんだが。


「ドワーフの国で採掘されている鉱石の1つだ。ガラスの様に透明でありながら、角度によっては虹色に輝いて見えることからそう言われているらしい」


槍木さんが俺が目で見て確認しやすいよう照明から降り注がれる光にグラスをかざし、角度を調整しながら説明してくれた。……なるほど、確かに虹色に輝いて見える。


「なるほど。このドワーフから頂いたグラスの素材が、ガラスではなくその『シャイン・クリスタル』だったから、ということですね。ですが、頂いたドワーフの方々からは“それほど高価なものでもないし、そこそこの品質だ。普段使いにしてくれ”と言われていましたが…」


「それはドワーフの方々と、我々人間の価値観の違いでしょう。『シャイン・クリスタル』は鉱石としてもそれなりに希少でもありますし、何よりもかなりの硬度があるとかで加工が非常に難しいと聞いたことがあります」


硬度が高い、か…なるほど。もちろん、乱暴に扱うつもりは毛頭ないが、高価そうなものだしちょっとやそっとのことで壊れることが無さそうなことに安堵する。


「ましてやあの職人気質のドワーフが、人にあげることを是として渡してきたものが『そこそこ』という枠組みに収まるわけがないじゃないですか」


今度は、少しあきれた様な口ぶりで話す剣持さん。先程から表情がコロコロとお変わりになる。面白い…と、思うのは少しばかり不敬かもしれないな。


「当然ながら、一般の方がこれだけの品を手に入れようとしても、並大抵の労力では不可能でしょうね」


「となると………当然、それなりにお高い、と言う事なんですかね?」


「当然それなりにお高い、と言う事ですよ。先日お会いになった企業の役員の方も、この素材から作られるグラスを気に入られたらしく、方々に手を回してようやく入手することが出来たと嬉しそうにおっしゃっていましたね」


“そういえば、そんなことがあったなぁ”と呟き、ここにきてようやく納得したような表情を見せた弓取さん。自分と似たような立ち位置の人が近くにいるととても安心できるな。


「その方も入手するまでに多大な労力を要したらしいんですよ。ご自宅で厳重に保管されておられるとかで実物を拝見することが出来なかったので、後で自分で調べてみたんですが……まさかこのような形で、実物を直接この目で見ることになるとは思ってもいませんでしたよ」


同意するように大きく頷く槍木さん。


剣持さんはパーティーのリーダーである。そんな彼がそういった情報を集めていたのは、得意先とかで話のネタになりそうだから調べていたのだろう。槍木さんは単に『ダンジョン』産のアイテムやら、異世界産の珍しい物に興味があるからだろうな。弓取さんは…そういった面倒ごとは人に任せていそうだな。


「分かりました。今後は、もう少しこのグラスを慎重に扱う事にします」


「その方が良いでしょうね。ま、こうして実物を直接拝見することが出来て、私としては目の保養になりましたので感謝していますがね。それと……」


と、今度は、窓のサンに置いている、エルフから貰った綺麗な花の咲いている植木鉢をチラチラと見ながら、またしても言いにくそうに話し始める。


「そちらの花のことですが…」


「……先ほどのグラスと同じ理由で、これはエルフから頂いたものですね。甘酸っぱくいい匂いがするんで、芳香剤の代わりに置いているんですが…」


大きなため息を吐き、処置無し、と言った風に頭を振る剣持さん。


「ま、まぁ……はい。まぁ、要らないおせっかいかもしれませんが、あまり信用のおけない方とこの部屋で会われるときは、その花は隠しておいた方が良いでしょうね」


と言った感じで、言葉を濁した状態のまま弓取さん達を連れて退室していった。その後ろ姿は、来た時よりも大分気疲れしているように見えた気がした。


後でこの花の正体についても調べておこう。…下手な人に聞いてしまうと剣持さんの気持ちを無下にすることになりそうだからな、信用がおける、こういった情報にも詳しい人に聞こうと思った。

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― 新着の感想 ―
普段使いしてくれと言われたんだから普通に使ったら良いと思うけど?高価とか売らないんだから関係ないししまったままのが失礼かなと
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