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俺の〈剣術〉のスキルレベルが4になった時点で、今までよりも成長速度が明らかに鈍化してきた気がした。才能の限界かな?とも思ったが、適正率の高いらしい俺がこの程度の事で成長限界になってたまるか!という気持ちもある。藤原さんに相談してみた。


「恐らくは今の檀上さんの格だと、スキルレベル4が上限なのでしょう。格を上げればもっと上げることが出来ますよ」


「講習では、そんな事言っていなかったような…」


「ほとんどの方は今の檀上さんと違い、スキルレベルの向上にのみ注力する方はいませんからね。スキルレベルを上げる事よりも、ご自身の格を上げる事を優先していますから」


スキルレベルを上げることが出来る場所は基本的には『ダンジョン』の中のみとなっている。いつ『モンスター』が襲ってくるかもわからない『ダンジョン』の中で、戦闘をそっちのけでスキルレベルのみを上げることに集中することは出来ないのは当然か。


そのため多くの探索者はスキルレベルを上げる事よりも『格』を上げる事を優先する。最初の内はそちらの方が速く強くなることが出来るらしい。やはり結果が目に見える形の方がモチベーションが上がるという事だろう。


「それで、どうします?格を上げるために他のダンジョンに挑戦しますか?初心者である檀上さんがお1人で挑まれることはお勧めできませんが」


俺の『ダンジョン』では余程の初心者でもない限り『格』を上げることには向いていない。当然ながら藤原さん達に同行してもらう事は出来ない。彼らの仕事はあくまでもこの場所にいる建築関係の職人さんや『ダンジョン協会』の職員さんの護衛であるからだ。


「おや、ちょうどよいころ合いだったみたいですね」


突然俺達の会話に割って入ってきたのは服部さんだ。他の部署に根回しが必要とかで建設が始まってからすぐに姿を消していた彼女がそこにいた。


「ちょうどよい、とは?」


「そろそろ檀上さんの強化に陰りが見えるころ合いかと思いましてね。伝手を辿って、檀上さんの訓練に協力して下さる実力者の方を用意しておいたんですよ」


「実力者…ですか。お気持ちはありがたいですが、今の俺にそんな方を雇えるだけの資金的な余裕はないですよ?」


『ダンジョン協会』からお金をお借りして『ダンジョン』の外に駐車場を作っている、恥ずかしいはなし借金があるというわけだ。そうでなくても実力のある探索者を雇うには少なくない金銭が必要となると聞く。もちろん不測の事態に備えて曽祖父の遺産には手を付けていないので素寒貧というわけでもないが、大きな浪費を避けたい気持ちは強い。


「無論、そのことも織り込み済みです。今回は彼らが無償で檀上さんのレベリングに協力したいと申し出て下さったんです!」


無料…怪しいな。タダより高い物はないとも言うからな。かと言って彼女が胡散臭い話を持ってくるかと聞かれれば、短い付き合いではあるがそんな不義理なことは無いだろうという謎の信頼感もある。


「そんな旨い話があるわけがない!そう思っていらっしゃる顔ですね。ですが残念ながらあるんですよ、これが!」


何でもその実力者のパーティーメンバー全員が、今俺の住んでいるこの小さな町の出身者なのだそうだ。探索者として成功したので故郷に気をかけるだけの余裕が出てきたそうだ。


寂れている故郷が発展すれば、それが故郷に対する恩返しになるかもしれない。俺の『ダンジョン』が有名になれば寂れた故郷も発展するだろう。その為の手伝いをしたいが何をすればよいのか分からない。とりあえず所有者である俺との顔つなぎの為今回は無料でお手伝いをしたい、そんな感じだそうだ。


「彼らがふるさとを大事に思っているという噂を聞いたことがありましてね。もしかしたらと思って今回の話を持ち掛けたんです。そうしたら是非に、と」


そんな情報どこで入手してきたというのだ、この人は。底知れないことは分かっていたが彼女の情報収集能力の高さの一端を垣間見た気がした。


「そう…ですね。こちらも実力者のパーティーと繋がりを持てるというのなら、それだけでも十分すぎるほどのメリットがありますよね」


「では早速、明日からでもどうですか?」


いきなりではある。が、差しあたってしなければならないという事もない。今の俺は無職のプー太郎からダンジョンの管理者へと進化しつつあるが、基本的には暇人なのだ。了承の意を伝える。


「兄弟子…あなたよりも強くなって戻ってきますよ!」


「ワンッ!」


俺と兄弟子との関係はいたって良好だ。別れはつらいが、これもまた試練だとでも思うことにしよう。兄弟子も手のかかる?弟弟子である俺との別れが寂しいのか、鼻先を俺の手の甲に擦り付ける。これほど可愛い兄弟子は古今東西を見回してもいないだろうと思いつつ、ハヤテの背中を撫で繰り回した。

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