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『協会』の事務仕事を手伝う事3日間。医者から安静しているようにと言われた最終日を無事に迎え、やはり何もなかったことで、ようやく心の底から安堵することが出来た。


『新天地』で働くことこそできなかったが、前線基地で俺達の生活を支えてくれているスタッフさん達の働きっぷりをこの身で実感できたことはこの3日間の最大の学びだったと思う。


衣・食・住は勿論のこと、モンスターの素材の買取りに来た企業の営業さんを相手にバチバチとした舌戦を繰り広げ、少しでも高値で買い取ってもらおうと努力するその姿勢は敬意を覚えたほどだ。


まぁ、買取り価格が高くなれば、売却価格の数%を手数料として受領できる『協会』の収入増に繋がるわけなので、『協会』の利益にも繋がる商取引に手を抜かないのは当然のことではあるのだろうが、それでも感謝せずにはいられないのも事実ではあった。


この3日間。ハヤトと軽く遊ぶ以外に体を動かせていなかったので、色々とフラストレーションが溜まっている。これをモンスター相手にぶつけてやるぜ!なんて気合を入れたはいいものの、本日から3日間は休日であり、支援部隊の皆さんは予定通りお休みするとのことだった。


「どうされたんですか?檀上さん。医師からは、大丈夫だとお墨付きを貰えてんですよね?」


休日とは言え当然腹は減る。朝食を摂りに食堂に来た俺に、アルフォンスさんが心配そうな表情で問いかけて来た。彼の持つお盆には茶碗に盛られた炊き立てアツアツの白米と具だくさんの豚汁。脂の乗った焼き鮭に彩り豊かなサラダ、生卵と納豆の入った小鉢が乗せられており、日本人が『これだよ、これ!』と、思わず声をあげてしまいそうなほどの立派な和食がそこにあった。


「いや~、体調の方は3日前から問題ないんですが、この3日間のフラストレーションが溜まっていましてね。珍しく、体を動かしたいなって気分になっていまして」


「でしたら、調査隊に加わってみてはいかがですか?今日も何組かのパーティーは『新天地』に行くと言っていましたからね。〈収納〉と〈支援魔法〉を持つ檀上さんなら、どこのパーティーからも引っ張りだこですよ」


と、会話に入ってきたのは作田さんだ。俺が食堂に入ってきたのが見えたからか、心配になりこちらの様子を窺っていたのだろう。相変わらず面倒見の良い人だ。


そんな彼の持つお盆の上には、2枚の食パンとコーンスープ。小分けされたバターとジャムに、パックのヨーグルトとフルーツの盛り合わせが乗せられていた。アルフォンスさんと作田さんの朝食、思わず『逆だろ逆!』とツッコミを入れたくなったがそんなことは後回しだ。


「俺で大丈夫ですかね?実力的に、調査隊の人たちの迷惑にならないですかね?今回も俺、凡ミスでケガをしちゃいましたし…」


「私達支援部隊は若干人員不足なので、後方支援能力に秀でている檀上さんにも接近戦を任さざるを得ない場面もありましたけど、調査隊のほうだと戦力が充実しているので檀上さんに接近戦を任さなければならない場面は無いと思われますよ?」


自信ありげに言う作田さん。ついこの間失敗したためか自己評価が低空飛行していたが、褒められたことでちょっとだけ高度が上がった。


「そういうもんですかね?」


「そういうもんですよ。よろしければ、私が調査隊の人と連絡を取っておきましょうか?」


「いいんですか?お願いします」


作田さんにお願いをした後、俺も朝食を取りに向かう。食堂での朝食はバイキング形式となっており、今日はハードな1日になりそうになったので、いつもより多めに食べることにした。


まずはお米。消化吸収に時間がかかるので腹持ちがいい。これを茶碗に盛り上がるほどよそう。次に味噌汁。食堂の味噌汁は具だくさんなので栄養素も豊富である。最後に生卵。卵は消化、吸収に優れているので目覚めていない胃や腸に優しいのだ。……アルフォンスさんの朝食とほとんど一緒だな。彼に当てられたのかもしれない。


朝食をお盆に乗せ終わったときに、アルフォンスさんが手招きをしていたのでそちらの方に行き彼の正面に当たる席に座った。


「おや、檀上さんもTKGですか」


「ええ、アルフォンスさんも、ですね。お好きなんですか?」


「最初は生卵を食べることに少し抵抗はありましたが、1度食べてしまうとその美味しさから、なかなか抜け出せなくって…」


そう語る彼のTKGには納豆も入っていた。すでにTKGのアレンジにも手を出しているのだろう。ここでの日本食を、日本人以上に満喫していると思った。すると、先程から連絡を取るために席を外していた作田さんがこちらに戻ってきた。


「連絡がつきました。1時間後『ダンジョン』の出口近くに集合とのことですが、大丈夫ですか?」


「もちろんです。連絡を取っていただき、ありがとうございました」


作田さんにお礼を伝え、時間にはまだまだ余裕はあったがTKGを口の中にかきこみ、それを味噌汁で流してささっと朝食を終わらせる。すぐに食べることが出来る、これもTKGの強みだなと思いつつ2人に挨拶をして、出発の準備に取り掛かるため早めに食堂を出た。

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