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「ゴルドさんの一撃はかなりの威力がありました。あの一撃以上の攻撃力となりますと、檀上さんの持つ『魔剣』でなければ出すことが出来ないと思われます」


もしかしたら、ゴルドさんの次の一撃で『ボア』の首を切り落とすことも出来るのかもしれないが、この『ボア』はそれなりに高い知能を有しているのだろう。先程からゴルドさんを近づけないような位置取りを心がけているようであり、ゴルドさんも距離を詰めることが出来ずに焦っているように見える。


その反面、俺達の攻撃は『ボア』に当たってはいるがどれも固い毛皮と肉の盾に防がれ致命傷にはなりえないほどの、軽微なダメージしか与えていなかった。『ボア』もそのことを理解したうえで、俺達の対応は二の次としている。


「確かに、コイツはさっきからゴルドさんにばかり注意を向けているので、俺でも接近して攻撃することが出来るかもしれませんが…」


「何か思うところでも?」


「俺自身が未熟であるせいか、この『魔剣』を使って全力の攻撃をしてしまうと、少しの間反動でまともに戦う事が出来なくなってしまうんです」


「分かりました。それはこちらでサポートさせてもらいましょう」


先程から『ボア』の動きを牽制し続けているドワーフ達の体力も無限ではない。この膠着状態がいつ解かれるか分からない現状において、余計なことを考えている余裕はない。


何よりも、今まで『ボア』の攻撃を一身に受けているドワーフ達を前に、『怖いから』といった情けない理由で作田さんの提案を断ることが出来ようはずもないわけだ。即座に〈収納〉に入れておいた、虎の子の『魔剣』を取り出す。


作田さんがゴルグさんに視線を向ける。そこでアイコンタクトをとったのだろう、こちらに何らかの作戦があることを即座に汲み取ってくれたようであり、いきなり「うおおお!」と『ボア』の注意を自分に向けるために雄叫びをあげながら『ボア』に突撃する。


急に大声をあげたゴルグさんに『ボア』の注意が完全に向いたその隙に、ドワーフの盾の後ろにサッと移動して身を隠し、絶好のチャンスを窺う。


本音を言えば現時点でも覚悟は決まりきっておらず、もう少し時間をかけてもらいたいとも考えていたが、『ボア』の振り上げた牙による攻撃を受けたことでゴルドさんの体が後方に大きく弾き飛ばされてしまった。


『ボア』自身も、唯一自分の体を大きく傷つけることの出来たゴルグさんにダメージを与え、なおかつ距離を取ることが出来て油断してしまったのだろう。俺ですらわかるぐらいの大きな隙を見せた。そしてその隙を突いて……


「よっしゃぁ!!」


気合を入れることは『スキル』の強弱には関係ないが、これは自分の気持ちの問題だ。少しだけ弱気になっていた自分の気合を入れる為、そしてみんなの為にこの一撃で終わらせようという揺るぎない決意を込める為。


『上位スキル』である≪上級剣術Lv4≫に≪肉体超強化Lv3≫を発動。『上位スキル』は能力が高い分コントロールがかなり難しい。それに加えて〈剛力Lv6〉も同時に発動したのは今回が初めてだ。


そこに『魔剣』の持つ〈切断力強化Lv8〉〈剣術技能強化Lv4〉〈剛撃Lv8〉を、自分の限界を超えて『スキル』の発動を可能とする『スキル』である〈限界突破Lv8〉を使って無理やり発動させる。


そんな無理を重ねてしまえば、自分の体が思う様に動かなく———はならなかった。逆に何でもできそうな、体の底からエネルギーが湧き出てくるような不思議な感覚に陥る。無論これは一時的な物であり、ランナーズハイのような感覚に似ていると思う。


その感覚が抜けきる前に、この『ボア』との決着を付けなければ。


幸いこちらにはあまり注意を向けている素振りは無い。雑魚がいくら大声を出そうとも、手負いでもゴルドさんの方が脅威度が高いと判断しているのだろうか。それとも、これまでの戦闘によって荒くなった呼吸を整えることを優先したか。だが、その油断が命取りだと思い知れ!


「どっせぇぇい!!」


昔ネットで見た、『兜割り』をイメージした。腰を落とし、自分の軸がブレないようにゴルグさんの付けてくれた斬り傷に向けて『魔剣』を振り下ろす。


肉を斬り、骨を断つ。その感触を感じながらも全力で『魔剣』を下へ下へと押し込んでいき……『ボア』の首を完全に断ち切り、『魔剣』が地面を深く斬り裂いたことでようやく刃先が止まった。

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