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「それにしても、まさか『ボア』が襲ってくるとは……っは!もしかして、さっき食べたカツサンドのカツが原因なんじゃ……!」


豚はイノシシが家畜化された動物だと聞いたことがある。つまり親戚を食べられたことに怒り狂い、その報復として……


「落ち着いてください檀上さん。豚は動物ですが、『ボア』はれっきとしたモンスターです。似ているからと言ってそこに親戚関係はありませんよ」


場を和ませるためにボケたのだが、冷静なツッコミを入れられてしまった。もっとも、作田さんも笑みを浮かべながらツッコミを入れていたので、俺がわざとボケたという事も察しているだろう。最低限の目的は果たせた気がする。


「作戦は、ドワーフの皆さんが持つ大盾で『ボア』の突進を防ぎつつ、足の止まった『ボア』を私たち人間とエルフの方々で袋叩きにする、でよろしいでしょうか?」


シンプルではあるが、俺達支援部隊はあまり戦闘時の連携の訓練を積んでいない。下手に小難しい作戦を立てるよりも、そちらの方がずっとやり易いのだ。他のメンバーからも同意する意見があり、作田さんが大きく頷いた。


「檀上さん。皆さんに<支援魔法>をかけてもらってもいいですか?」


緊急時ではあるが、人前で『スキル』の話をするのは好ましくはない。だが、短い付き合いではあるが、ここにいるメンバーが不用意に人の『スキル』を言いふらすような人柄ではないことは十分に理解している。念のため戦闘後にでも、「内密にしてくれ」とでも伝えておけば問題は無いだろう。


「分かりました。それでは、『エンチャント』!」


ここにいる支援部隊、総勢15名全員に<支援魔法>をかける。すでにスキルレベルが5に成長しているためか、最初のころの様な淡い光ではなく、しっかりとした力強い光がメンバーを包む。


「終わりました。ですが、少々『魔力』を消費し過ぎたので、戦闘ではあまり『魔法』による援護射撃は出来無いかもしれません」


「いえ、お疲れ様です。……それと、檀上さんの〈支援魔法〉に関しては、皆さん必要以上に公言なされないでください。檀上さんは、あまり目立つことがお好きではないので」


他のメンバーから了解の意が伝えられた。作田さんも俺の性格をよく理解してくれているようであり、俺が言う前に注意してくれた。ありがたい事だ。


「それでは…皆さん、配置について下さい」


俺達の今通っている『獣道』を遮るようにドワーフが横列に並び、大盾の下に付いた太いスパイクを地面に深々と突き立てる。これによって、『ボア』の突進の威力を減退させるわけだ。


ほどなくして、俺の『索敵』にも『ボア』の反応が感じ取れるようになった。≪エクストラスキル≫を習得した辺りから、俺も何となくではあるが『索敵』によって察知したモンスターの強さと言う奴も感じ取れるようになっていた。


この感じからすると、確かにこの『ボア』は俺が知っている『ボア』とは戦闘力がまるで違うということが分かる。アルフォンスさんが緊張しているのも納得することの出来る反応の強さがあった。


「動きに迷いが無くなった?…なるほど、どうやらヤツもこちらの正確な位置を感じ取ったみたいですね。この様子だと、あと……数分ほどで接敵するものと思われます。」


流石に俺の『索敵』ではそんなことまでは察知することが出来ない。今の俺だと、これほど距離が離れていれば正確な位置までは分からないからな。アルフォンスさんも何らかの『エクストラスキル』を所持しているのだろう。


そんな事を考えていると、『獣道』の大分先の方で大量の砂煙が舞っているのが見えた。あれが『ボア』だろう。


「見えてきましたね。それではドワーフの皆さん、危険な役回りで恐縮ですが、よろしくお願いします!」


「うむ。ま、こういった役回りは頑丈な儂らの仕事じゃろう。気にするな……ではなく、今度美味い酒でも奢ってくれれば、それでチャラにしよう!」


「ふふっ……ええ、分かりました。ですが私はあまりお酒に強くありませんので、お手柔らかにお願いしますよ」


ゴルグさんのおかげで、張り詰めていた空気が更に和らいだ気がする。これもまた、熟練の戦士のなせる業だろう。相手は強いがこちらもそれなりの手練れ揃いだ。易々と負けることは無いだろうが、最後まで気は緩めないようにしよう。

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― 新着の感想 ―
匂いの強いキノコに釣られたのかな
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