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『新天地』へとつながる長いトンネルを抜けるとそこは森の中であった。


入口付近は前乗りしていた『協会』の職員さんが刈り取ってくれていたのだろうが、少し離れた場所は鬱蒼とした草が腰のあたりにまで生えており、周りは背の高い木々に囲まれていて日当たりがあまりよくないためかジメジメとしている。


それでも、『ダンジョン』から出た瞬間に超強力なモンスターに襲われるなんて不幸に見舞われることは無かったことに安堵する。ある程度の安全が確認できると、今度はジワジワと異世界に来たことに対する高揚感と言うやつが俺の心を満た……さないのは、異世界に来たという実感がないためであろう。


「それじゃ、行きましょうか」


作田さんの掛け声により移動を開始する俺達一行。隊列を意識しているというわけもないが、職員さんが刈り取った範囲はそれほど広いというわけでも無いので俺達は自然と一列になって移動していた。


が、しばらく進むと草があまり生えていない、かつ、しっかりと地面が踏み固められた3・4人が並んで歩けるほど幅のある大きな道に出ることになった。歩きやすい事はありがたいが、その道はずっと先まで続いており、通常業務が忙しい職員さんがこの道を作ったとは到底思えないほど広くて立派な道であった。


「誰がこの道を作ったんですか?『協会』の職員さんではないと思いますし…もしかして、調査隊の中に道を作ることに特化した『スキル』を持つ方でもいらっしゃったのですかね?」


無線機の中継器を設置するための、高い木を探すためキョロキョロ辺りを周りを見回していた作田さんに話しかけてみた。俺以外にも気になっている人がいる様であり、こちらに聞き耳を立てているのが雰囲気で伝わる。


「いえ、元からあったらしいですよ?」


「えっ?……ってことは、この『新天地』にも知的生命体がいるってことですか?」


道があるという事は、それを作った存在がいる。そしてそれは、俺達のような知的生命体の存在の証明に他ならないのではなかろうか。


「それはゼロであるとも言い切れませんが、少なくともその証拠はありません。この道、どうやら『獣道』であるらしいですからね」


『獣道』それは、所謂大型の哺乳類なんかが障害物を避けて移動するために自然とできた道のことだ。現代日本で見られるそれは、とてもではないがこんな広く立派なモノではない。つまりこの『新天地』には、人間が3・4人も並んで歩けるほどの立派な体格を持った『モンスター』が跋扈している、ということなのだろうか…?


「檀上さんが考えられていることは当たっていると思いますよ?で、なければ、上級探索者をあれほどの数、招集する必要なんてありませんからね」


お目当ての高くて立派な木を見つけたらしく、そこに向かおうとする作田さん。俺はこの『新天地』のことを少々甘く見ていたのかもしれないな。


「恐らくですが、我々支援部隊の活動範囲内にモンスターが来るよりも前に、最前線で活動されている調査隊の方々の方が先にモンスターと遭遇するでしょうから大丈夫だと思いますよ………恐らく、ですが」


大事なことなので2回言いました、という事か?最後の方は若干尻すぼみになってはいたが、多分大丈夫だとは思う。それがフラグでなければ良いんだが……




無線機の中継器を高い木の上に設置したり、周辺地理をマッピングしたりしていると思っていた以上に時間の経過が早い。あっという間に昼食の時間となっていた。


『収納』の中に入れておくと、激しい運動をしても中で崩れるということは無いので必然的に俺がメンバー全員分の昼食を持つことになっていた。と、言うわけで、作田さんの判断で昼食を摂りましょうとなったとき、皆が一気に俺のところに押し寄せて来た。


それをうまい事いなして、ようやくお昼ご飯となる。今日の昼食はカツサンド。手軽に食べられるうえに、腹も膨れて激しい仕事によって消費したカロリーも摂取できる。料理人の自信作らしく、皆が楽しみにしていたのも頷ける話だった。


「それじゃ、いただきましょうか」


皆の準備が整うのを待ち、作田さんの音頭にて一斉に食べ始める。こういったところは皆、律儀だぁなと思った。

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― 新着の感想 ―
[一言] タイヤ痕のある獣道のさきに腕に時計の跡がある原住民はいないだろうなww
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