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かくして人間、エルフ、ドワーフの3種族による強力なモンスターが跋扈する異世界の調査が計画・立案されることとなった。


とはいったものの今はまだ準備段階であり、調査団のメンバーの選抜が各国の上層部で行われているらしい。


我ら人間側の陣営も『協会』が主導となって調査団のメンバーの選抜が行われていた。『協会』に実力と人柄を認められている上級探索者達に声がかけられ、恐らくは未開の地となる異世界の調査と言う名目に心惹かれる探索者を中心に色よい返事を貰えているとのことだ。


「異世界の調査ですよね。勿論興味はありますが、どうもスケジュールが合いそうになくって……今回は参加できそうにないんですよ」


と、言う会話を剣持さんとスマホ越しに交わした。彼らのパーティーにも調査の依頼が来たらしいが、運の悪いことに都合が合わなかったらしい。


何でも、色々とお世話になっている企業の職人さんがドワーフの国に技術研修に行き、そこでこれまでにない剣の製造技術を学んできたのだとか。早速、その製造技術で武器を作りたいとのことで、素材として必要な『ミスリル』を『ダンジョン』から採取してきて欲しいと指名依頼が入ってきたらしい。


「実際のところ、他の上級探索者の方々の反応ってどんな感じなんですか?」


俺も肩書こそ上級探索者であるが、他の上級探索者とはかなり毛色が違う立場にあるため、俺の意見は参考にならないだろうと思い、一般的な上級探索者である彼らに聞いてみることにした。上級探索者が『一般的』という枠組みに入るかどうかは、判断がつかないが。


「かなり上々ですよ。何せ『未開』の地ですからね……まぁ、今のところ知的生命体が見つかっていないだけで、もしかしたらエルフやドワーフの様な知的生命体がいるのかもしれませんが。それでも、新しい発見があるかもしれないというのは、それだけでも参加しようと思えるほどの大きな魅力でもありますよね」


「なるほど、確かに探索者になる人の多くは、好奇心が旺盛って話も聞きますからね」


俺の場合は———と考えて、やっぱりそれに当てはまらないだろうなぁというのが客観的な感想だ。正直、周りに流されるままここまで来た気がする。それが悪いことだとは、一切思わないが。


まぁ、そう思えるのも今の環境のおかげだろう。藤原さんや服部さんのように、親身になって相談できる『協会』の関係者。剣持さん達のような、素直に尊敬できる先達達。俺は人間関係に恵まれていると思う。


「そう言えば、新しく見つかった異世界の入り口付近の開発が急ピッチで進んでいると聞きましたが?」


「調査団の為の前線基地?みたいな施設が作られていますからね。それが出来るのも、異世界のモンスターが『ダンジョン』の中には侵入してこないという特性のおかげらしいんですよ」


人間やエルフやドワーフはダンジョンの入口をちゃんと認識することが出来るが、何故かモンスターには認識することが出来ないのだとか。『協会』としても、その原因は不明らしい。


一つ確実に言えることがあるとすれば、強力なモンスターが跋扈する場所(異世界)の近くで、安心して休息することが出来る施設を構築できるのは、戦略的な面からしても間違いなく良い事であると言う事だ。


提供した物資がモンスターに襲撃されてすべて失ってしまうという可能性が無くなった安心感からか、調査団に援助をしたいという企業が日増しに増えているのだとか。その分『協会』の職員さん達の仕事量は増えているらしいが、豊富な物資のおかげで調査の成功の確率が多少なりとも上がるのであれば、それは『協会』としても望むべきものだろう。


そんな感じで日々多くの物資が『ダンジョン』に運び込まれているということもあり、物資を運んでくる大型のトラックからの駐車料金は勿論のこと、物資の集積場として土地の一部を新たに貸し出したことによりここ数週間の俺の収益は平時よりも増大していた。まさに異世界特需様様だ。


そして俺が今最も期待していることは、『協会』のお偉いさんが「第3の異世界に存在するモンスターは強力ではあるが、そのモンスターから得られる資源の価値は当然ながら高いものになる。今後も上級探索者が、この新しく見つかった異世界で活動するようにもなるかもしれない」と、言っていたことだ。


上級探索者ともなると、彼らが狩場にしている場所は『ダンジョン』でもかなりの深層となり、移動するだけでも数日を要することもある。


その点、この度新しく見つかった異世界なら、街道の整備が進めば入り口近くまで車での移動も可能になり、半日もあれば狩場に到着することも出来る。おまけに入口付近には『協会』が現在建造中の様々な施設もあり、完成すれば利便性がかなり良くなる予定だ。


その辺りのことは各々のパーティーが決める事であるが、俺個人の感想とすれば、「この『ダンジョン』を訪れる人が増える可能性が出てきたぜ、ヒャッホイ!」と言うのが素直な気持ちであった。

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