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親友の妹がサキュバスの格好をして家に突撃してきたんだが……どう反応すればいいの?

作者: 栗色

「よっしゃー!念願の休みだぐうたら過ごして堕落のかぎりを尽くすぞいや絶対に尽くす!」


 休日。それは至高の概念。


 久しぶりに何の憂いもなく落ち着いて休める。

と言うのも、最近はやれ部活の助っ人やら、やれバイトのヘルプやらが()()()連続して入っていたため、ゆっくりする暇がなかったのだ。


「よ〜し、最近発売したままプレイできなかったモン○ンをやるぞ」


 俺はそばにあったゲーム機でモ○ハンを起動しようとしたその時ーー


「……ん?」


 視界の端で何かが光った。

 なんだ?俺はそう思いながらそちらに向いた。


 ……が、それを察知するのは遅すぎた。

 この時、俺はなりふり構わずその場から離れるべきだったんだ。


「セッンパーイ、こーんにっちはー!!」


「うえええええええええええ!?俺の家がああああああああああ!?モン○ンがあああああああああああ!?」


 パリィン、とガラスが割れ、同時に俺のガラスの心も音を立てて崩れ去った……


 ーーー

 ーー

 ー


「うぅ……モン○ン……俺の家ぇ……」


 ゲーム機とカセットと家の修繕費で俺のあの地獄のバイト祭りの給料全部なくなるんだけど……

 俺の努力、水の泡……


「先輩、モン○ンについては悪かったと思ってます。だから機嫌直してください膝枕してあげますから」


 どの口でいってるんだ。てか家については何も悪いとは思ってないのかよ。


 バイクで突如襲来し、俺の家とモン○ンを破壊した女の名前はオレノイエヲ・ハカイーシタである。


 そんな名前を信じたやつは馬鹿である。


 ーーー

 ーー

 ー

 数十分後


「で、何をしにきたのかな?佐伯早希さん」


 早希は俺の親友の妹で、昔からの知り合いだ。

 大抵は早希の兄貴と一緒に俺と遊んでいたが、たまにこうしていきなり俺の家に来る。……家を壊しながらきたことはなかったが。


 立ち直ってはいないが、ある程度落ち着いてきた。

 この時ようやく、こいつに怒りの感情が芽生え始めてきた。


「いやですね〜、もちろん先輩であそ……ゲフン……先輩と遊ぶためですよ。怒らないでくださいよ、ハグしてもいいですから〜」


「俺の遊ぼうとしていたモン○ンは木っ端微塵になったんだけど?これでどうやって遊べって言うんだよ」


 てか、今俺で遊ぶって言おうとしたよな……こいつは何で悪びれてないんだ。


「遊ぶために私がいるんですよ。……というか私の格好どうです、似合ってるでしょう?」


 ふふん、と早希は俺に自分の衣装を見せるため、その場でくるくると回る。


「…………」


「な、何です?リアクションの一つくらい見せてくれないと……」


 本来なら何かしら言う場面なんだが……どうにも格好が……


 早希の着ているものはとても扇情的で、ゲームに出てくるサキュバスをイメージしたような格好だからだ。

 出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいるので余計にそれを想起させる。

 似合ってはいる。似合ってはいるのだがそれを認めるのは何か違う気がする。


「お、オモシロイカッコウダネ」


 これが俺が言える精一杯の言葉であった。


「面白い……つまり似合っているってことですね!さっすが私、最高のプロモーションしてますね!」


 こいつッ!無敵の女かッ!


「はあっ、なんていうかな……反応に困るから違う服に着替えてきてくれないか?」


 俺は目を逸らしながら頼み込む。目のやり場に困るのだ。


 すると早希は目を輝かせて、ニヤニヤとイヤな笑みを浮かべた。


「へえ……私の格好、サキュバスみたいでエロいと、もう我慢できない、MO5(マジで襲う五秒前)と……仕方ない人ですね〜」


「いやそこまでは言ってない。後その言葉は死語だぞ」

 MK5はもう死語に入ってると思う。


「でも私はこの格好しか持ってきてませんから〜。ふふっ、残念でーした」


「話聞けよ」


 早希はこちらに歩み寄って、俺の耳のそばでーー


「ーー今日は一日中ずっと先輩のこと誘惑しますから……覚悟してくださいよ」


「……馬鹿なこと言ってないでさっさと帰れ。兄貴が心配するぞ」


「兄にはあらかじめ言っておいたんで大丈夫ですよ。……あっれ〜?耳が赤いですよ、先輩」


「…………」


「…………」


 俺たちは数十秒間睨み合った。

 睨み合っているうちに、ふと俺の脳裏に妙案が浮かんだ。考えたら即行動、その信念に従い行動に移す。


 俺は早希の元へと一歩、2歩と歩みを進めていく。


 すると早希は何かイヤな予感がしたかのように俺から遠ざかる。


「きゃっ……」


 俺の家は鬼ごっこができるほどに広くはない。やがて早希は壁側に追い詰められた。

 俺は早希の手をとってこちらに引き寄せる。

 そしてひとまわり小さい体を覆うようにして耳元に口を近づけ言った。


「今すぐ帰らないとーー」


 ピクっ、と早希は可愛らしく子猫のように体を震わせる。


「ーーお前のこと、フロランタンにしてやるぞ」


 俺は今、何を言っているかわからなかった。

 だってそうだろ?彼女もいない分際でこんな行動を起こしているんだ。正直、最初から大して頭は回っていなかったが……


 ただ、同じくらい早希は動揺したようで「あうぅ……」と言葉にならない呻き声を出している。


 早希は少し時間を置いてようやく復活した。

 素早く俺から離れ、まだ動揺しているまま俺に向かって指を刺して言う。


「わ、私が先輩のこといじるのはいいですけど……先輩が私のこといじるのはダメ!なんですからね!?」


 そうして早希はアニメなどに出てくる三下のようにそそくさと逃げ、窓から飛び出していった。


「えぇ……」


 嵐のように現れ嵐のように去っていった彼女のことを思い、俺はーー


「ーーよし、寝るか!」


 俺は考えるのをやめた。


 窓が開いたままの状態で寝た夜は、少し寒かった。



 後日

 早希の家に置いていったバイクを返しにいったついでに「なんでサキュバスの格好をしていたのか」と聞いた。

 早希は「私、本物のサキュバスですもん」と答えた。

 その証拠に羽を自由自在に動かしたりしていた。


 俺はまたも反応に困ることになった。


フロランタンはフランスの菓子です。

美味しいですよ〜。

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― 新着の感想 ―
[良い点] オチ。現代物だから、そんなもの実在しないと思いきやーー。まあ、羽動かしたのは手品かもしれませんが。 [気になる点] 登場人物の姿や描写が描写されていないので、場面が想像しにくい。イラストや…
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