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ホモ・サピエンスは邯鄲の夢を見る 〜コールドスリープから目覚めたら人類絶滅??人類最後の生き残りは医学と内政で成り上がる〜  作者: 自分にだけ都合の良い世界と書いて異世界と読むのは間違っていると思いませんか?
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第十五話「犬姫とうつけ者」

「…ネズミからの使者が来た?」


 犬人族を纏め上げる狗鳴組の代理頭首である少女がその知らせを受けたのは、失敗の知らせを受けた次の日の午後であった。

 知らせによると、使者の人数は女二人、男二人で四人。人数からして戦う意思がないのは明白である。

 しかし…


「ネズミ風情が!黙って差し出せばいいものを!」

「どっちが上か、わかんねぇらしいな。」

「俺達狗鳴組にたてつくとどうなるか、使者とやらにわからせてやる。」

「どうしますか、お嬢。追い返しますか?やっちまいますか?」

「…」


 若者に血の気が多いのはどの種族も変わらないようで、皆やる気満々である。


 対して少女はというと、意に反して心が揺らいでいた。

 既に一人で何か決めるのに疲れてしまっていた少女にとって、この使者は思いもよらぬありがたいアプローチだったからだ。


 とは言え少女は一度、戦って奪い取ると宣言した。

 ならば今更交渉してみようなどと言い出せるはずもない。

 組長という立場上、二言は有り得ない。あってはならない。


「…」

「「お嬢…?」」


 頭では分かっていても、追い返せと言うのは容易ではなかった。

 ここで一言発すれば、交渉の道は完全に絶たれる。

 それを未練に感じている自分が居るのは認めざるを得ない事実だった。


 その時である。


 目の前を巨大な黒い影が横切り、部屋の真ん中に降り立ったのだ。

 目にも留まらぬスピードに圧倒され、その黒い物体が黒い鳥の翼であると皆が理解した時にはただ一人。

 セツナだけが上座の少女の目の前に立ち、彼女を護るように刀に手をかけていた。


「な、何者だ!」


 一拍も二拍も遅れて皆が刀を抜く。

 その声がけに反応する様に、黒い球体はやがて巨大な翼となって折り畳まれ、四人の人物が姿を現した。


「皆さん、どうもこんにちは。」


 気の抜けるような穏やかな笑顔と共に、山伏風の格好をした烏人族の壮年女性が声を発した。

 このような大胆不敵な行動に出ていながら敵意がまるで感じられない。

 取り巻きの犬人達は困惑しながらも、気を引き締める為に剣を握った手に力を入れ直した。


「何がこんにちは、だ。ふざけてんのか?」

「女ァ!!ここが狗鳴組の次期頭首の御前と知っての行動か!」

「もしそうだってんなら…」

「「覚悟は出来てんだろうなッ!!」」


 四人を囲んだ10人程の犬人が一気に切り掛かった時だった。


「控えろッ!」


 威圧を込めたドスの効いた一言が、彼らの刀を止めた。

 それは普段あまり声を荒げない、彼らのリーダーの一声だったのだ。


 皆が状況を飲み込めずその場で静止した状態で、ただ一人セツナだけが、構えた刀を鞘に戻して壮年女性に尋ねる。


「…メイ。お前、また窓から…お嬢の御前で無礼だぞ。」

「ごめんなさい。この前の感じからして追い返されそうだったからつい…」

「…フッ。お前は変わらないな。」


 どうやらセツナと知り合いらしいと知った皆の緊張が解れる。

 同様に先程までセツナにしがみついていた犬人の少女も、先程の怯えを取り繕うように胸を逸らした。


「セツナの知り合い…なのよね…?なら…私は寛大だから許してあげるわ。名を名乗りなさい。」

「「はい。」」


 少女は四人の姿をざっとみた。


 メイとウイと名乗る、大きな黒い翼を持つ二人の女。

 共に同性でも見惚れるような美しい顔をしており、似たような山伏風の服装を身にまとい、長い髪を後ろで縛っている。

 立ち振る舞いに品があり、ただの村人や賊などではない事がひと目でわかる。顔つきからして二人はおそらく親子なのだろう。


 次にゼアロと名乗る神官風の男。

 立ち振る舞いが大仰でわざとらしい。しかも鼠人族の癖にどこか偉そうである。

 この男は目つきからして信用ならない。なんだかいやらしそうだし。

 少女は一目でそう判断した。


 そして…エーリと名乗る、白くて奇妙な服装をしたヒョロヒョロの男。

 彼も先程の二人と同じように烏人族のようだが、見た感じ警戒心もなく、立ちかたからして戦闘経験も無い。

 荷物持ち…にしても力がなさそうだし…あれは一体何の為に付いてきたのだろうか。

 まぁ、特に警戒するような人物ではないだろう。


 それぞれの名乗りと同時に品定めが終わる。


「お嬢、このメイという女はヤタ村の村長だ。使者と見て間違いないだろう。」


 セツナが少女に説明すると、少女の言葉を待たず、メイが前に出て言った。


「狗鳴組次期頭首のスープルさんですよね。貴方がカニスの代理村長という事でいいのですか?」

「…なんで私の名前を。」

「お会いしたのは二度目ですから。最も前はこんな小さかったから、覚えていないのも無理はないですけれど。」


 メイが指でものを摘むような仕草を見せて笑う。

 その笑顔と対象的に、スープルと言われた少女はやりにくそうな顔をした。


「それで、使者と言うからには話があるのでしょ?ここまで乗り込んできたその度胸に免じて一応は聞いてあげてもいいわよ。」


 気を取り直してふんぞり変えるスープル。

 メイはそんな少女に微笑ましいものを見るような生暖かい目を向けた。


「お元気そうで何よりです。ところで先程の話なのですが…実は私はただの付き添いで…

 お話はこの、本当の使者から致しますので。」


 メイが向けた指の先には、先ほど一番無害そうな印象を持ったヒョロヒョロの男がいた。


 本当にこの人で大丈夫なのか?

 敵ながら心配してしまうほどに覇気がないが。


 これが犬人族の長スープルと、後の長となるエーリの出会いであった。



 ☆



 いや、ホント驚いた。

 村の入り口で通せんぼされて、こりゃダメかなと思っていたら、メイさんがそのまま屋敷まで飛んで行っちゃいましょうとか言い出したのだ。


 勿論俺は危ないからやめとこうって言ったけど、気づいた時にはもう犬人の屋敷の中に居た。

 いや、どんだけ早いんだよ…烏人族…


 案の定めちゃくちゃ警戒されて、刀向けられて…もうこれでおしまいかと思ったら、あれよあれよという間に何故か何もかも上手くいってるんだからな。


 当たって砕けろも此処まで徹底すれば案外良策なのかもな。


「お前が…使者…?」


 セツナが鋭い視線を向けてくる。

 そんな目で見ないでくれ。俺だって自分が使者なのまだ納得してないんだから。


「…あなた…名前はなんだっけ…?」

「…エーリです。」


 狗鳴組次期頭首とかいう仰々しい肩書きを持つスープルという少女が、俺の名を再度尋ねた。


「…メイ、何故この素性の知れない男が使者なのだ。…そもそも信用出来るのか?コイツは。」

「そうです!この男は邪教徒の中でも最も危険な男。信用など出来ようもない!」


 セツナの素朴な疑問が飛ぶ。

 まぁ普通そう思うよな。

 でもゼアロ。話がややこしくなるからお前はちょっと黙ってろ。


 メイさんは即答せず、うーん、と首を傾げて悩むようなそぶりを見せた。


「…なんででしょうね。」

「メイ…そんな適当な事で」

「でも」


 珍しくセツナの言葉にメイさんが被せた。


「でも、わかるんです。エーリさんに任せておけば間違いは無いって。」

「…」

「私を信じて下さい。彼が信用に足る人だって信じる、私の事を。」


 メイさんのいつになく真剣な目が、セツナの目をしかと捉えた。

 まるでにらめっこでもしているのかという程の時間がそのまま流れ、やがて根気負けしたように、セツナが僅かに目元を緩めた。


「…わかった。お前がそこまで言うなら、俺からはもう何も言わん。」


 セツナは僅かに頷き、スープルという少女の隣に跪くように座った。

 スープルさんが俺の目を見た。どうやら話を聞いてくれるらしい。

 ゼアロはわかりやすく舌打ちをしたが、とりあえずは下がった。


 確かに俺は客観的に見て胡散臭い。

 そんな俺の身分をメイさんが保証してくれた、みたいな感じなんだろうな。


 相変わらず理由はスピリチュアルだったけど…まぁそれもメイさんらしい。

 麗奈だったらそんなものは根拠とは言えない、とかなんとか言ってたんだろうけどなぁ。


 よし。

 ごちゃごちゃ考えてないで、期待された分の仕事はしますかね。

 皆の視線を受けて、俺は大きく息を吸った。


「それではスープルさん。僕の話を聞いていただけますか?」


 俺は気合を入れ直した。


 ………

 ……

 …



 村でみんなに話したような内容を、出来るだけわかりやすくスープルさんに伝えた。


 俺達の村を襲っても一時凌ぎにしかならない事、食糧不足の長期的かつ根本的解決には、二村の協力が不可欠である事。そしてその具体的方法案。

 スープルさんはまだ若い。恐らく十代の折り返しを過ぎたくらいか。

 それでも村の村長代理として責任を持っているらしく、わからない事はわからないとわかるまで何度も質問し、自分なりに吟味を重ねているのが伝わってきた。


 日が暮れ始めた頃、やっと俺の説明に納得してくれたらしく、スープルさんは静かに頷いた。


「話はわかったわ。」

「良かったです。」


 スピースピーと謎の音が聞こえてくるので軽く周囲を見渡してみると、セツナ以外の犬人達は退屈だったのか、呑気に丸くなって昼寝をしているみたいだった。


 おいおい…コイツら護衛じゃないのかよ。

 なんて緊張感のない…


「…あなた達!起きなさいっ!」

「「はいっ!」」


 スープルさんが顔を真っ赤にして怒鳴ると、皆言葉通り飛び上がって目覚めた。

 少し申し訳なさそうにスープルさんが頭を下げた。


「…きっとみんな疲れているのよ。許して頂戴。」

「大丈夫、気にしてませんよ。」


 部下の為に格下にも謝れる上司か。プライド高そうだなと思ってたけど、意外といい子なのかも知れないな。

 俺が微笑むと、スープルさんも困り眉のまま少し笑った。

 スープルさんは視線を情けない部下達に戻すと、キリッとした眉になって言った。


「あなた達!私はエーリの案に乗る事にしたわ!」

「「え」」


 犬人達は口をぽかーんと開けて呆気に取られたような顔をしているが、スープルさんが続けて言った。


「聞いてなかったあなた達に、文句は言わせないわ!というか!あなた達今日晩ご飯抜きだから!」

「「ええっ!?」」


 さっきよりずっと大きな「え」、だったな。

 ムキムキで強面の男達が、勘弁してくださいよォ、と涙ながらに少女に訴える姿は申し訳ないがかなり情けなく見えた。

 ついさっきまで脳筋で戦闘狂ばかりのヤバい奴らなのかと思ってたけど、犬人って意外と抜けてて憎めない種族なのかも知れない。


 そんな事も、やっぱり現地に行って交渉して、実際に目で見て初めてわかる事だ。


 上手くいって本当に良かった。

 俺は確かな達成感で胸がいっぱいになった。



 ☆



 夜になったので一晩泊めてもらう事になったのだが、犬人達は俺達の為に宴会を開くと言ってくれた。


「お嬢が客と決めたなら、お前らは客だ」

「客はしっかりもてなさなきゃ、俺達の流儀に反するってもんよ」

「もてなすとなっちゃ宴会を開くしかねぇ。わかるよな、エーリ。」

「え、えぇ…」


 俺はどういうわけか彼等に好かれやすいらしく、若者に肩を組まれてこんなことを言われた。

 なんというか…むさ苦しい筋肉に押しつぶされそうだ。


 たまたま通りかかったスープルさんがその会話を聞いたのか、顔を真っ赤にして走ってきた。


「あなた達っ!私達はね、今、そんな事してる余裕はないのっ!」

「お、お嬢っ!?」

「違うんです!これは…そう!冗談ですよ!」


 嘘臭く笑いながら、足早に去っていく2人の犬人。スープルさんはその後ろ姿を眺めながら、ハァと溜息をついた。


「ごめんなさい。本来ならあの二人の言う通り、宴会を開いてもてなすべきなのに…」

「いや、良いんですよ。僕もちょうど、どうやって断ろうか考えていたところですから。」


 二人してハハハと笑う。

 沈黙が流れ…変な空気になってしまう。

 お互いが気を使って緊張してるからだろうな。


 スープルさんも余程居心地が悪いのか、やけにもじもじしているし。


「…エーリ。その…あの…」


 何かいいたそうだが…さっき話し合ってた時と違って、俺と目を合わせてくれない。


「どうしました?」

「……あとで…色々と話があるから。」


 それだけ言い残して、走って何処かへ行ってしまった。


 ………

 ……

 …


 宴会は当然無くなったが、晩御飯は座敷に座って犬人達と一緒に食べた。

 犬人は肉しか食べないって聞いてたけど、どうやらその通りみたいで、塩漬けした肉や酒と言ったなかなか塩分過多になりそうな食事だった。

 人間の食事は犬猫には塩分多いって聞いたことあるけど…亜人は大丈夫なんだろうか。


 犬人達は俺とウイ、メイさんに対してはそれなりに距離を詰めてきたが、鼠人族のゼアロには終始距離感があったような気がする。

 鼠人と犬人は仲が良くないって話があったが…。

 それが原因なのか、ゼアロの人格に問題があるからなのか…。


 いずれにせよ、これからの計画の事を考えると不安だ。


 技術協力の為に、知識のある人を暫く交換して滞在させる話になっている。

 つまりこの村にも鼠人が数人滞在するって事だ。

 喧嘩せずに上手くやれると良いが。




 質素な食事が終わって、スープルさんに部屋に呼ばれた。

 俺だけ呼ぶって事は、何か技術協力の件で質問でもあるんだろうか。


 襖で仕切られた大部屋の前で、中のスープルさんに聞こえるように大きな声で名乗る。


「エーリです。」

「入って。」


 スープルさんは上座に座って待っていた。

 …しかし、改めてこの部屋をみると思うんだが、これだけ広い部屋の中で、小柄なスープルさん一人だけってのがなんか凄いな。

 なんていうか、ポツンとしてて寂しそうだ。


 作法とか何もわからないので、とりあえずスープルさんの前で深くお辞儀だけして、正座して座った。


「そんなかしこまらないで。私まで疲れちゃう。」

「ああ、ごめんなさい。」


 スープルさんのいう通り、同じようにあぐらをかいて座った。

 …再び変な沈黙。

 話があるからと言って呼ばれた気がするんだが…


 開け放たれた木製の窓枠から少し欠けた大きな月が顔を覗かせていて、まるで今の状況を監視されているような気がした。


 ーリーンリーンー


 沈黙が気になっていると、鈴虫かなにかの秋の虫の音が、広い部屋の中に満たされているのに気がつく。

 もうじき秋も終わる。

 彼等も最後の命を振り絞って鳴いているのかもしれない。


 呑気に虫の声なんて聴いてるのは俺だけかと思いきや、向かいに座るスープルさんも同じだったようで、彼女の口からボソッと声が漏れた。


「…いいわよね。鈴虫の声。」

「…はい。何故だか懐かしいような気がします。」


 地下で生活していた俺にとって、鈴虫の声なんてのはそれを模した機械音声でしか聞いたことがなかった。

 実物はこんなにも、心を落ち着かせる音色だったんだな。

 音としてではなく、声として、静かに吹き抜ける夜の風とともに肌で捉えると、なんだか変に固まっていた体がほぐれていく気がした。


「私ね。こう見えて昔は結構おてんばで。」


 こう見えても何も今もじゃないですか、と野暮なことは思っても口に出さない。


「小さい頃は屋敷から抜け出して森で木登りや虫取りに明け暮れてたのよ。」

「そうなんですね。」

「鈴虫と言えば、私こんなことをしたことがあって…」


 スープルさんも俺と同じなのか、変に意識しないでリラックスした事で、自然と話が出てきたように思えた。

 これまでのどこか張り詰めた様子ではなく、穏やかで優しい顔つきになった。


 これが彼女の自然な顔なんだな。

 なんとなくそう感じた。


 ………

 ……

 …


 しばらくスープルさんの昔話を聞いていたが、自然と話題が途切れる。

 でもどういうわけか、もう沈黙があまり苦にならないような気がした。

 窓の外の大きな月が、煌々と薄い白色光を放ってスープルさんの背中を優しく照らしている。


「なんだか、良い意味で力が抜けたわ。」

「僕もです。」


 二人して笑った。


「私ね、エーリに感謝してるの。」

「僕に…?どうしてですか?」

「あなたが来てくれなかったら…私とんでもない事してたと思うから。」


 確かに…攻め滅ぼすのも辞さないって雰囲気だったもんな。


「それはお互い様ですよ。スープルさんが話を聞いてくれなかったら、僕らは大変な事になってましたから。」

「…もしそうなってたら、それも全部、私のせいよ?」

「それでもです」

「変な人ね」

「よく言われます」


 話に一拍置いて、スープルさんが再度口を開いた。


「エーリ、あなたをここに呼んだのはね、感謝を伝える為なの」

「感謝…ですか。」

「そう。」


 それは俺にされても困るってもんだ。俺はただ、誰にでも出来ることをしただけに過ぎないしな。

 謝罪にしたって、何一つ実害は無かったわけだし。


「…機会があれば、僕ではなく村のみんなに感謝の言葉を伝えてあげてください。」

「…そう、ね。」


 何故か少しだけ不満そうな顔をするスープルさん。


「私はあなたに、族長としてじゃなく、個人的な感謝を受け取って欲しいの」

「え?」


 彼女は瞬きをせず俺の目を見た。


「私、この前初めて村の事任されて…どうしたらいいか分からなくて…必死にもがいていたわ。

 みんな黙って私についてきてくれたけど…その期待が逆に重くて、辛かった。

 でも…貴方は…私に手を差し伸べてくれた。対等な立場で、一緒に考えてくれた。」

「…ちょっと失礼な態度でしたかね。」

「そうね。でも、そんな態度が、今の私には必要だったの。だから…嬉しかった。

 この気持ち…村の未来を任されてここに来た貴方にならわかるかしら。」


 俺は静かに頷いた。


 村の大事によそ者の俺が重役を任され、その余りある責任が辛かった。


 俺なんかがやって良いのか。こんな空っぽ(うつけ者)の俺が。


 きっとこの子も、そんな気持ちに押しつぶされそうだったんだろう。


 面と向かって感謝を伝えるのが恥ずかしかったのだろうか。

 彼女は頬を赤く染め、少しはにかみながらも、俺の目を見て言った。


「…ありがとう。これからもよろしくね。」

「はい。よろしくお願いします。」


 今日初めて会ったはずなのだが、なんだかこの人とは仲良くなれそうな気がした。


ブクマや感想、お待ちしてます(-_-)zzz

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