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【50000PV達成!】勇者ゲーム ~13人の勇者候補は願いを叶えるため異世界で殺し合う~  作者: 玄野 黒桜
湿った大地に咆哮す

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己を知り、心を定める

2020/8/30 改稿

 ギルドで指名依頼を受けた翌日から2日間は当初の予定通り閉ざしの森についての調査をして過ごした。大移動(スタンピード)に関しては指名依頼である程度調べられる目処が付いたため、この期間での調査からは除外した。


「結局分かったことは北の大森林のどこかにある大ビグバルの木が目印ということだけか」


「森の中で位置が正確じゃない以上、それだけ分かっただけでも収穫とするしかないですね」


 スギミヤさんの言葉に俺は気休めと思いつつも言葉を返す。ビグバルの木というのはハルヴォニの森にも多く群生しているあのバオバブの様な木の名前だそうだ。その中でも北の大森林にある大ビグバルの木は他の木と比べても明らかな大木で、樹齢は数千年とも言われているらしい。


 ただ、不思議なことにそれ程の大木でありながら森の外からは一切その姿が確認出来ないことから、“まぼろしの木(イマジンツリー)”と呼ばれているそうだ。


 そんな話をしていると外から鐘の音が聞こえてきた。ちょうど五つ目の鐘(午後2時頃)だ。


「あ、そろそろブルンベルヘン工房に行きましょうか?」


「ん?もうそんな時間か?」


 俺たちは席を立つと休憩のために立ち寄った店を後にした。




「お!来たか!」


 ブルンベルヘン工房に入るとちょうどカウンターにカトリナさんがいて、俺たちを見ると待ってましたとばかりに声を上げた。


「お待たせしましたか?」


「なに、ついさっき完成したから休憩がてら待ってただけだよ」


 カトリナさんは「すぐ持ってくるからちょっと待ってな!」と言うと一旦店の奥へ入っていった。暫くして戻ってくると持っていた木箱をカウンターの上に置いた。


「さて、まずは坊主のほうからだ。おっと、その前にこれは預かってた装備品だ」


 そう言うと木箱の中から預けていた装備品一式を取り出した。


「確かに受け取りました」


 俺はそれを受け取ると持っていた袋へ装備品をしまう。


「じゃあ早速確認してくれ。一応大丈夫だとは思うが身に着けてみてくれ」


 俺が装備品をしまうのを確認してからカトリナさんが取り出したのは、以前とは違う黒い革で出来た鎧だった。早速言われたとおりに身に着けてみる。装備してみると以前の物とは着心地が全く違っていた。


「以前の物より軽いですね。それに動きやすい」


 以前の物もかなり軽くて動きやすかったが、今回の革鎧はそれよりも更に軽く、尚且つ体の動きに合わせる様に伸縮している感じがした。


「そうだろう。預かった鎧は金属繊維に蜥蜴亀(リザードタートル)の革を貼り合わせてただろ?今回は純粋に革だけで作ってあるからな。それでいてより頑丈になってるはずだ」


 カトリナさんは少し自慢げに鼻の下を指で擦る。


「何の素材を使ったんですか?」


「下地は大鬼熊(オーガベア)の革だ。あんたらが倒したんだって?」


「えっ!?大鬼熊(オーガベア)ですか!?」


 俺は驚いて聞き返す。


「そう、その大鬼熊(オーガベア)だ。戦ったなら分かるだろうが奴らは毛も皮膚もそこらの金属なんかよりよっぽど硬いけど伸縮性があるんだ。その大鬼熊(オーガベア)の革にこれまた硬い硬鎧犀(アーマーライノ)の革を貼り合わせた」


硬鎧犀(アーマーライノ)】は蜥蜴亀(リザードタートル)と並ぶ革鎧の素材として人気のクリーチャーだ。アーリシア大陸に多く生息しているが生半可な武器では傷付けるのも難しいため、討伐数自体は非常に限られていると言われている。


「いくら繊維にしてるとはいえ金属は金属、動きに合わせて形を変えるには限界がある。それに比べて純革製は体の動きに合わせて形を変えてくれるからね。動きやすいと感じるのはそのためさ」


 カトリナさんの話を聞きながら俺はいろいろと動いてみる。確かにどんな動きをしても体にフィットして稼動域が広がった感じがする。カタリナさんはそんな俺に苦笑しながら同じ素材のヘッドギアとグローブを渡してくれたのでそちらも装備してみる。


「ありがとうございます!これで今まで以上に戦えます!」


「当たり前だろ?あたしの仕事なんだぜ?」


 興奮気味に言う俺を笑いながらカトリナさんも自慢げに言う。


「次はそっちの兄さんの分だ。まずは修理した鎧から確認してくれ」


 そう言って出されたスギミヤさんの黒い全身鎧(フルプレート)は、見た目には付いていた細かい傷がなくなり新品同様だった。


「素材の扱いに自信が無いようなことを言っていたがこれならば十分取り扱えてるんじゃないか?」


 スギミヤさんも出来に満足しているのかそんなことを言っている。


「小さな傷の修復くらいならね。この盾くらい深く傷付いてるとあたし程度の腕じゃ無理だね。それにここじゃ設備が足りないんだ」


 それに対してカトリナさんはそう言って苦笑いを浮かべた。そこに悔しそうな様子はなく、先日彼女が言ったとおり、自分の役割を見つけてそれを高めることを目標にしているのだろう。

 人によってはそれは『諦め』と映るのかもしれないが、俺には自分の役割に誇りを持っている彼女が眩しく見えた。


「さて、お次は本題のその盾の方だ。確認しておくれ」


 言って彼女が取り出したのは元の盾と同じく黒いラウンドシールドだった。表面が膨らんでおり受け流しに適しているのも以前と同じで、デザインの違いも殆どない。


「俺には同じ物の様に見えるが?」


 スギミヤさんも同じことを思ったようでカトリナさんに質問している。


「色は同じだけどね。これは普通の鋼に宝石と魔石を溶かした物を吹き付けた“黒鋼”って素材を使ってるから素材としては全く別物さ。試しに装備して魔力を通してみな」


 言われたスギミヤさんが装備して魔力を通している。


「っ!?」


 するとその表情が驚きに変わった。


「分かったかい?純粋な硬さは黒ウーツに劣るけど魔力の伝道効率はこっちが上のはずだ。【硬質化】の魔法を付与(エンチャント)してあるから、いざってときは魔力を流せば瞬間的な硬さはこっちのほうが上になるはずだ」


 なるほど。通常時の防御力の低下を付与(エンチャント)で補っている訳か。より効率的に運用するための素材を選択してるという訳だ。


 こういう加工を自分だけで出来ること、というのが彼女、カトリナさんの強みなのだろう。俺はそんな彼女を純粋に尊敬できると思った。


「これはすごいな。確かに今まで使ってた物と感覚は違うが思ったより違和感がない」


「そいつは良かった。まあまた何かあれば持って来な」


 彼女はそう言ってニカッと笑うと親指を立ててサムアップした。


「ありがとうございました。正直使い慣れた装備を変えなきゃってことで不安でしたが、カトリナさんにお願いして良かったです!」


「よしなよ!褒めても何も出ないよ!」


 俺がお礼を言うと彼女は顔を赤くして両手をブンブンと振った。そうして俺たちは料金の支払いをして工房を後にした。

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