異世界事情③
漸く説明回が終わります。
2020/8/20 改稿
「さて、問題はここがどの辺りで、どの方向に進めば人のいるところに出るか、か…」
もう一度辺りを見回しみるが、前後左右、どこを見ても森が続いているだけ。道も森の切れ目も見当たらない。
「うーん、太陽の位置を見ても今が何時くらいか分からないから参考にならないし…」
異世界の常識によるとこの世界も太陽は東から登って西に沈むらしい。
ただ、この異世界の常識の厄介なところは、常識しか分からないところだ。
あくまで大多数が常識と認識していることしか分からないため、例えば学者や研究者などの一部の知識人が有している先端知識はこれに当てはまらない。
「とりあえず南の大陸ではないことは確かだと思うんだけど…」
この世界には3つの大陸がある。
一番大きなフェルガント大陸、その西にあるアーリシア大陸、2つの大陸の南にあるクロギア大陸である。
この3つの大陸のうち、南にあるクロギア大陸は年間を通して気温が高く、大陸の5割が砂漠、3割が岩山でなんとか耕作が可能な地域は2割ほどしかないそうだ。
鉱物資源が豊富な大陸だそうで、岩山にはドワーフと魔族が、砂漠には砂漠の民の国があるらしい。
ちなみにここで言う魔族は、魔王の眷族という訳ではない。
彼らは普通の生物と食性が異なるそうで、基本的にマナという魔力の素を糧としているそうだ。もちろん普通の食事も出来るらしいが、それも食事に含まれるマナを吸収しているらしい。
そのため他の種族に比べ魔法適性が高く、ドワーフが作製する武具に魔法属性を付与する、所謂【付与師】を生業にしている者が多いそうだ。
「季節はわからないけど、周りを見る限りは南の大陸ではないよなぁ。そうなるとフェルガントかアーリシアなんだけど…どっちも森の多い大陸だからなぁ。」
この世界最大の大陸、フェルガント大陸は最北端にある万年雪に覆われた山脈から湧き出る水が、そのまま大陸を横断し海まで続く大河になっている。この大河は広いところだと川幅が数kmにもなり大陸を東西に分けている。
山脈の麓は樹海が広がっており、そこを抜けると平原がある。大陸中央では平原から南下するとすぐに大河に沿って森が広がっているため、大陸の東西を移動するためには樹海から大河の森までの間に架かる橋を渡るしかないらしい。
大河に沿って広がる森はそのまま“大河の森”と呼ばれているようで、非常に豊かなのだがクリーチャーが多く開拓は進んでいないようだ。
また、“大河”というくらいだから川幅も広く、水中にクリーチャーや獰猛な動物が多く生息しているため、新たに橋を架けたり舟で移動するのも難しいらしい。
ただし、この大河やその支流のおかげで水が豊富な上、大地は肥沃で平地も多い。森の資源にも恵まれているので3大陸の中では一番人口が多く、他の大陸からの移住者も多いため、様々な種族が生活している大陸でもある。その分国も多く、ここ数年は落ち着いているものの戦乱の多い大陸でもあるそうだ。
最後の西の大陸アーリシアは森と湿地の大陸と言われている。
やはり耕作可能な地域が限られているため、主に狩猟や採集で生活の糧を獲ており、獣人種やエルフが多く住む大陸だと言われている。
獣人種もエルフも種族ごとに小さなコミュニティを形成しており、縄張り争いなどの小競り合いが多い地域だそうだ。
なお、この世界ではエルフ・ドワーフが精霊信仰、獣人種は祖霊信仰、人種は多神教で大きな宗教組織がないため宗教対立は少ないらしい。
「さて、周りの雰囲気からはたぶんフェルガントだと思うんだけど、森を出ないことにはこの後の行動も決められないし、とりあえず太陽の方角に歩いてみるかな。森を抜けるか大河にぶつかるだろうし。ついでに街に着いた時に売れるものも採れるといいなぁ」
そんな皮算用をしながら、俺は空っぽのカバンを肩に担ぎ直すと太陽に向かって歩き始めた。




