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【50000PV達成!】勇者ゲーム ~13人の勇者候補は願いを叶えるため異世界で殺し合う~  作者: 玄野 黒桜
そして旅路は始まり、世界は動き出す

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主都バルビエーリ

2020/8/23 改稿

 翌朝早々に俺たちはクォールの街から出ることにした。

 昨日『総団長』と呼ばれていた男のことは気になるが、それ以上にトラブルに巻き込まれるのは避けたかったからだ。


 次は主都バルビエーリへ向かうことになるのだが、乗り合い馬車乗り場はかなり混んでいた。元々クォールの街↔バルビエーリ間の移動は活発なのだそうだが、今はバルビエーリに向かう避難民が多いので余計に込み合っているそうだ。


「こんなことなら昨日のうちに予約しておけば良かったですね」


「日が昇る頃には乗れるだろうが、これでは今日中にバルビエーリに入れるか分からんな」


 順番待ちをしながら、スギミヤさんとそんなことを話す。夜明け前ならそこまでではないだろうと考えていたが甘かった。


 バルビエーリはここから馬車で1日程の距離にある。夜明け前にクォールの街を出れば夕暮れ前にはバルビエーリに入れるのだが、このままだと夜明け前に順番が回ってくるかは怪しい。


 更に出発が遅くなれば野営を考えなければいけない。一応クォールとバルビエーリの間にも村が1つあるのだが、街道から少し内陸に入ったところに位置するため、乗り合い馬車の経路からは外れている。


 避難民の流入があるため巡回も増やされてはいるが、治安に不安があるのでなるべくなら野営は避けたい。




 2時間くらい待っただろうか?

 完全に日が登った頃、漸く俺たちの順番がきてクォールの街を出発することが出来た。


 クォールを出ると長閑な田園風景が広がっていた。


 アルガイア北部は北の山脈が万年雪に覆われていることかも分かるとおり、山脈との間に樹海があるとはいえ年間を通して気温がそれほど高くなく冬の時期はかなり積雪するそうだ。


 南部は気候が安定しているため、この辺りは中部地域と合わせてアルガイアの食を支える穀倉地帯となっている。


 そんな長閑な景色を進むこと約1日、遠くに大きな街が見えてきた。

 ウィーレスト程ではないが高い壁に囲まれたあの街がバルビエーリ都市領の主都バルビエーリだろう。


 近付くにつれ、門の前に入場待ちの長い列が出来ているのが見えた。



■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 長い列に並び、俺たちが漸くバルビエーリの街に入れたのは、日も傾き始めた頃だった。

 目抜き通りにはいくつもの商店や屋台が並び、夕食の買い物をする地元の人や仕事終わりに飲みに行く人で随分と活気があった。多少巡回中らしい衛兵の姿は多いが、クォールの街に比べると和やかな雰囲気で殺気立った所もない。


 この主都バルビエーリは人口3万人と言われている。

 クォールと合わせるとバルビエーリ都市領の人口の約8割がこの2つの街に集まっていることになる。住民は都市政府の文官や兵士を除くと、大半が街の外の穀倉地帯で働くか何らかの商売をしているそうだ。


 人の出入りが多いため、先に宿を確保する。

 さすがに主都だけあり、この街に傭兵は入れてないそうだ。治安も悪くなさそうだが、まだまだ先は長いため、やはり3人で一部屋を取る。


 せっかくなので宿での夕食を断り、買い出しついでに外で食べることにした。




 バルビエーリの市場にはエーシア湖周辺の森で取れる物やアルガイア内陸の産物が多く売られていた。


 アルガイアは地形の変化が少なく、気温の低い北部では酪農や樹海付近では養蜂も盛んらしい。ウィルゲイドではあまり見ないがチーズなども売られていた。エリーゼちゃんは物珍しいらしく辺りをキョロキョロしながら歩いている。


 俺がチーズや干し肉などの保存がきく物の店を見ていると、スギミヤさんが慌てて近付いてきた。


「エリーはこっちに来てないか?」


「いえ、スギミヤさんと一緒だったんじゃないんですか?」


「それがちょっと目を離した隙にはぐれてしまったんだ」


「手分けして探しましょう!」


 さすがに知らない土地で女の子が1人になるのはまずい。俺たちは手分けして辺りを探すことにした。


 いくらなんでも知らない街の路地裏に入っていくとは思えなかったため、俺は目抜き通りを探すことにした。

 人の流れに流されてしまった可能性もあるので、宿とは逆方向を探す。食べ物の屋台や小物を売っている露天も見て回る。


 少し離れたところに金髪の女の子が路地裏に入ろうとしていた。


「エリーゼちゃん!」


 慌てて駆け寄り手を掴む。


「えっ!?お、お兄さん誰ですかっ?!」


「ごめん、人違いだった…」


 知らない女の子だった。謝って辺りを見回す。だいぶ日も落ちてきた。もうこの先は住宅街のため、俺は来た道を戻ることにした。



 宿の前まで戻るとすでにスギミヤさんがいた。そばにエリーゼちゃんの姿はなく、衛兵と何やら話している。俺に気付くと衛兵に何事か告げてこちらに駆け寄ってきた。


「その様子だと見つからなかったようだな…」


 スギミヤさんの声に力がない。


「はい…、そちらはどうでしたか?」


「こちらも見つからなかった。今衛兵にも捜索をお願いしていたところだが、最近避難民を中心に誘拐事件が増えているらしい。何か事件に巻き込まれた可能性もある」


 スギミヤさんが聞いた話では最近街に来た避難民の子供や若い女性の行方不明が増えており、俺たちが街に入った時に見た衛兵も巡回を増やしたからだそうだ。


「誘拐?避難民ということは身代金目的というよりはどこかに売り払うつもりですかね?」


 この世界では奴隷が存在する。

 借金を返せない場合の借金奴隷や犯罪を犯した者がなる犯罪奴隷はもちろん口減らしなどで売られる場合もあるそうだ。


 アルガイアでも奴隷商が盛んな地域があるそうで、避難民が入ってくるようになってから頻繁にそういった者たちが街に出入りするようになったという。


 そんな商人の中には犯罪まがいの誘拐を行う者もいるらしく、首長から苦情も出しているそうだが、証拠もないためのらりくらり躱されているらしい。


「まずいですね。単純に救い出しただけでは権利を主張される可能性もあります」


 そう、厄介なのは助けたとしても誘拐を証明出来ない可能性が高いという点にある。

 ステータスカードを取り上げられ、権利書を出されてしまうとこちらが犯罪者になってしまうことすら有り得るのだ。


「幸い衛兵の話を信じるなら、行方不明が増え始めてからそれらしい者は街から出ていないらしい。恐らく街の出入りのチェックが厳しくなったので、攫った人たちを動かせないんだ」


 スギミヤさんが衛兵から聞いた情報を教えてくれる。

 つまり誘拐犯は街の何処かに拠点を持っていて、そこに攫った人たちを一旦捕らえてから外に出るつもりが、今は動けないということだ。


 そいつらが街から出てしまう前に居場所を突き止めて、エリーゼちゃんや攫われた人を救い出す必要がある。


「今日来たばかりの俺たちにはこの街のことが分かりませんし、とにかく情報を集めませんか?」


「そうだな。手分けして情報を集めよう。衛兵に協力してもらうことになるからもしれん。七つ目の鐘がなったら東側の詰所前に集まろう」


「分かりました」


 そうして俺たちは情報を集めるためにそれぞれ街へと駆け出した。

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