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初査定

2020/8/20 改稿

 イリスは先程と同じ席に座っていた。そばによって声を掛ける。


「お待たせして申し訳ありません」


「いえいえ、大丈夫ですよ。無事登録は完了しましたか?」


「はい。一通り説明も受けてきました。査定はもう終わりましたか?」


「それは良かった!査定は終了して買取も終わりました。こちらが査定結果とノブヒトさんの取り分になります。ご確認ください」


 礼を言ってイリスから価格表とお金を受け取る。


 森山猫(フォレストリンクス)の爪は四肢計20個で一つ銅貨5枚、魔石には鑑定結果に『緑D3級』と書かれており、査定額は銀貨6枚と書かれていた。そこから手数料と税金の合計二割が引かれ、最終買取金額は銀貨5枚と大銅貨6枚、それは2人で折半したので、受け取った金額は銀貨2枚と大銅貨8枚、間違いない。


 日本円で約2万8千円、手持ちと合わせると銀貨2枚、大銅貨15枚、銅貨5枚、鉄貨20枚で、日本円で約3万5千700円、何もせずただ滞在するだけなら約8日は朝夕食事付きで宿泊出来る金額になった。約半日でこの金額なら割のいいバイトと言えるかもしれない。危険手当は付かないが…。


「確かに受け取りました!ありがとうございます。俺はこれから採集した薬草の買取手続きをしてきますので、もう少し時間が掛かります。お待たせするのも悪いですし、ここまでで大丈夫です。イリスさんのおかげで野宿せずに済みました!今日は色々ありがとうございました。このお礼は近いうちに改めてさせていただきます!」


 これ以上イリスのお世話になるのも悪いと思い、お礼を言って解散を告げる。


「気にしないでください。宿も分からないでしょうしお待ちしますよ」


 イリスは気にする様子もなくそう言ってくれた。


「いえいえ、そこまでしてもらうのは悪いですよ!宿はギルドに言えば提携のところを紹介してくれると思いますし!」


 さすがにこれ以上はと思い、その旨を伝える。


「これも何かの縁ですし、ここで別れてしまうと次にいつお会い出来るか分かりませんから。ギルドで伝言の受付なんかもしてくれますが、連絡先が分からないのは不便ですからね。それにこのくらいの時間になると粗方買取の手続きも終わって、窓口も空いてますよ、ほら」


 イリスに促されて買取窓口を見ると、確かに登録の手続き前には数十人並んでいた列も、今は数人を残すのみになっている。


「それに剥ぎ取りや解体の査定に比べて、採集の査定は手続きに掛かる時間が短いですから」


「だから待ちますよ」と言うイリスにこれ以上断るのは逆に失礼かと思い、「すぐ行ってきます!」と慌てて買取受付の列に並んだ。


 並んでる間に採集した薬草と毒消し草の中から、薬草50枚と毒消し草30枚を別にして、受付には薬草218枚と毒消し草109枚を提出した。


 採集の受付は俺しかいなかったようで、すぐに査定は終了し、薬草が13枚買取不可で1枚銅貨1枚、205枚で大銅貨2枚と銅貨5枚、毒消し草が8枚買取不可で同じく1枚銅貨1枚で、大銅貨1枚と銅貨1枚になり、合計で大銅貨3枚と銅貨6枚。そこから手数料と税金がまた二割引かれて、大銅貨2枚と銅貨8枚、鉄貨が8枚で日本円で約2千880円…。


 買取不可の物は無償で処分してくれるそうで、そのまま処分してもらうようお願いする。とりあえず見分けがつくものだけを採集していたが、約2時間近く採集してこの金額だと、採集だけで今後の路銀を稼ぐことは難しそうだ…。


 ちなみにこういった薬の素材関係の採集は、常時依頼が出ているので規定数を納めればそれだけで依頼達成となるそうだ。わざわざ完了報告窓口まで行かなくてもその場で達成の手続きもしてもらえるため、この辺りは現代日本の役所よりも融通が効くところかもしれない。


 最終査定金額と受け取った金額を確認して、了承のサインをする。入場と同様、同じ内容の書類もう1枚にもサインし、合わせて採集依頼完了書類薬草100枚、毒消し草100枚の計3枚分、それぞれ2組の合計6枚にもサインする。それぞれをギルド側がチェックして、割印を押されこちらの控えで4枚の書類を受け取った。


 査定のついでにギルド直営の薬屋で、薬草と毒消し草をポーションに調合してもらえるか聞いてみた。手数料は掛かるが加工してもらえるとのことで、この後向かうことにする。


 手早く査定を終え、イリスのところに戻って薬屋に調合を頼みたいことを告げると一緒に来てくれると言う。良い人過ぎる!


 そのままイリスと連れ立ってギルドを出ると、左隣の薬屋に入る。店内はカウンターと手前にベンチがあるだけの狭い造りで、青臭い匂いと薬品の匂いが混じった何とも言えない匂いが充満したしていた。


 店舗は狭いが奥行があるようで、ちらっと見えたカウンターの奥にはそれなりに広い作業スペースがあるようだった。


「いらっしゃいませ。本日はどのような薬をお探しですか?」


 対応してくれたのは、作務衣に似た服を着て頭にタオルを巻いた40代くらいの茶髪に青い瞳の渋い感じのおじさんだった。髭はきちんと剃られており、不潔な印象はないが、この独特の匂いが服に染み付いてそうで、(それもどうなんだろう?)なんてしょうもないことを思ったりした。


「素材持ち込みで傷用のポーションと毒消しのポーションの調合をお願いしたいんですが?」


 調合依頼を伝える。


「かしこまりました。素材を確認させてもらえますか?」


 カバンの中から先程分けた薬草50枚と毒消し草30枚を渡す。


「確認しました。傷用ポーション5本と毒消し用ポーション3本になりますが、宜しいですか?」


「それで大丈夫です」


「では金額ですが、手数料が1本あたり鉄貨5枚、8本ですので銅貨4枚、素材持ち込みですので、ギルドの買取価格と同じ1本あたり銅貨1枚は引かせて頂きます。ポーションの通常価格が1本銅貨3枚ですので、手数料込で1本あたり銅貨2枚と鉄貨5枚、合計大銅貨2枚です」


 通常購入すれば大銅貨2枚と銅貨4枚、約400円はお得といったところか。


 おじさんに大銅貨2枚を渡す。調合の依頼書にサインし、引換証を受け取る。


「明日の夕方には完成していると思いますので、引換証をお持ちの上、ご来店ください。ありがとうございました」


「宜しくお願いします」と挨拶して店を出る。


「わざわざこんなことにまでお付き合いいただいてありがとうございます」


 付き合ってくれたイリスに礼を言う。


「いえいえ。私が強引に着いて来ただけですから。それで、宿なんですが、良ければ今晩はうちに泊まりませんか?」


 えっ?!

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