~第二の錦織圭たちに贈る言葉(34)~ 『長時間練習で疲れて来たら打球練習はするな、悪い癖が身に着く』
〜第二の錦織圭たちに贈る言葉(34)〜
『長時間練習で疲れて来たら打球練習はするな、悪い癖が身に着く』
1. まえがき;
2020年1月の全豪オープン男子決勝をTVで見た。
ティーム選手が4−6、6−4、6−2、3−6、4−6でジョコビッチ選手に敗れた。第2、第3セットを取ったが、第4セットの後半から突然、フォアハンドストロークのバックアウトやサイドアウトのミスが出始めた。これが直接の敗因であるが、真の敗因は表記した様に疲れてきて身に着いた悪い癖が出てきた事である。それは、体重を後ろの軸足に乗せ過ぎる為に、前方への体重移動が疲れのため出来なくなり、インパクトの瞬間に返球打球の反力で上体が後方に動き、微妙にラケット面が上向きになり、バックアウトすることになったのである。また、ジョコビッチ選手の強打のボールに押されて返球がネットを越えられない場面も出て来ていた。
一見するとスクエアスタンスで打球しているように見えたが、スロー再生の映像をよく見ると、後方の右の軸足に体重を乗せたまま、前方の足が地面から浮いてスィングを行っているため、上体が後方にのけぞるようになっていた。これは、長時間練習で疲れて打球を追いかけストロークすると云う、やっとこさの練習を繰り返していた為に、疲れるとよく起きる現象である。手打ちで返球するように癖が着いてしまうのである。
2. 贈る言葉;
『疲れてきたら、素振り練習に切り替えろ。』
疲れている時に確実にストロークの基本を身体に覚え込ませることが重要である。
ベーススライン上に立ち、相手選手からの返球をイメージし、コート上を右や左、前方に走って、しっかりと打球する基本イメージの素振りを繰り返し、身体に基本を覚え込ませることである。スクエアスタンスで打つ基本をしっかり身につけることである。
ストロークの基本とは、スクエアスタンスで、身体の正面でボールをインパクトし、インパクトから体をネット方向に移動させて打球することである。このイメージで素振りを繰り返すことで基本が身に着く。
もちろん、しっかりとスピードをつけて走り、スタンスをしっかりとることを忘れてはいけない。
ジョコビッチ選手はこれが出来ているから、土壇場でもミスが少なく連続優勝が出来たのである。
あとがき;
最近のティーム選手はテークバックを小さくし、フォロースルーもコンパクトになって、相手の予測(アンティシぺ―ション)を遅らせ、待機位置への戻りが速くなり、ATPツアーでの優勝も増えていた。「ああ、かつての欠点が無くなったな」、と思っていた矢先の敗退であった。
朝日新聞スポーツ欄によると、試合後の談話で『少しの運や、ささいな事が勝敗を分けた』とティーム選手は述べていたようであるが、自己分析が間違っている。この感覚ではこの先も4大大会での優勝は望めないだろう。もう一度、自分を見つめ直し、考え方を改める必要があるだろう。
付け加えるなら、真夏の炎天下の練習も適度に切り上げ、夜や朝の涼しい時に練習することをお勧めする。悪い癖を身につけないことが肝心である。
『諸君の健闘を祈る』
目賀見勝利より第二の錦織圭たちへ
2020年2月5日
追記1;2020年2月のリオデジャネイロATP500の準々決勝でティーム選手は6-7、5-7で敗れた。
全仏と同じアンツーカーコートでの試合であった。打球が遅いのでストロークをしっかり打た
ないと、相手選手に簡単にコースを狙われ、振りまわされる。しかし、身体を前に押し出す
ストロークが出来ていない癖が出たティーム選手の打球は威力がなく、相手選手に打ち込まれ、
ボールがネットを越えないことが度重なり、敗れた。(2月23日追記)
追記2;2020年2月のドバイATP500の準決勝でモンフィス選手がジョコビッチ選手に
6-4、6-7、1-6で敗れた。第2セット後半から疲れが見え始めたモンフィス選手はストロークが
腰高になり始め、バックアウトミスが少しずつ出て来た。ジョコビッチ選手は試合の初めから
ドロップショットを多用してモンフィス選手を走らせて早く疲れるのを待つ戦術に出ていた。
疲れからしっかり腰を沈めて踏ん張るストロークが出来なくなってしまったモンフィス選手とは
対照的に、ジョコビッチ選手は腰を下ろして、しっかりとスクエアスタンスのストロークを
繰り返して試合の流れをものにした。
疲れた時にもストロークの基本が出来ている選手が勝利するわけである。(2月29日追記)