ー4話ー彼女のイメチェンPart2
2.3ヶ月ほど空けての更新となってしまい本当に申し訳ないです。正直今回のは早く仕上げないとって焦っちゃって数時間もしない内に書き上げちゃったので設定ぐちゃぐちゃです。どうか大目に見て下さい。
さて、部屋に戻ってきた訳ではあるが見事黒髪になった紗季本人は未だに放心状態。別に黒く染めることに関して思うことはないはずなのだが。
「さ、紗季さん…?何かありましたかね…」
何もしてないこっちが悪いような気までしてくる。なんなんだろうこの罪悪感。
「疾斗…」
「は、ハイィッ!」
急に呼ばれたもんだから変な返事しちゃった。彼女に何故こんなに緊張しているんだ僕は。
「私…似合ってないよね…前のままで良かったと思うの…どう思う…?」
「に、似合ってるよ!すごく似合ってるから安心しなよ!」
なるほど気を病んでいた理由はそれだったのか。
確かに一回死んだはずが何故か生き返ってさらになぜか髪まで染めている。常人なら確かに混乱しても仕方ないわけだ。
「でも…」
「大丈夫だって!外に出てもパッと見で分かりにくいレベルには変わってるって!」
「……」
「紗季さぁん…?」
何故かむすっとしてこちらを見ている。ダメだ僕は昔っからそうだ。女心というものが本当に分からない。その結果友達につけられたあだ名は弩級鈍感マシン疾斗。「なんだその戦艦みたいなあだ名は。」と思いながら過ごしていた時期を思い出した。
いや、そんなことは今はどうでもよすぎる。
「紗季…まだ何か僕が出来ることある…?」
紗季は数秒黙って思考し、僕の方を向いた。
「疾斗って私がもしショートヘアーになっても好きでいてくれる?」
「え、そりゃもちろん好きでいるよ?」
紗季は今まで以上に真剣な顔つきでじっと僕の目を見て聞いてきた。何故だか分からないけど聞かれたことだし本音で返した。というか何でこんな質問するんだろう?ショートヘアーになっただけで彼女のことを嫌う男なんているのだろうか。そんな人の気が知れないなぁ。
「あ…そ、そっか…」
「……?」
思ったよりも軽く即答したことで紗季は少し驚いていたようだった。しかしやはりこの質問の意味が分からないなぁと頭の中をグルグルと巡らせていたが紗季の声によって会話へと思考が呼び戻された。
「じゃあさ疾斗、私今からショートヘアーにする」
「……え、今?」
「そう、今」
紗季の顔からは微塵も冗談だという気配が感じられないことから本気であることを察知した。
異論はない。紗季が望むことならば何でも叶えてあげたい。だが問題はある。
「ま、まぁそれはいいんだけどさ、僕髪なんて切ったことないし多分無理だよ?」
「あ……」
紗季もそこまで考えてなかったらしい。紗季が頭がいいことは周知の事実である。但し紗季は目先のことに集中して取り組んで後の事を考えずに突発的な行動に出ることがある。ほんのたまにではあるのだが小さい頃は特にそうだった。昔遊んでいた時も木に引っ掛かった虫取り網を取ろうと登ったことがある。そこまではいいのだ。ただ自分が高いところが苦手だと忘れて登ったので降りれなくなった。なんてエピソードもある。という風に紗季はたまに抜けてるところがある。そこが魅力だということは言うまでもないだろう。しかしこんな抜けている姿を見せるのはどうやら僕の前だけのことらしい。それくらい信用してくれているみたいだから嬉しいのではあるが。
「どうする?美容院行っても多分バレるよ?」
「うーん、困ったわね。私も考えてなかったわ」
うん。分かってた。
「とりあえず髪切る用のハサミ持ってこようか」
「そ、そうね。お願い」
うちの母は何故か美容師の資格を持っている。「こんなの趣味よ趣味」と言っていたが美容師の資格を道楽で取る人は普通いない。そしてその道楽はもちろん家にも多少なりとも影響を及ぼしているわけで美容院にある道具も最低限家には揃っている。(本格的な物も含めて)というか僕の家族の髪を切っているのは母だ。美容院代が浮くのが最大のメリットである。まぁ今は置いておこう。
「確かこの引き出しにしまってあったよなぁ」
独りでブツブツ言いながら目的の物を探す。
「よしっ、とりあえずこんなもんかな」
目的の物を手に階段を上がり部屋へ戻った。
「紗季ー、持ってきたよー」
紗季は声に驚いてサッと手を後ろに回して何事もないように返事をした。
「あ、ありがとう」
「ん、なにか今隠した。何隠したの?」
「な、ナンデモナイヨ」
分かりやすっ。明らかに目が泳いでるしカタコトだし。隠し事も苦手みたいだ。
「怒らないから言ってよ?」
「わ、分かったよ…」
紗季がスッと出したのは…ん?これは…
「僕のスマホッ!なんで!?」
「そ、そのー…」
紗季は髪を弄りながらもじもじしている。
「ゴメンゴメンちょっとびっくりして大声出しちゃったね。怒らないからさ、理由もちゃんと説明して欲しいな」
紗季はチラッと僕の目を見てゆっくりと話し始めた。後に紗季の新たな一面を知ることになることをこの時僕は知らなかった。
「えーとね…その…浮気してないか心配だったの…だからトークアプリとか見ちゃいました…」
「なんだ、そんな事だったのかぁ。なんでそらならそんなにもじも…ハッッ」
ここで僕は1番見られたくない"あれ"を見られたのではないかと感じた。
「さ、紗季が見たのってトークアプリだけだよね……?」
「え、う、うんもちろん!お年頃だから仕方ないもんね!あっ」
あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!見られてたぁぁぁぁ!僕のお気に入りのフォルダがぁぁぁぁ!
頭が空っぽになって放心している僕を見て紗季は「ご、ごめんね…」と何度も頭を下げていたがショックから僕は「ハ、ハハハ、いいんだよ」と言うしかできなかった。
数分後。やっと落ち着いたので再び話し合いを始めた。
「浮気心配なのは分かるけどまず第一になんでパスワード知ってるの?」
「そ、それはぁ…今までの手の動きを見てそこから推測される番号を打っていきました…」
何と言えばいいんだこれ。というかその才能なんだよ!使い所が違うよ!もっと有意義に使ってよ!と頭の中で叫び必死に口に出ないように堪えた。怒らないと約束した以上大声で何か言っては紗季を驚かせてしまうから。あぁ僕ってなんてお人好しなんだろう。
「パスワードの件は分かったよ。次に聞きたいことは僕についてだよ」
「…?疾斗について?」
「そう、僕について。僕が好きなのは紗季でありそれは変わらない。そこで聞くよ、浮気すると思ったの?」
「もちろんしないとは思ったよ。でもやっぱり心配で…」
これが女心というものなのだろうか。というか恋人がいればそういう心持ちになるのだろう。僕だって浮気はして欲しくない。当たり前だ。今回その気持ちが聞けてとても嬉しい。だがスマホを覗くのはやめてほしかった。(もちろん見られたくないものがある。トークアプリなんかじゃあない。男の皆なら分かるよね?)
「大丈夫。紗季の側にいるからさ」
「うん、ありがとう。じゃあ…」
紗季の顔つきがいきなり変わった。例えるならばアニメとかによくある闇っぽい笑顔?みたいな感じ。なんかニヤって感じの。
「これからはGPSのアプリも入れようかっ!そして他の疾斗をたぶらかす女が無いように女の連絡先も消して…」
僕と紗季の間に置いていたスマホを紗季が操作し始めようとしたので慌ててスマホを奪還した。
「ちょっちょちょちょい待てーい!」
「何?どうかしたの?」
おかしい。今までそんな束縛はしなかった。むしろそんな素振りなかったししようともしなかった。というかいきなり様子が変わったしどういうことだ?
「ちょっと一旦落ち着こう!ほら深呼吸」
「何言ってるの?私は常に冷静じゃんか」
僕は必死に頭を回転させて考えた。訳の分からないこと続きですでにパンク寸前の頭で必死に今までの紗季の行動を思い返した。そこで僕は一つの結論にたどり着いた。
最近読んだ漫画に転生ものの漫画がある。死んでしまった主人公と共に生きることを望んだヒロインが共に異世界へ転生するというストーリー。しかし転生先の異世界で主人公は時折変な言動をするようになってしまった。サイコ気味の。本来の主人公は人畜無害な超真面目な高校生だった。おかしいと思ったヒロインは文献でとある文章を見つけた。それは「死んだ者は生き返らない。だがしかし稀に新たな性格を持って異なる世界へと生まれる者が現れる。その者はいずれ英雄になるだろう」という文章である。そう、この文章だ。
紗季には新たな性格として"中々にハードな束縛をしたがる"という厄介な性格が追加されてしまった。と、考えることにした。間違ってないことを願う。ショートヘアーどうこうは2人ともすでに忘れてしまっていた。
ー続ー
次回は2週間以内には更新したいと思ってますので是非楽しみにしてて下さい!




