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Youの審判  作者: 井中冬夜
1/1

1.結婚詐欺師の男①

初投稿です。

初心者で使い方がいまいちよくわかってないので投稿ペースが亀並みに遅いと思います。

あとから文章の付け足しや修正などもすると思いますが、そこはご了承ください。

これからよろしくお願いします。

『次のニュースです。◯◯県□□市の△△川の中から女性の遺体が発見されました。消防によると同日の午前6時頃、近くを歩いていた男性が川に流されている女性を発見し、通報したということです。女性は病院へ運び込まれましたが先程病院で死亡が確認されました。死因は溺死だと判明しており、警察は自殺と殺人の両方で捜査を進めています。女性の身元は不明で警察は女性の身元を調べています…』



「最近こういうの多いなぁ〜…というかあの川…あそこの川だ…」



頭上で流れるニュースを見て呟く。

最近自殺をする人が増えているらしい。

しかも全て女。

巷では自殺ではなく、『斬り裂きジャック』のような殺人鬼によるものではないのかと噂が立つほどだ。

と言っても全く殺人の証拠がないのであくまでも噂なのだが。



(まあ俺には関係ないけどな。)



もし関係があったとしてもどうでもいい事だ。



(それにしても…今回の奴はやっぱり当たりだったな。ほとんど俺に落としていってくれたし…)



俺は街を歩きながら先程数えた札束の数を思い出す。



(本当に世の中馬鹿な奴らばっかりで俺も仕事がしやすいよ。)



俺は結婚詐欺師だ。

偽名を使い、馬鹿な金持ちの女達を甘い言葉で誘惑し、金を搾れるだけ搾り取ってから行方を眩ます。

それを何度も繰り返し生活していた。


いつからこんな風になってしまったのか…

それすらうろ覚えだが…確か中学生の時に俺の母親が働いていた風俗店の女達に「賢く生きる術を教えてあげる♡」とか言って教わったような気がする。

本当の事を言うと、教わるというより無理矢理だったのだが。

その女達曰く、俺は顔がとても整っているらしく、その為このような道に進んだ方が稼げるとか。

そういう事しか知らなかったからそんな事を言っていたのかもしれないけど。

まあ俺の母親は俺の事なんて全く気にしてなかったからそんな事を教わっていたのも知らないだろう。


俺が言うのも何だが…俺の父と母は二人ともどうしようもないくらいのクズだった。

俺は未だにあれが自分の親だと認識するのも嫌なくらいだ。


父はとても有名な俳優だったらしいが、俺が産まれてからすぐに別の女の元へ行き、俺と母を捨てた。

母は父に捨てられた事でヤケになって薬に溺れ、薬によって生まれた多額の借金を風俗店で働きながら返していた。

そして薬の所為で幻覚を見るようになってからは俺に暴力を振るうようになった。

それは俺が高校生になって家を出るまで続いた。


それからは母がどこでどうしているのか全く知らない。

父の事も俳優だという事以外は母から何も聞かされていない為、全くわからない状態だ。

母はもしかしたらまだあの家に住んでいるかもしれないが俺は一度も家に帰った事はなかった。


似たくはなかったが…父親にそっくりだと言われる自分の容姿には自信があった。家を出てからは様々な女達の家に行き、女達の欲望を満たす対価として金を受け取り、たまにホテルなどで寝泊まりする生活をしていた。

しかし途中で結婚詐欺師という天職を見つけ、何人もの女達を騙して今に至る。


さっきも女から大金を受け取ったところだった。

そして今はどこに逃げるか検討しながら歩いている。

いつもなら次のターゲットを決めてから行方を眩ますのだが…

まあ今回は相手が結構な大物だったからしばらく身を潜めた方がいいだろう。

それぐらい今回の相手は厄介だった。

何せ金を巻き上げるのに1年もかかってしまったのだ。

こんなに長期に渡っての仕事は初めてだったかもしれない。

その分、得た金は相当な額だった。

これで当分の生活には困らない。



(でももうこんなんじゃ…あいつに会わす顔がないな…。)



俺の幼馴染みで初恋の相手。

母親からの暴力に耐えられたのは彼女の存在が大きかった。

彼女の為に生きようと心に誓うほどだった。

しかし彼女はもうこの世にはいない。

居眠り運転のトラックによる交通事故の所為でこの世を去ったのだ。

彼女の人生はとても短いものだった。

たったの10年しか生きられなかった。


もう朧げになってしまった彼女の笑顔を思い出しながら少しだけ笑う。

こんな今の俺を見たら彼女はきっと軽蔑するだろう。


彼女を失うと同時に生きる理由も失った俺の心は、既に死んでしまっていたのかもしれない。

大勢の綺麗な女達に言い寄られたり、巨額の大金を手にしても、俺の心が満たされる事は決してなかった。


だから最近はもうそろそろ死んでしまおうかと考えるようになった。

いま手にした大金を使っても虚しくなるだけだ。

それ以前につまらないのだ。

流石に何度も同じような事ばかりの繰り返しで飽きてしまった。



(それにあいつが居る場所で死ぬのも悪くないな…。)



そうしよう。

思ったら即行動だ。

どうせ逃げるのだ。

最後の大仕事だったと思えば丁度良い。



(なら逆方向に行かないといけないな。新幹線に乗っていくか…。)



そして俺は来た道をまた戻るように駅へと歩き出そうとした。

その時だった。



「…………見つけた。」



突然、後ろから誰かの声がした。



(何だ…?)



どすっ



振り返ろうとしたその瞬間、鈍い音と共に背中に痛みが走る。



「……はっ?」



思わずそんな声が出た。

それもそのはずだ。

俺の足元にはぽたぽたと真っ赤な血が滴り落ちていたのだから。

あまりにも突然すぎて俺はそれを見ても何が何だかわからなかった。



「あなたが悪いのよ…?」



背後から女の声が聞こえる。

痛む背中がだんだん熱を持っていく。



「ごふっ……!!」



体の奥から大量の血が流れ出てきてそのままそれを口から吐きだす。

すると周りから悲鳴が上がる。



「きゃあーーー!!!!」

「ひ、人が刺されたぞ!!」

「誰か警察と救急車を呼べっ!!」



そんな人々の声を聞いて俺はようやく理解した。



(俺は…刺されたのか…)



そう思った瞬間、先程よりも痛みが強くなって崩れるようにその場に倒れた。



「あなたが私を捨てるから…だから…」



ブツブツと何かを呟く女。

見知らぬ誰かの悲鳴。

そして胸の動悸と荒くなった息遣いが耳に響いた。

背中の激痛に思わず目を瞑る。



(あぁ…俺は、死ぬのか…)



死を望んではいたが、こうもあっさり…しかもこんな唐突に来るとは思わなかった。



(俺の人生は本当につまらなかったなぁ…)



耳元で誰かが叫んで、俺の意識があるか確認していたが、俺はそれが聞こえていないかのようにぼんやりと自分の人生について考えていた。

すると忘れていたはずの過去の記憶が蘇る。

これが走馬灯というやつだろうか。



【約束だよ!】



にっこりと可憐に笑う幼い少女。

俺の一番大切で楽しかった記憶。

彼女と何の約束をしたのかは思い出せない。

でも随分前に忘れてしまったはずの彼女の顔を思い出せた。

それだけでも今の俺には充分だった。


あれほど背中が痛かったのにだんだんと痛みがなくなってきた。

痛覚が麻痺し始めたのだろうか。

それに意識も遠のいてきた。

もしこれで本当に死んでしまうのなら、最期は彼女の名前を呼んで死にたい。

そう思って俺は最後の力を振り絞った。



「し……ぉ……。」



しかし最後まで彼女の名前が呼べないまま、

俺は意識を手放した。





















ーーーー嗚呼…また一人堕ちてきたか



意識がなくなる直前、そんな声が聞こえた気がした。

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