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ソノセカイコハクイロ。  作者: 火薬
4/4

二度目の街は散歩道。



この世界に降り立つのは二度目になる。

自室のPCをゲートにして、その世界へと飛び込むのと

そこからグラデーションのように意識が切り替わっていく。


《認証》《認証》《認証》

 

列車の揺れが収まるとまたあの駅にワタシはたどり着いていた。


流石に二度目だし、あんなに走り回ったのだから文字通り朝飯前だと思いきや

「おっとと・・・」とソラの足はふらつく。

「おっと、大丈夫ですか?」

「あ、すみません。ありがとうございます。助かりました。」

転びそうになっているところを背の高い、絵に描いたような美青年に支えられた。

黒い軍服姿のその顔立ちと窓ガラスに映る自分の姿を比べると

ゲームキャラってあそこまで作りこめるものなのかっと思ってしまう。

「いえいえ、こちらこそ。」

「?」

こちらこそ・・・?

「もっとはやく助けられればよかった。っという意味ですよ。さぁ、今日も楽しい世界が貴方を待っています。」

言っている意味が飲み込めないまま彼はそう駅の扉へとワタシを促す。

頭を下げてそそくさと扉へ向かっていく。

ネットの世界なんだからリアルでのコミュ症っぷりは発揮されないだろうとか、思っていなかったわけでもないのだけど、こんなひけ腰を晒してしまう自分が少し格好悪いと思ってしまった。

そそくさ、という表現をしておいてなんだけど、慌ててしまい壁とかに激突しながらフラフラと出て行く。

実にみっともない光景だ。



「うおぉぉおおお!っどぉおおん!!」

「うわあああああ!!」

広場へ降りてきたあたりで先日と同じに何かに体当たりされた。

いや、「どぉおおん!!」って言ってしまってるのでわざとぶつかってきてるんだろう。

しかし、その人はゴミ先生とは違いワタシの身体と同じくらいの体格であり全く躊躇せず突っ込んできたわけで、

そして、その次に投げかけられた「うぉお!なんてことだ!大丈夫かい!?」というセリフは

先日の先生とはタイプは違えど手口は全く同じようなものだった。

まさしくデジャヴだ。

「大丈夫です。」

そんなセリフを吐くワタシは派手にひっくり返って植木軍に突き刺さっているという有様だ。


「あちゃぁ、うちのナツタロウが迷惑をかけてごめんなさいね。可愛い子を見るとすぐじゃれちゃうの。」

「あぁ、いえ大丈夫です。それより早く起こしてください。」

植木の中に身体が半分突き刺さった状態でジタバタする。もうなんだか絵的には自分自身が植わってしまっているような状態だ。


「ピンフ、それじゃぁワタシが犬か何かみたじゃん!訂正しろ!!」

「でも犬は可愛いじゃない?不満?」

「そうだな。犬は可愛いな!よし許そう!」とワタシは植木と化したまま聞いていた。(まだ埋まってたのかよ!)

ふぅ、っと手を貸してもらいながら起き上がる。今日は冒頭から誰かに助けてもらってばかりだなワタシは・・・。


今日は・・・というもののそれは今日だけじゃないし、もちろんリアルではもちろん、このゲームでも

つい昨日助けてもらったばかりなのだ。

ゴミ先生と初心者クエに出掛けたはいいけど、クエストの途中でなんだかわけの分からないところに出てしまい、街の中のはずなのに巨大な狼のモンスターに出くわしたのだ。

いや、ひょっとしてあんなの出てくるのが当たり前なのかもしれないから「謎の」とは表現しようなんて思っては居ないけど。

あの時は気が動転していたものだった。

ワタシは初心者装備の小振りのダガーを握り締めて勇猛果敢にも狼に飛び掛った。

「よう!」

狼の爪が、牙がワタシの正面へ迫ってくるところ、その間を裂くようにして細長い刃が

まるで隕石の如く振り下ろされた。

かと思いきや更にその狼の巨体を天高く彼女は打ち上げた。

その破天荒な剣さばき、あるいは存在感、強さに先生と一緒になってキョトンとしてしまっていた。

「遊びに来たぜ・・・。」

琥珀色に輝く瞳に赤黒い髪の彼女は不敵に笑っていた。

夕日が逆光になって殆ど分からなかったけど、そう多分彼女は笑っていたんだと思う。

そのあとワタシは安心してしまったのか電池が切れたみたいに意識が飛んでしまったわけだ。



「アンタ、初心者?」

「はい、昨日はじめたばかりです。」

犬耳の生えた金髪の獣人族といった少女が胸を張っていた。ワタシが初心者だという事を教えると

さも嬉しそうに

「実はワタシもピンフもなんだよ。奇遇だよなぁ」と言う。

ピンフさんという方はワタシを植木から助けてくれたこの背の高いお姉さんであるらしい。

しかし見た目はどこに眼をやればいいのか、露出の多い軽装をしている。

黒くて長い髪は地面につきそうな勢いで艶やかだ。

「ピンフです。よろしくね。」凄く大人というような見た目だけど距離感の近さに驚きと安心が漏れる。

「ワタシは・・・」

「ソラちゃんでしょ?」言うが早いかピンフさんは言い当てる。

ワタシとナツタロウさんと一緒に「え?」と驚く。

「待ってたんだよ。ほら、ワタシだよ。」ピンフさんはクスクス笑う。

なんでわかったのかは分からない。(多分、彼女にしかわからないんだろう)



夏美あらためナツタロウ、千尋さんあらためピンフさんとPTパーティを組んで

街の中を散策する。

PTを組むのにもワタシもナツタロウもしどろもどろだった。

ピンフさんにご指導を仰ぎながらゆっくり組んだ。

昨日は先生と散策しててゆっくり見て回れなかったので、こうして知ってる友達とゲームをしてると

思うとまた違って見えるものだった。

なんだっけ、色即是空っていうんだっけ?

市場みたいなところとか川が流れているところとか・・・。


「お?おい、お前。」

南地区へ降りてくると工業団地というようなところへ出た。

海沿いである工業団地には武器の強化だったりとで、上級者向けのクエストを扱っているNPCが多いエリアなのだとか。

そこで三人、路地を曲がってきたところで彼はウィーンウィーンと機械音を鳴らしながら近づいてきた。

「うわぁ、ロボット!!すげぇぇ!どうなってんだぁ」

「うるせぇ!!」ナツタロウが大はしゃぎして蒸気機関自動清掃機5号である、つまりゴミ先生に飛び掛っているところ、一喝される。

怒鳴るけど、雰囲気は違えどやる事は殆ど一緒なんですけどね。

先生もナツタロウも。


「あれ?」っと気付く。

「先生、身体は大丈夫なんですか?身体の破損は?」

見ると先日、狼に食い千切られた身体半分が何事も無かったかのように修復されていた。

「ばぁか、お前これゲームだぜ?モンスターに食い千切られたからって一日ありゃ勝手に修繕されんだよ。お前らだって怪我したからってすぐ治るだろ?」

それと同じだよ。とあっけらかんと言われる。

というかいう事がメタなんだよなぁ



「そんな事、ワタシは無かったけどなぁ・・・。バグ・・・じゃないかな」

千尋さん・・・じゃなく、ピンフさんはそう呟く。

先日あった事を二人にも話してみると訝しげな表情を浮べたものだった。

あのナツタロウでさえだ。

「そもそも、街中にモンスターが出るようなクエストなんて今のところは無ェからな。一応は運営に報告はしてあるけど用心してもらうしかねぇ。」

直接報告までしてしまうなんて、どういうNPCなんだ。

そして先生は切り出した。


「ところで、お前ら職業クエストはまだだろ?」

まるで晩御飯の有無を尋ねられるような気軽さで聞かれた。



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