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説明会開始ですよー

 死に戻りのペナルティは本来ならばもう少し長いはずだが、レベルの低い内は割と早く復帰出来る様、親切な設計となっている。

 その為、僅かな待機時間で俺も復活できたのだが、その間の暇つぶしの会話で判明した事がある。


 俺に声を掛けてくれた、ナツ、ロー、マーシーの三人だが……リアル後輩だった。とはいっても、俺とは5学年差で直接的な面識はない。だが、こっそりとナツが教えてくれたのだ。兄の同級生のレオ先輩ですよね、と。

 ナツは俺の高校時代の同級生の妹だったらしい。しかも、名前を聞いてみれば今でも繋がりのあるかなり仲のいい友人だ。そして、その兄と共に写っている画像があって、それで知っていたらしいのだ。

 俺、マジで外見は髪と瞳の色を変えた程度で、あとは全部リアル準拠で作っちゃったからね……。


 世間は狭い。 


 「VR機を手配してくれてありがとうございました」

 「いやー……なんというか、マジで世間は狭いなぁ」


 そして、彼女らが使っているVR機は俺が友人に横流しした物でした。曰く、高校入学祝だったそうだ。

 尚、本人は実はパティシエ志望なんだが、今年から海外に修行しに行っている。連絡が無い所を見ると、こき使われてそれどころでは無いようだが。

 おかしいと思ったよ。俺も海外修行に行く事は聞いていたから、なんで4台もVR機を頼まれるんだろうと……。

 

 尚、開発スタッフは全員ある程度、最大10台ぐらいまで融通が利く。中には、全然知り合いじゃないけど、日本の首相官邸とアメリカのホワイトハウスに送りつけてやった猛者もいるから大したものだ。


 ……アメリカ大統領とかいねぇよな?周囲に。


 流石に暇つぶしとはいっても、ゲーム内でリアルの話を続けるのはマナー違反なので、そこそこに切り上げ、立ち上がった。相変わらずだが、俺の周りには野次馬が未だに溢れている。


 「おーい!そこでずっと見ている魔法を使えないしょぼくれた野郎共!そろそろ教えてやっから、ちょっと集まれー」

 「「「わぁい!」」」


 ナツ達が飛び込んだ辺りから経緯を知っていたであろう奴らは嬉々として集まって来やがった。それにつられてぞろぞろと……多いな、オイ。今、植え込みや噴水から飛び出てきた奴とかいたぞ。


 「おい、押すな!」

 「詰めろよ!」


 喧嘩始めてるし……どれだけ切実やねん、自分ら。

 しゃーないと、ため息をひとつついて、パンパンと手を打って注目を集める。


 「いいかー?始めるぞー」


 言って俺は両手に焔を纏う。俺の選んだ属性は焔。まあ、定番っちゃ定番だ。


 「まず、この世界だが、すべての人間が魔力を有しているという前提で作られている。それは皆知っているな?だけど、全員が巧く使える訳じゃない、それもみんなわかるな?」

 「わからないと思うんだけど……」

 「わかるだろ?言っちゃ悪いけど、皆リアルだとある程度の計算できるよな?」


 うん、と周りの人間が頷く。まあ、頷かなかったら困るんだよ。色んな意味で。


 「皆計算できる。けど、じゃあなんで皆テストの点数が違うんだ?出来る奴はロケットの軌道計算が問題に入っていても、満点取るだろうし、出来ない奴は九九を間違えるだろ?全員が魔法を使えるって言うのは、それと同じ状態の事だ」

 「つまり、個人差があるって事?」

 「そういう事だ、ナツ」

 

 フッと手の焔を消して、今度は指の先に灯す。


 「全員が使える可能性がある、って言った方が確実かもな。つまり、自在に使うにはある程度の鍛錬が必要になってくる。簡単な物ならばすぐ使えるだろうけど、ただ呪文を唱えればいいってもんじゃ無い」

 「じゃあ、魔法職は無駄って事ですか?」


 ギャラリーの中の魔法職っぽい装備の人が声を上げた。それに同意するように周りも少しざわめき始める。

 

 「ただ呪文を唱えているだけならば無駄かもな。けど、ちょっと結論を出すのは待ってくれよな。今から肝心な所を説明してやるから」

 「それがさっき言っていた魔導伝導率?」

 「そう。ちょっとメタな話で悪いけど、数値化はされていないステータスがある。それは、言ってしまえば『魔力がこれだけ通りますよ』『どれだけ通しやすいですよ』って数値だ。この数値が高い程、魔法を発現しやすく、かつ同じ魔法であっても速度、威力が上がりやすい。魔法職というのはこの数値が近接職と比べ物にならない程に高い。だから、初期状態でも、スペルさえ唱えれば発現する事が出来る」


 指の先に灯していた焔が段々と大きくなり、そして再び右手を煌々と燃やし始めた。先ほどの焔よりも強く、紅く。だが、放そうとした瞬間、それは一瞬で掻き消えた。


 「だが、近接職はこの数値が低い。だから、スペルを取っても発動しない、あるいはしょっぱい威力の物しか使えない。でもまあ、ジョブによってはバフ、デバフぐらいは使えるかな?だから、魔法を使いたいならばこの数値を伸ばす必要がある」

 「どうやってそれを伸ばすんですか?」

 「いい質問だ、ロー。方法は2つある。一つはスキル。まあ、当たり前だけど、魔法系のスキルを取れば魔法と身体の親和性は高くなるな。個人的にオススメは『魔法制御』かな。魔法職なら必須だし、近接職でもそれぐらいは持って置いた方がいいかもしれない」


 言った途端に、何人かがスキルを弄り始めた。多分、初期設定時に余力を残していたんだろう。ナツ、ロー、マーシーの最初の3人も余力組だったらしい。これで最低限はクリアしたようだ。

 尚、俺のスキル『魔法極縮』は制御系の極致です。前衛職ですが、俺が当たり前のように使えるのはこのスキルの恩恵が強いと思う。


 「二つ目は訓練だな。これもまた当たり前のことだが使えば使うほど身体が慣れてきて、魔法を使うのが苦では無くなる。最低でも属性の発現が出来たら、街の訓練所なんかで丁寧に教えてもらった方が良いと思う。それに当然、魔法職の住人に弟子入りする、というイベントも用意してある。それを狙ってどんどん訓練していった方がいいな。あるいは実戦でぶちかましてもいい」


 えー、といった顔をしている奴が多いな。まあ、ゲーマーならばそうかもな。

 逆に「よっしゃ」という顔をしている奴は廃人の素質ありだ。どちらかというとやり込み系の要素だろうしな。


 「つまり、極めれば、『今のはメラ●ーマではない。メ●だ』って状態も夢じゃないって事か」

 「まあ、極端な例だけどな。もちろん、自らの代名詞にもなるような必殺技を目指すのも浪漫だよな」


 新撰組三番隊組長が突きを昇華させた牙●とかね。リアルならなんだろう……スタ●ハンセンのラリアットか。単純だけど――ワンパターンだけど、必殺!これが浪漫だ。


 「あと、武器とかもそうだな。生産職やりたい奴も気を付けろよ。当然の事ながら、魔力を通しにくい素材も通しやすい素材もあるからな!どう組み合わせて、最良の武器、防具が出来るかを考えるんだぞ」

 「って事は最初はやっぱ、どこかに弟子入りした方が良い?」

 「ぶっちゃけ、システム的には弟子入りしなくても鍛治は出来る。けど、そういう素材のノウハウを含めてガチで極めたければ、自分で試行錯誤し続けるか、弟子入りして習うか、だ。まあ、どちらにしても結構難易度は高い。魔法関連が関わる鍛治はワンランク上だと思っておいた方が良い」


 ふぅ……これで一通り説明は終わったかな?

 新たな質問も無さそうだが……諸君。これが魔法の使える世界だ。


 「説明は以上だ。では、魔法の世界での良い冒険を過ごしてくれ」


 ところでだが、説明の最中に、この広場に溢れんばかりの人が来ているんだ。まあ、それ自体は構わないし、むしろ色んな所に拡散して欲しい類の話だと思う。


 だがな。あえて言わせてもらおう――こんなにいるんならば特別手当を出せよ、と。

本当に説明だけで終わった……冒険しようぜ!

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