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レオナルドさんピンチです

は、初投稿です……(震え声

多少の不備は笑ってバシバシコメントして、ブクマして評価頂ければ幸いです。

 「だぁあああああああああっ!いきなりなんだこの野郎!」


 平和だったのは一瞬だった。私、秋山怜央ことレオナルド・ダ・ピンチは開始とほぼ同時に全速力で駆け抜けながら絶叫をだだ漏らす。大通りから即座に薄暗い路地へ。背後を見れば、剣や槍を持った危ない人たちがこれでもかと追ってくる。時折放たれる火の玉などは簡単に避けられるけれど、内心はそれどころではない。全プレーヤーが敵と言っても過言ではないのだ。

 それでも走り抜ける速度は尋常なものではない。幸いな事にこれはゲーム。身体能力については多少の恩恵があるのだ。


 「まてー!魔王!」

 「まだ魔王じゃねーよ!」


 罵りのような声に応えて怒鳴り散らす。確かに俺はこのVRゲーム、『ロワ マージュ』の運営が用意したパブリックエネミーだ。通常のプレイヤーじゃなくて、中身がいる敵役だ。


 だがな、言わせてもらおう。俺もレベル1からなんだと。今初めてログインしたばかりだよ。多少のステータスやスキルの恩恵はあっても、今のお前らでも戦い方次第ではタイマンで余裕なんだと。大体、俺だってβテストとチュートリアルしかやってねーっつーの。

 それなのになんだ。ログインして、飛ばされたのがプレイヤーたちと同じ始まりの町の広場で、しかも同時に全員宛のメッセージで『コイツが魔王(予定)♡』とご丁寧に顔写真付きで送られて……そして始まるは緊急クエスト『魔王(仮)に挨拶(狩)をしよう』。運営側の人間としてこのゲームのシナリオにかなり携わっていた俺すら初耳。正直してやられたと思ったね。

 そして、あの報せが流された直後のジロッと全員が俺の顔を注目する眼。しばらくトラウマになりそうだ……。


 ――成長する敵役っていいよね。だから、このシステムは画期的だと思うよ。


 涙を置いてきぼりにして駆け抜けている最中、ふとそんな声が脳裏によみがえった。俺を『中の人』として抜擢したクソッタレGMの言葉だ。身内でも何でもねぇのにシレッとウチの食卓に混じって来やがるあの野郎の今日のメシは奴の苦手な人参フルコースにしてやる。


 「チッ、回り込まれてやがる……GM!テメー、いつか覚えていろよ!」


 どうあっても逃げ切る事は不可能。ならば腹をくくるのみ。駆け抜けた路地の先が既に回り込まれていると悟った俺は勢いを殺さず目の前を封鎖するプレイヤーの顔面に飛び蹴りを見舞う。めり込む足。舞う血飛沫。身体能力があげられているからか、やけにゆっくりとその光景が流れている気がした。

 

 「コイツ……ッ!」

 「俺様がただ単に逃げ込んでいたと思うなよ!」


 嘘だけど。

 着地と同時に俺は手と足に魔法で作り上げた火を纏わせ、そのまま一気にその場に居たプレイヤーたちの攻撃を掻い潜りながら的確にヒットポイントを削りきる。

 たまたまだけど、ここは狭い路地だ。数が少ない方が動きやすいに決まっている。2人、3人、4人。『魔法極縮』というスキルを使い、範囲を犠牲にした代わりに極度に凝縮した魔法はやはり俺と相性が良い。補正があるとはいえ、チマチマと外から削るなんて器用な真似が俺に出来るとは思わない。


 諸々を捨てた至近距離の高火力は男の浪漫。

 手の届く距離での殲滅こそ喧嘩師の華。今はまだリアルスキル頼みだけど……。


 「やあやあ、はじめまして、プレイヤー共。路地裏ここが俺様のホームグランドだ。まあ精々末永く楽しもうぜ」


 追いついてきた先頭の奴の剣を掻い潜り、ベアナックル一閃。さて、どれぐらい削れたかな?なんて気にしている暇は無い。魔法の火を纏った手で飛んできた見当違いの氷の矢をパリングでたたき落としてもう一歩。地面が爆裂するほど踏み込んで真っ直ぐ。ぶっ飛んだ剣士の身体が後ろから迫ってくる他の奴らを巻き込んでいい感じだ。ボウリングでストライクを取った時の快感に似ている。ピン沢山残ってるけどな。


 ……問題は。


 「……時間が足りねぇな」


 背後から再び迫って来ていた新手をフックで壁にめり込ませ、更に回し蹴りで人の型を取りつつ、横目で自分だけで見えるデータを見ると、MPのゲージがガンガンと減っていた。正直言うと、燃費は初歩魔法を連発するよりもお得なのだが、このペースじゃ俺が押し負ける。初期ステータスのMPなんてそんなものだ。


 あとどれぐらい?もう一杯。そりゃまだ数人しかヤってねぇからな。行列のできる魔王と笑い飛ばしてやろうか。

 あとどれぐらい?あと9割。使用時間はまだ1分にも満たないのに。


 やっぱ広範囲の魔法も使えるようにすればよかったかな?なんて後悔ごと新手を吹き飛ばす。すれ違いざまに浅く頬を斬られた感触があるけれど、所詮はかすり傷だ。

 なんだ、やけに奴らの攻撃がしょっぱいな。動きもとろい。補正は入ってるはずなんだが……それに数値上じゃ俺とあまり変わらん。運営だからとチートはしていない。俺発案の産廃扱いされていたスキルを引きとっただけだ。こんなに素敵なスキルなのに……ちくせう。


 ……まあ、剣にしろ、喧嘩にしろ、射撃にしろ、魔法にしろ、リアルスキル持ちなんてそういるもんじゃねぇわな。今ならば無駄に喧嘩の場数踏んでる俺の方が有利か。


 結論。


 「一撃で100人粉砕も、タイマンの100人抜きもキルマークは同じだろ!」


 いちいち待っていたらタイムアップだ。転ばせる度につっかえてまごまごされては溜まったもんじゃない。転んでいたら踏みつぶす。つっかえているならば押し戻す。物事シンプルが一番だ。

 道連れを求めて魔法が解けるまでの武闘会……シンデレラの気分だ。男だけどな、俺。


 「死に戻りしたい奴からかかってこい!」


 殴っては踏みつけ、蹴り飛ばしては傷付いて、どんどんと構わず俺は前へ前へと進んでいった。


 ……その後?

 もちろん魔法が切れた頃に数の暴力に負けてボコボコにされましたよ。ちくせう。


不定期連載ですが、どうぞ宜しくお願い致します。

あと……いっしょにポテトとかもいかがですか?↓

http://ncode.syosetu.com/n2536cm/

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