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森の仲間たち

森の仲間 きつね坊と懐かしさ

作者: くものみね


草原を撫でる湿った空気。きらきらと煌めくまあるい太陽。時折響く、虫の声。初夏の候。



動物の住む森の奥。


少し拓けた草原の真ん中、新緑をこさえた大木の上で、もふもふの手を空にかざす毛玉が一匹。

細い糸目をより一層細めて、眩しそうに太陽に手をやるきつね坊。



今日は懐かしい匂いがしたから此処へ来た。新緑と湿った土の匂い。

それに、懐かしい音が聞こえたから。きらきら太陽が煌めく音。森のみんなに聞いても、みんなは聞こえないって言うけれど……。ふーん、おいらには聞こえるもんね。

あと、懐かしい空が見えたから。大きくて、青い青い、吸い込まれそうな青空。


つっきーとの約束をさぼって此処に来てるから、きっと今頃怒りながらおいらを探してる。まあ、たまにはいーや。



ぶんぶん。ぶんぶん。

機嫌良さげに揺れる白い尻尾。



懐かしいは美しいって、ふくろう兄さんが言ってた。


懐かしいは悲しいって、カフェのマスターが言ってた。


懐かしいこの風景を見ると胸がぎゅっとするのも、そういうことなんだろうな。美しくって、悲しくて、綺麗で寂しい。


季節が巡ればまた見られるこの景色も、去年と同じじゃないから、美しくても、寂しい。そしてとびきり綺麗。



ふふ、ときつね坊が微笑む。糸目の目尻が垂れる。


またあとでつっきーを此処に連れてこよう。もしかしたら機嫌直してくれるかもしれないし。




ふんふーん、ふんふん♪



大木の上から聞こえる、少し調子外れの鼻唄。





みんなの美しいは、なに?


みんなの懐かしいは、なに?



どうかそれが近くにありますように。


手の届く距離にありますように。




じゃあ、おいら、つっきーを迎えにいってくる。またね。




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