第一話 「いつもどおり」
主要登場人物
坂本 羽衣
(さかもと うい)
城永 奏人
(しろなが かなと)
夜月 梨砂
(よづき りさ)
相模 陸
(さがみ りく)
「ねぇ、あのケーキ屋さん行かない?」
元気に話しかけて来るのは
高校に入ってから仲良くなった羽衣。
「行かない。俺、ケーキとか興味ないし」
「えぇー、ついてきてよー」
「やだ」
俺がそう言うと、拗ねたような顔で
「分かった、一人で行く」
と言った。
「陸は?あいつ意外と甘いもん好きだろ」
「『バスケの試合あるから無理だ』って…」
「バスケバカだもんな、あいつ」
「うん………」
悲しそうにうつむく羽衣。
「仕方無ぇな。
一緒に行ってやるよ。特別な?」
「いいの!?」
さっきとは一転して、目が輝いている
「一緒に行ってほしいんだろ?なら行くよ」
「ありがとう!やったー!!」
なんだか足取りも軽くなっている。
よっぽど嬉しいんだろうか。
「その代わり、なんか買ってくれよ?」
「女子に奢らせるのー!?」
「嘘、なんか買ってやるよ」
「おー、奏人、男前!なんてね♪」
なんて他愛もない会話。
それでも俺にとっては大事なもの。
唯一、わかりあえる存在だから。
唯一、同じ“世界”にいる人だから。
この物語はフィクションです。