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枯らし魔×一匹狼×塩飴  作者: 沽雨ぴえろ
2/2

見た目詐欺野郎






「萩原、コレ写メ」


「はいな」


「コレも写メな」


「ほいほい」


「萩原!コレ写メ!」


「へい!……ってちょっと待てや」



私なんで呑気に湯崎とホームセンター来て肥料なんか見てんの?くっさいんですけど!てか、え?なんで写メ?なんで写メ?

湯崎をみれば怪訝そうな顔してこちらを見る。

……………おい待てこらぁ。てめーその顔はなんだ?!



「なんだよ?」


「私なんであんたと肥料見に来てんの?!」



するとどうだ、この男。はぁ、と深くため息をつき、何を言ってるんだコイツは的な目線を私に投げかけてきやがった。

おーい、湯崎くんよぉ、それどーいうこっちゃ?



「お前が花壇水浸しにしたからだろうが」



なるほど☆

納得してしまった。私は引きつった顔をそらして、目線を再び手元に下げた。

手元にはスマホ、目の前には湯崎が突き付けた肥料の重い袋。

………………スマホ?あれ、写メはなんで?

周りにクエスチョンマークが飛び散る中、私はほぼ条件反射でその肥料を写メっていた。



「湯崎」


「今度は何」


「なんで写メ撮ってんの?」


「買いたいけど今日買えない肥料を忘れないため。ここよく品替えするんだよ」


「あーなるほどー……」



いやそれも待て待て待て。どういうことだ。なぜ私に写メを撮らせる、自分で撮りやがれ。

私はまたもや条件反射に突き出された肥料を写メりながらそんな事を思った。



「…ってことは、私は写メ撮るためにここに居んの?」


「あ?お前は荷物持ちに決まってんだろうが。…おっ!あれだよあれあれ!!」



私が思わず首を傾げながら呟くと、湯崎は思わず顔が引き攣る返事を言い残し、数メートル先に駆け寄った。

私は顔を引き攣らせたまま湯崎に視線を送った後、近寄る前に近くにあった肥料を抱えてみようとした。

くっそ重かった。

私はほろりと幻の涙を零しつつ、歩きながら湯崎に近づいた。

苦笑のさらに上の苦笑をするのは許して欲しい。仕方ない。



「この腐葉土がいいんだよなぁ…」


「……………」


「おっこっちは鶏糞か!」



私は無言で携帯を弄りながら、湯崎に恨めし気な目線を送り、そして気付いた。

湯崎は腐葉土?ってゆう肥料を抱えつつ、隣に置いてあったケイフン?って言う肥料に目を輝かせていた。

……なぁんか、噂で聞く『湯崎紫毅』とは、違うんだよなぁ…。花壇の時も思っていたけれど、まぁ確かに 顔は怒ってたから怖かったけど、なんか、その後とかを見ると全然普通な男子高校生だよねぇ。園芸が好きな、と付くけど。あれ、普通じゃないか。

まあとにかく。噂で聞く不良じゃねぇなぁ。



「鶏糞……んー、買うか迷うな…」



だってほら、肥料でこんだけ迷ってるし。絶対聞いてきた噂嘘だわ。ほんとにコイツ見た目詐欺野郎だわ。

噂の『湯崎紫毅』はもっと、こう、危ないヤツだったんだけど…。どこかの暴走族の助っ人とか、上級生と喧嘩して勝ったとか、女癖悪いとか。

噂と全く違うことに一人頷いていると、隣から視線を感じた。

視線を向けると、予想どうりこちらを向く湯崎がいた。



「なんだね見た目詐欺少年よ」


「おい待て、どうゆう意味だ」


「まんまですけど」


「いやわかんねぇよ!」


「まぁまぁ。で、なによ?それ写メんの?」


「あ?あ、いや、萩原金貸してくんね?」


「金ぇ?なんでよ。…もしかしてその、ケイフン?買いたいから?」



湯崎にそう尋ねると、当たり前だろ、みたいな顔で頷かれた。

当たり前なのか。

私はちょっと待って、と言い、背負っていたリュックの中を漁り財布を発掘する。



「お金お金お金ちゃーんっと……んー、二千円、は、ある」


「貸してくれんのか?」


「ちゃんと返すだろうね…」


「お前俺をなんだた思ってんだよ……返すって…」



湯崎のその言葉をしっかり五回確認した私はお金を貸すことを了承した。

その後私は湯崎に連れてレジまで行き、お金を貸した。

湯崎が二つの袋を抱えながら一歩前を歩く。



「湯崎ー」


「あんだよ」


「この写メどうすんの?……まさかだけど、メモってこいとか、毎日見せろ、とかじゃないよね…?」



私は聞こうと思っていたことを思い出し、湯崎に尋ねた。変な顔している自信がある。

写メは十枚以上ある。どうすんだこれ。

湯崎は肩越しにちらりとこちらを見ると、眉を寄せて何かを考える仕草をした。



「…………」


「…………」


「…………」


「…………なんだよ!」



無言か?お?お?受けてたってやるぜ!とばかりにこちらも無言で対応したのだが、くっ、負けたぜ………!

さっさと言え、そんなオーラを滲ませてみる。

……………………………出てるかな…?

それでも続く無言に不安になった。ちーん。



「お前、」


「なんだよ」


「俺のラインに送っとけ」



いや知らねぇよ。

たっぷり溜めときながらそりゃないんじゃないの。真顔で思った。知らねぇ。

それを察したのかどうなのか。湯崎は道の端に寄って肥料を下ろし、スマホを弄り始めた。

少しして湯崎のスマホが突き出されて、きょとんとしてしまう。



「俺のQRコード」


「…あ、え、マジで?」


「写メ送れねぇだろうが」



散っ々悩んでいたのってそれのことなの?ねぇ、ラインのことなの?イイじゃん悩まなくて、なんなのこの子!!

私は呆れ返りながらもカメラを切り替え、湯崎のQRコードを認証しようとした。が。



「…………いや、スマホ動かさないでくれない?」



コイツふらっふらして読み取らせないんだけど!!これなによ、新手のいじめ?なんなの読み取らせる気ないの?!



「動かしてねぇ」


「………動かしてるってばさね!!!固まれよお前!!!」



奇妙な言葉遣いになったじゃんか!!ざっけんな湯崎この野郎!!

私は口元を引くつかせながら湯崎の腕を掴み、固定させる。

暫くして画面に読み取りましたの文字。

ぱっと手を離して追加する。



「追加っと。…うし、ちょっと湯崎、あんた自分から言っといてブロックとかやめてよね」


「しねぇよ、だからお前は俺をなんだと思ってんだ」


「見た目詐欺野郎」


「お前ぇ………」


「私は間違った事言ってねえ!」



再び肥料二つ持ち、歩き出す。

隣でブツブツと文句を言う湯崎を鼻で笑いながら学校への道を辿る。



「大体、俺のどこが見た目詐欺野郎なんだよ?」


「えっごめんそれ本気で言ってんの?」



自分で「俺不良だし、一匹狼だし」と言っているに等しい発言に目を見張ってしまった。こんなに厨二病だとは知らなかったぜ、湯崎よ…。



「うるせぇなお前は!どうなんだよ?」


「けっ。…いや、だってあんた、あんだけ目輝かせといて何言ってんだよ、って感じ」


「くっ」


「植物好きなんでしょ?」



そう問えば。湯崎はわかりやすく嬉しそうな顔をして、すぐにはっとして顔を歪めた。

私をじろりと見下ろし、苦々しげに呟いた。



「………んだよ、笑いたきゃ笑え」


「いんやー、笑わないよ」



私はケラケラと笑って、湯崎の背中をバンバンと叩いた。

私くらいの力じゃ痛くないんだろう、少しも顔を歪めずに私の返事を聞いて、破顔した。



「そうかよ」


「おぉ!私と植物好き仲間だな!!」


「?!!やめろっ俺は仲間じゃない!!」


「はっはっはっまたまたぁ~」



仲間じゃないか完全に。何故違うと言うんだこの男!照れか?照れなのか?!見た目詐欺野郎のくせになかなか高度な真似を………。

私は湯崎と学校近くまで一緒に戻り、途中私は帰路につくために道を曲がった。



そして家について、湯崎に十数枚の写メを送りながら気付いた。







「あれ、そういえば、荷物……」







『あ?お前は荷物持ちに決まってんだろうが。』







奴のやはり見た目詐欺具合に、思わず笑ってしまった。


明日は水を撒いてやろう。ちゃんと量に気をつけて。







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