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枯らし魔×一匹狼×塩飴  作者: 沽雨ぴえろ
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癖は治らないぜ!

私は植物が大好きだ。小さい時から大好きだ。

水をあげれば生き生きとする植物は、育てがいもあったし。

花が咲けば香りを楽しむことも出来るうえに見た目も良い。

一石二鳥とはこのことだよね。


私は植物が大好き過ぎて、家でも学校でもどこでも花壇があれば水をあげてしまっていた。

綺麗な植物に綺麗な花を咲かせたくて、必死に水をあげた。

その癖は未だ治らず、ひと月前に高校に入学し、晴れて高校生となった今の私でも水をあげている。

変わりませんよ、私は。

いまもほら。

どんどん、どんどん、どんどん―――










まぁわかると思うけど、結果。

水浸しになった。そりゃそうだ。


私は植物が好きだが、花壇の植物以外興味がない。しかし、高校に入学してこの花壇を見つけてしまったのだ。

いつもなら即水をあげているところなのだが、今日まで上げていなかった。何故ならこの花壇、私が体育の時の近道としてしか使わない中庭の端っこにあるからだ。体育に遅れるとペナルティがあるから、時間のかかる水やりは出来ないのだ。

オーマイゴッド、おぉジーザス。

しかしだ、私は今その花壇の前に立っている。

ふふふ、実をいうとだ、今月に入って文化祭準備期間に入ったのだよ!!

なので、これを機に私はここが他クラスで噂のある一匹狼不良少年の縄張りにしてると聞いても、文化祭準備で使い残った水をあげていたのだ。植物への愛ゆえに!!


その結果、もう一度言うけれど、水浸しになった。

大事なことだからもう一度言う。

水浸しになった。

目の前には水溜り化した花壇。

思わず言った私に非はないと思う。



「…私じゃない私じゃない私じゃないんだ」



私はそう呟いてまたやっちまったぜ!と思いつつ現実逃避。

もう何度目か分からないほどこうなったけど、こうなった花壇をみて繰り返した。



「私じゃないぞ〜私じゃないんだ〜…」



自分でやっときながら毎回呆然としてしまう。体はショックで動かず、頭は現実逃避のためにとフル回転。マジでどうなってんだこの体。



「おい?そこに誰かいんのか」


「私じゃないんだぁ〜」


「誰だ?いんのか?」


「ふおおぉ…私ではないぃぃ…」



現実逃避しまくりと言っても致し方あるめぇよ……現にしてるし。

なぁんで毎回こうなるのかなぁ?水あげてるだけなのに。

私は近づく声にも気付かず一定の言葉を呟き続け、水溜り化に頭を傾げた。もちろん、頭の中でだけど。



「………コレは私のせいじゃない私じゃないんだ」


「あ?おいお前、そこで突っ立って何ブツクサ……って、てめええええええええ!!そこは俺の花壇じゃねええええええか!!!なんっだそのビチャビチャアアアアアア!!!」


「ひいっ…?!え、湯崎…湯崎ぃ?!えっちょっこの花壇湯崎が育ててたの?!!」



突然の怒声に体がびくついた。

聞き覚えのあるその声に振り向くと、なんとそこには3組の一匹狼不良少年湯崎がいるではないかっ!!ぶっちゃけというかマジで怖い!!関わりたくないわ!!

その怒りようと言葉に確認をとってみる。する時顔を引くつかせながら青筋を立てるという器用なことをやりながらずんずんとこちらに歩いてきた。

ひいっ!



「もしかしてたまに変なの植わってると思ったら、テメェかよ?!!塩飴なんか植えやがってえええ!!今度は何やらかしたんだ!!!!」


「ぎゃああああああ!来んな来んなぁあ!!…えっいや、文化祭で使う看板に使った塩水を少々…」


「枯らす気かお前はアアアア!!それ全部か、おいそれ全部なのかああああああ!!!少々どころじゃねえええええだろがぁぁあ!!つか塩水なんて使わねえだろうが!!!どけ!!!」


「ぎゃわっ!!」



ぐいっと湯崎と場所をチェンジするように私は花壇前から退かされた。

湯崎は少し長い金髪をかきあげると、花壇にしゃがみこみ塩水の入っていたバケツの中に掬えるだけでもと濁った塩水を移し始めた。もちろん、素手で。



「ちっ、面倒臭ぇことしやがって…」



と言いつつも生き生きと水を掬ってはバケツに、水を掬ってはバケツに、と繰り返していた。

…あら、ここが湯崎の花壇なのはあってたのかぁ。

湯崎は塩水を取り除くと、大きく土を削りバケツに入れた。

水の染みてないところまで掘り下げると、慎重に植物を植え直していった。

後で土足すのかな……。



「…うし」


「…おぉぉ…」



土の量が減ったので段差は出来ているが、それを除けば水浸し前の通りだ。すげぇ。

私は思わずしゃがみこんで土を凝視した。

私がやらかした事とはいえ、ぶっちゃけ取り返しがつかないと思っていた。それが元通りだ。コレは普通に凄いぞ。

私がスゲースゲーと馬鹿みたいに繰り返していたら、横から視線を感じた。



「んあ?」


「…………」



湯崎の存在本気で忘れてました。すんません。

湯崎は不機嫌そうに私を見下ろしていた。眉をしかめている湯崎さーん、とーっても怖いので緩めてくださーい!

そんな思いが通じたのか通じてないのか。

湯崎は不機嫌そうに口を開いた。



「お前、何組だよ」


「えっ…んー…んー…5組!」


「明らか考えてたじゃねーか!嘘つけ!!」


「エスパー……?!」


「ざけんなチビ!さっさと学年番号組名前ぇ!!」



チビ、チビだと?!確かにそうだけどムカつくぜ!!そしてさりげなく要望増えてる!!テンポいい!!

私は塩水の水溜りを作ったことを脇に置き、私も不機嫌そうに口を開いた。



「そっちこそいいなよ。名乗るなら自分からって言うじゃん!」


「これは自己紹介じゃねぇ!」


「じゃ、私も言わなくていいじゃんか!」



今考えると屁理屈だよな、うん。…ん?屁理屈か?まあいいや。

湯崎は嫌そうに、本当に、本っ当に嫌そうに名乗った。



「1年3組湯崎紫毅ゆさきしき


「知ってるけど」


「てめぇ……」



いやいや、アンタみたいな目立つ人知らない人のが少ないって。

私は下から湯崎を睨む様に見上げた。ちなみにこれは全く上目遣いに見えないそうだ。むしろ妖怪と言われた。解せぬ。



「ほぉら湯崎くーん番号はー?」


「馬鹿にしてんのか!いらねぇだろ番号なんて!」


「あんたが言ったんでしょーが!」


「くっ!32番だ…!!」


「言うの?!」


「言葉には責任を持て、だろうが!!次はお前だチビ!さっさと言え!!」



見た目に似合わず律儀なやつだった。うん、意外だよ。

私はムスッとしながら湯崎のように話した。



「1年1組にじゅ……萩原はじき」


「……おい待て何言いかけてんだ止まるな言え」


「………………10番」


「嘘つけ!テメェさっき20って言いかけただろうが!!」



私は湯崎のそのツッコミに膝をついた。両手もついた。あれだ、ガクって感じだ。

私は右手を地面に打ち付けた。



「なんでだ…なんであんたと番号反対なんだ……!!」


「あぁ?」


「32と23とか舐めてんのか…!!なんだこのいらねー奇跡…!!」


「テメェ……俺こそ要らねぇわ!!」


「うるせえええ!見た目詐欺は黙ってろ!!」


「あぁん?!んだとコラぁ!見た目詐欺だぁ?!」


「どー見てもそうだろうが!!!」



私は番号が反対なことにショックがあり過ぎて馬鹿この上ない口喧嘩をした。

私はその舌戦が終わると、無言で立ち上がって埃をはたいた。



「さて、帰るか」


「待て話は終わっちゃいねぇぞ萩原ぁ」


「ひいっ?!」



私は教室に帰ろうとして失敗し、鬼に捕まったのでした―――

まあ遡ると私が悪いんですけどね!!

私どうなるのかしらー?








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