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龍の住む洞窟

『な…なんじゃこりゃ〜!!』


雷斗が声を荒げてそう叫ぶきっかけとなったのはこの日から2日前のことである




いつも通り雷斗・水希・大地が放課後になりファーストプライスのドアを開けると目の前に京子が満面の笑みでこちらを凝視している


『みんな〜今日は久しぶりの大きな依頼よ!せっかくの3連休を丸々潰してしまうと思うけどいいよね!?ね!!』

『えぇ〜せっかく一日中ゴロゴロしてようと思ってたのにつまんね』


とめんどくさそうに顔をしかめる雷斗


『まぁ連休が潰れちゃうのはちょっと嫌だけど3日間かけるほどの依頼って久しぶりじゃない?!行ってみようよ!!』


久しぶりの大きな依頼に胸を膨らませている水希


『俺は報酬額によるな。3日もかけるんだからそれなりの金額ではあるんですよね?』


と少々にやけながら京子に聞く大地


『えぇもっちろん!50000ポスよ!!』


満面の笑みを崩さず京子はそう答えた

ポスとはこの世界の通過単位である


『おぉ!そんな大金じゃあ断る理由は無いな。俺は行くが雷斗はどうするんだ?』

『2人が行くって言うなら俺も行くが・・・』


本当は水希が行くので自分も行くなどは口が裂けても言えない


『良かった!また3人で行けるのね!?』


と嬉しそうに言う水希

実は勉強の予習をするためにこの依頼は引き受けるつもりはなかったが、雷斗が行くなら一緒に行こうなどという思いがバレないよう水希は必死に喜びを堪えた


『オーケー!決まりね。じゃあ明日の6:00には出発してもらうから宜しくね〜』

『は〜い』


3人はきれいに声を揃えてそう答えた




そして翌朝

雷斗達3人は新幹線や特急電車を乗り継ぎ、依頼の場所まで向かった


『ふぁ〜ねみぃ!やっぱり休日に早起きってのは何回やっても慣れねえな』


とめんどくさそうに愚痴を言う雷斗


『まぁしょうがないじゃない。場所が田舎なんだし』

『ってかこんな田舎に何があんだろうな』

『そうよね…洞窟調査としか言われてないし、詳細は会ってから説明するって言ってたし。そんなに重要なことなのかな?』


という2人の疑問に対し


『まぁ行ってみればわかるだろ!』


と相変わらず適当な返事で返す大地

それに対し苦笑している2人




そのまま数分が経ち


『次は〜***〜。次は〜***〜』


と駅員の低く、独特な声が車内に鳴り響くと水希が


『さぁみんなもうすぐ目的地の最寄り駅に着くよ!ほら、早く準備して!!』


とダラけた2人の男子を急かす


『ほ〜い』

『へ〜い』


という適当な声と同時に面倒くさそうに散らかしていた荷物をまとめた

そして駅を降りてから歩いて3時間ほど経った頃だろうか

ようやく目的地である山奥の一軒家に着いた3人は


『はぁ…何時間歩いたんだよ。もうギブだ』

『あぁ〜疲れた〜』

『もう無理。一歩も動けね〜』


と辛そうに家の前の地面に腰をついた

すると家の中から


『もしかして、君達がファーストプライスの雷斗君・水希君・大地君かい?』


と1人の40代後半で小柄な男の人が現れた


『おう…ハァ…おっさんが俺らの依頼者…ハァ…なのか?』


と息を切らしてゼェゼェ言いながら聞く雷斗に


『あぁ。いかにも私が君たちに依頼した安藤だ。とまあ挨拶はこれくらいにしてここで話すのもなんだし、中でゆっくり話そう』


と答える安藤

そうしてヘトヘトになった3人は言われるままに家に入っていき安藤と水希はイスに、大地と雷斗は床に転がり込んだ

水希がイスに座り息切れがおさまった頃に安藤が


『さて、改めて私の名前は安藤 研二だ。よろしく頼むよ』

『私は羽山水希と言います。ところで安藤さん、そろそろ依頼の内容を教えていただけませんか?』


冷静な顔で答える水希


『ああそうだったね』


そして安藤は顔を一回曇らせてから


『君達は龍洞と言う話を聞いたことがあるかね?』

『いえ、初めてですが・・・なんですか?それは』


不思議そうに聞く水希


『大昔に魔人がいたことはもうどんな人でも知ってることだろう?』

『はい、そうですね』

『で、その頃に魔人が巣として掘って住んでいた穴、そこは魔人が殲滅された後も人知れずひっそりと残っていたんだが、魔人もいなくなり人からも見つからないその穴は非常に個体数が少ないドラゴンにとって格好の場所だったんだ』

『ドッ、ドラゴン!?』


水希はつい驚きの声をあげてしまったが安藤はそれを気にせず話を続けた


『それに加え、ドラゴンは魔人の陰気に惹きつけられる特徴があるらしい。そうして魔人の住んでた穴にドラゴンが住みついた。この場所が龍洞だ』

『ド…ドラゴンって架空の生物じゃないんですか?!』


水希は目を見開いてそう聞いた


『一般的にはそうされてるね。しかし私は見たんだ!自分の何十倍もの大きさの翼をはためかせ、大空を悠々と飛ぶドラゴンを!今言った情報だって大昔の人々が我々の世代に向けて書き残したようだ。つまりドラゴンはこの世界に実在する』


しかしそこで水希の頭にふと疑問が浮かんだ


『しかしではなぜそこまで知ってて古代人達は何もしなかったのでしょうか?』


この疑問に対し安藤は


『これはあくまで私の仮説だが…

大昔はまだ今よりドラゴンの個体数が多く、一つの龍洞に何匹かのドラゴンがいた。そのために強力な能力者達が何人も倒され、けっきょく全てのドラゴンを倒すことはできなかった

と私は考えている』


それに納得したのか水希は首を頷かせながら


『なるほど…そしてその龍洞がここの近くで見つかり、ドラゴンがいるかもしれず危険なので私達で調査をしてきてほしいと言うわけですね?』

『察しが早いと助かるね。そういうことなんだ』

『しかし、なぜここで説明するような回りくどい事をしてまで情報流出の危険を減らそうとしたんだ?』


ここに来てようやく再起した大地が安藤に対して率直な質問をする


『もしそうなり、一部の学者にドラゴンの存在が知れて、ドラゴンがこの世界にいる事が世界的に広まってしまってはどうする?間違いなく解剖や実験などの材料にされあっという間に絶滅してしまう!私は昔見たドラゴンの勇ましさに憧れずっとそれを糧に生きてきた。だから絶対にドラゴンを絶滅させるようなことはしたくないんだ』

『そういうことなら私達も、もしドラゴンに会っても出来るだけ気概を加えるなということですね』

『あぁ。よろしく頼んだよ』

『OK!わかったぜおっさん!』


さらに大地から遅れてようやく雷斗が起き上がり依頼を改めて承諾した

すると安藤はホッとした顔で


『良かった、助かるよ。でも今日は疲れているだろ?調査は明日からでどうだね?』

『おう…すまねぇなおっさん。まだヘトヘトだあ』


そう答える雷斗に


『っもうだらしないわね〜男ならシャキッとしな…』


と水希が言うと雷斗が返事をするより早く安藤が


『いやいや!こんな山奥に無理矢理来させてしまったんだ。ゆっくり休んでからにしてくれ』


と言った

さすがに水希も


『じゃあ…そういうなら…お言葉に甘えさせていただきます』


と雷斗に負けたような悔しさを覚えながら渋々そう言った

横では雷斗がざまあみろと言わんばかりの笑みを水希に向けている

すると、安藤が申し訳なさそうな顔を浮かべながら


『だが、こんな山奥たまからホテルが無いんだ。だから君達にはあそこの部屋で寝てもらうんだが…ベッドが一つしかない。誰が寝るかは君達で決めてくれ』

『じゃあここはレディファーストってことで私が!』


と一目散に水希が言った


『こういう状況の時、布団を占領出来るのっていつもお前だよな』


大地が横からぐちぐち言うと


『あら?か弱い乙女を床で寝させるっていうの?!』


と水希はにこやかに答えた


『か弱いんじゃなくて怪力ゴリ…』


と雷斗が文句を言おうとした瞬間


『さぁっ明日も朝早いんだし!もう寝よっ』


と水希が割って入る

そしてけっきょく布団は他の2人の反対を押し切って水希のものとなった


『じゃあ雷斗、大地!おやすみ〜』


と水希がご機嫌そうに言うと


『おやすみ』


と少し低いトーンの声で雷斗と大地も返事をした

しかしその後も雷斗と水希は


『あぁ〜布団はフカフカで寝やすいんだろうな〜』

『あぁ〜この布団フカフカで気持ちいいな〜』


と嫌味を言い合っていた

このくだらない言い合いでこの日は終えた




そして翌日、つまり今日の朝に3人は車で龍洞の入り口まで安藤に送ってもらった。

そして安藤に


『みんな着いたよ。ここが龍洞だ』


と言われて3人が見てみるとそこには今まで見つからなかったのが不思議なほど、大きな洞窟があった。それは大きな口を開けた魔人がこちらを恐ろしい形相で睨んでいるような形をしていた。


『うわっ!』


3人は驚いて思わず声をあげてしまった


『はははっ。やはりどんな人でも最初にこれを見た時はそんな声をあげてしまうよね』


安藤は少し笑みを浮かべたがその直後に真面目な顔に切り替わり


『私がついて行けるのはここまでだ。この中には本当にドラゴンがいるかもしれない。もし、そうだとしたら君達には命の危険がある。気を付けてくれ』

『ご心配ありがとうございます。昨日もしっかり寝させてもらいましたし、大丈夫です!』


(しっかり寝れたのはお前だけだ!)

大地と雷斗は心の中でそう叫んだ


『そうか…すまないね。では、健闘を祈る』

不安そうな顔で安藤がそう言うと

『おい〜ッス』

『は〜い』

『りょ〜かい』


それぞれ3人が個性的な返事をすると洞窟の暗闇の中に消えて行った


『真っ暗で何も見えないな。何か懐中電灯の代わりになるような物でも持ってないか』

と大地が2人に問いかけると

『物は無いが光は出せる』


と雷斗が大きく胸を張って答えた


そう言って指を鳴らした後に右手と左手に30cmほどの隙間を開けるとその間にバチッバチッっという音と共に電気が流れた


『これは触ったらたぶん感電死するから気を付けろよ』

『隙をついて殺したりするんじゃ…』


と言おうとした時に大地の体が硬直した


『ん?どうしたの大地?』


横で不思議そうに聞いた水希もその原因に直ぐに気づき


『え…』


と思わず声が出てしまった

雷斗が先に硬直した2人の状況が全く分からず混乱して、ふと前を見ると


『んな…』


目の前にはビル4階ほどの大きさにもなるドラゴンがいた


『な…なんじゃこりゃ〜!!』


雷斗は洞窟の出口まで聞こえるかも知れないほどの大きな声で叫んだ

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