合う
「リュウグウ計画の潜水士……誰にします?」
「取り敢えず、那覇君は確定でしょう。彼はとても優秀な成績ですし、何より経験がある」
「問題は後の二人…………ですね」
会議室は重々しい雰囲気だった。当たり前と言えば当たり前だ。あんな事があったのだから。
つい先日までは最有力候補がいたのに今ではデスクの上ではなく、ベットの上だ。
「僕はこの人を推薦しますね」
色々なデータが入力されている結果用紙をビラビラと振る。
そこには……………
「はい……はい……わかりました………ありがとうございます……………それじゃ」
笠谷電話を切ると呟いた。
「阿賀に……阿賀にどういやいい…………………クソッタレ!!!」
壁を叩く音が一回、病院の廊下に響いた。
日の当たるベットの上で俺は考えていた。
「今、こうしてる間に俺は何が出来る?」
考えるまでもないな。俺は引き出しからリュウグウ計画の資料を取り出した。
資料を取り出して読もうとした瞬間、誰かが入ってきた。
「………よぅ…………頭は冷えたか?」
「おかげさまでな。悪かったな、あの時は取り乱して」
「殴ると治るって、お前は昔の家電か」
「あいにく俺は電気だけじゃ動けないんだか」
「燃費はお前の方が悪いだろうな」
このままじゃ話が進まん。俺は早々に話を変えることにした。
「いや……まぁ…………ちょっとな」
歯切れ悪そうに言った。
二人は暫く黙っていた。
沈黙は予想以上に長く、日の光がさす窓辺は予想以上に眩しかった。
別に沈黙が苦手な訳じゃ無い。でも流石にこの長さは異常だ。明らかになにかあるだろうな。
「言いにくそうだな。んじゃ俺も一つ、言わせてもらうぞ」
キョトンとした顔をしてる笠谷に俺は言った。
「お前がどう思ってるかはともかく俺はお前が言うことを受け止めるつもりだ」
ふぅ、とため息をつき、一度言葉をきった。
「どうせ、お前は受かったんだろ」
俺と笠谷は同じ部署だから仲良くなったのだ。
「俺の分までやってくれよ。約束だ!」
拳を前に出す。
「……………おう!不甲斐ないお前の分までやってやるよ!」
「不甲斐ないは、よ・け・いだ!」
拳を突き出す。
「しっかりやれよ!」
笠谷もそれにあわせ、拳を突き出す。
そしてコツン、という音が病室に響いた。
それから数ヶ月が経ち、阿賀は退院した。
それは笠谷が深海へ行く日と同日だった。