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深海ソリティア  作者: 井石 知将
6/11

迷う

この調子ですとかなり続いてしまいそうです

……………こ……こ……………は…………?

重たい瞼を上げると、そこは真っ白な部屋の中だった。おそらく病院だろう。

「起きました………阿賀さんが起きましたよ」

誰かが叫んでいる。

……あぁ。俺は倒れたのか………。

やっと頭が動き出し、後悔という恐怖が押し寄せてきた。

「くっ…………そぉ…………!!」

こんな……こんなことで…………終わるのか?俺は、俺は………!

「びっくりしましたよ。急に倒れちゃうから」

不意に声をかけられ、その声の主を見た。

中山か………それに後ろには赤羽に笠谷がいた。

「悪いな……こんな時に、お前ら技術部の方はただでさえ忙しいだろうにな」

笠谷と赤羽も悪いな。と付け加えると俺は体を起こした。

「どうしたんですか?」

「ん?あぁ、ちょっと試験に行くんだ」

「あんた………何言ってんの?」

赤羽の声には怒気が混じっていた。知ったことか。俺は壁に手を当て、ゆっくりとすすみだす。俺は………深海(うみ)へ…………!!

突然のことだった。俺の前になんの前触れもなく、拳骨が飛んできた。それは俺の頬を捉えると鈍い音を出し、俺を地面に叩き落とした。

俺を殴った笠谷は顔から湯気を出しそうな程真っ赤だった。

「ふざけてんじゃねぇぞ!!!てめぇ!どんだけ人が心配したと思ってんだ!その体でどこ行くって?何するって?どうなるって?ズタボロになって終わりだろ!さっさと休め!このバカ!」

赤羽は黙っている。中山は……口を手で覆っていた。

「んなこと………分かって………んだよ……それでも………やらなきゃ……結果がなきゃ次に……進めねぇ……んだよ………」

「そこまでして自分を進ませたいのか!?お前はよ!」

立ち止まれないんだよ………結果から生まれる進むべき道が……ここで……止まった……ら…狂っちまう……だから!

「頼むから……俺の邪魔すんじゃ………ね………ぇ…………!」

「そこまで急いで、見える景色は綺麗なのか?」

笠谷は言葉が出ない俺に言った。

「行くまでの道を楽しめよ………そんな苦しそうなお前………見たくねぇんだよ………………俺達(こっち)はよ」

親父は苦しんでいたか?

親父は風邪を引いても、職場に行ったか?

親父は……………


一時間後、俺はだるい体を起こし、周りを見た。誰も部屋にはいなかった。外に目をやると子供が笑って遊んでる。その母親らしき人も笑ってる。それに比べて俺はどうだ?………てんでなってないな。

結局、俺は…………前に進むことに焦っていたんだな。………立ち上がることが、出来なくなる気がしてたんだ。俺は。

トイレ行こ。何と無くそう思いフラフラと立ち上がった。

「阿賀さん!どこへ行くんですか?」

病室を出ると、椅子に座った中山に声をかけられた。

「大丈夫。別に試験場に行くつもりはないからさ」

ホッと胸を撫で下ろした。なぜここまで心配するんだ?俺、そこまで危なっかしいか?

「悪いな。風邪で変なこと言ってたと思う」

「そのことなんですが…………」

?………あぁ……倒れた原因が分かったのか。



「笠谷くん!大変だよ!」

二十分探して、病院の喫煙所で見つけた笠谷を多々和野は呼びかけた。

「なんですか?先輩」

煙草の煙が昇り、目の前の景色を黒くする。

「阿賀くん……退院に四ヶ月はかかるって…………」

「そうすか……………良かったです」

さすがにもう我慢できない。自分の友達が倒れたのに殴り飛ばして、どっか行っちゃうし。やっと見つけたと思ったら入院して「良かった」?ありえない!

「どういうつもり?笠谷くん?」

「見て気づかなかったんですか?」

へ?何に?

「あいつ、今、おかしいんですよ。普段なら夢のためならどうなってもいいなんて言わない」

少し間をあけると決心したように言った。

「頑張りすぎなんですよ。だから、少しぐらい休んだっていいじゃないか………なんて、思っちゃったんですよ」


それぞれが自分の心配すべきものを心配してる頃、リュウグウ計画の潜水士が決まった。

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