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深海ソリティア  作者: 井石 知将
1/11

向かう

この話は色々な人にある夢の話です。

夢を探してる、夢をみている、夢に向かってる人がこれを見て前に進めたらなぁ。と思います。


俺も夢を目指すぞぉ!

チーン。

俺は(リン)を鳴らす音が響いた。

写真を飾っただけの粗末な遺影の中の親父に向かい、手を合わせる。

俺の名前は阿賀悠斗だ。

俺は現在、一人暮らしをしている。大学を卒業して、就職先が見つかったため、母親に頼み、一人暮らしを始める事にしたのだ。

「行ってくる。親父」

狭いアパートの部屋、俺の声が響くだけで遺影の中の親父は俺に返事をしてはくれなかった。


突然だが、俺は駅に向かっていた。

東京で暮らし始め、半年ぐらいになるだろうか。

俺の就職先と言うのは…………日本深海研究センターだ。

名前を見ての通り、深海、主に日本海溝などの生物や鉱物、水に含まれる成分などを調べている。

「あ、悠斗さん!」

振り向くと髪をしばって、少し背の低い女がいた。

仕事場の仲間、中山加奈。

中山はいじると本当に面白い同期で、こいつは主に機械の調整などをしている。

「もうすぐだね。例のアレ」

深海探査・リュウグウ計画。

深海の定義、つまり深海の深さは曖昧だ。

海の深さは、上から、表層、中深層、ゼン深層(ゼンはさんずいに斬と書く)、深海層、超深海層の五つに大きく分かれいて、中深層からが深海と一般には言われてる。

中深層と言うのは海上から200mからさす。つまり200mも潜れば深海へいったことになるのだ。まぁ、それが『一般論』というだけだから特に区分はない。

俺たちが目指すのは深海8050mだ。

ちなみに、日本で有人探査機で、最も深く潜ったのは、深海探査機・海風6500だ。

もちろん名前の通り6500m潜ることが可能。

世界ではスイスのパチスカーフ・トリエステの10900mが最高だ。

つまり成功すれば、日本一の深海探査機になる。

そしてその深海探査機の設計をしてるのがこの中山加奈だ。

「本当、中山は凄いよな」

「え、なにが?」

「リュウグウ計画の探査船の設計はほぼお前が考えたからさ」

そう、こいつがほとんどのアイデア考えたのだ。

今回の深海探査機の大きな特徴は量産が可能な点だ。

ナノカーボンチューブを覆うように、近年発見されたBEC状態(ボーズ・アインシュタイン凝縮状態)という特殊な状態の炭素系物質を使用している。

BEC状態の物質は通常の方法では壊せない。と考えられている。

加工が今までより低予算で行えるため大量生産が可能だと思われる。

それを深海探査機に利用したのがが中山だ。

こういう奴を天才と言うのだろうか。

「ところで朝、寝坊した?」

ん?と中山は首をかしげる。

「だってよだれのあとが……」

「え!ウソウソ!ど、どこどこ!?」

プ……ククク……やばい、笑いが止まらねぇ。

「冗談だよ。冗談」

こういうとこ見てると、ただの天然だ。

「え、ア!ジ……冗談。……良かったぁ」

「悪かった。中山の反応はいつも面白いから」

「私はよだれのあとなんて残さないよ!……………阿賀くんにそんな恥ずかしいとこ見せられないもん」

小声でよく聞こえなかった。

「ん?どうした?中山?なにか言った?」

「え!な…なな、何でもないよ!べ……別に」

そう言われると気になるが……ま、いいか。

さぁ、もうすぐつくぞ。

小走りで俺の前に中山がまわると、振り向きながら言った。

「今日もお仕事、頑張ろうね!」

「ああ!でも、後ろ歩きしてると転ぶぞ」

「平気。平気。…………キャッ!」

言わんこっちゃない。中山は尻餅をついた。

溜息と一緒に手を出す。

「大丈夫か?」

「いたた………うん。ありがと」

中山は俺の手を握った。


俺は技術担当では無い。

俺は……潜水担当だ。

今回の海底探査に行けるかはもうすぐある試験で決まる。

突然だが、親父の死因は謎だ。死体は見つかってない。俺は……親父の仇を…………。

さて、改めて自己紹介。

俺、阿賀 悠斗は日本深海研究センターの一員だ。潜水担当だ。

そして、俺はここでの研究が好きだ。


親父も、こんな風にワクワクして仕事してたのだろうか……?


俺は深く深呼吸をした。無意識にだ。何と無くだ。

今日も俺達はただがむしゃらに深海(カイメン)を目指して泳ぐ。

それが苦しくても、途中ではやめられない。やめたくない。

だからひたすら泳ぐ。

暗闇という深海(カイメン)へ向かい………。

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