坊ちゃまサバイバル
・アンチBL王道学園の簡単説明
1.山奥の閉鎖的学校(男子校しかも全寮制)
2.みんなホモ
3.生徒会などの役職付きはアイドル的人気
4.役職付きはみんな転入生に惚れる運命
5.最後は転入生でなく脇役にみんな惚れる(移り気がヒドイね)
6.会長は大概肉体的マゾ
7.副会長は大概精神的マゾ
8.会計はちゃら男かショタ(個人的にはショタがいい)
9.書記はワンコでコミュ障
10.風紀委員長は真面目君の割に強い(もやしはいない)
11.爽やかスポーツマンの腹は真っ黒
12.不良も大概肉体的マゾ
夏休み、BL王道学園の王道ファミリーに無理矢理参加させられたクルージングで、突然の嵐に襲われた。
そして無人島に漂着してしまったので、三日三晩ほど、海辺で黄昏れることにする。
「おいソコのボンクラ! 馬鹿なことしてないで手伝え!」
せっかく書いた無人島生活一日目の日記。その冒頭を早速覆せと言ってくる生徒会長様は鬼である。そんな鬼に抗議の声を上げたのは僕ではなく、金髪碧眼の美少年である副会長であった。
「会長、潮が満ちてきたせいで、クルーザーの船底に開いた穴から海水が侵入してきました。ボクは肌が弱いので濡れたくありません」
「我が儘言うんじゃねぇよ副会長! なけなしの物資が海水に浸かったらどうすんだ!」
「あ、いけません。そろそろ夕方の6時、紅茶の時間ですよ」
「おいぃ!!? クルーザーから荷物運ぶの手伝えって言ってんだろぉお!!」
いつも俺様な会長の涙声は、この夕日に良く似合うBGMである。しかし、物資が濡れるのは困る為、仕方なく僕は動き出した。あとで日記を書き直さなければならないな。
「畜生……、どいつもこいつもマイペースにやりやがって! なんで俺様だけこんなに大変な思いを……」
「そりゃ、免許もないのにクルーザーの運転していた会長がいけないでしょう。会長がしっかりした運転士を使ってれば、こんな状況にはなりませんでしたから」
「うぐっ」
王道転入生に「船を運転する俺カコイイ」というところを見せたがった会長は、免許も持ってないくせに僕達を乗せてクルーザーを海に出した。
そして嵐にあい、にわか仕込みの会長の運転では対処が出来ず遭難。幸い無人島に漂着したが、無線機の扱いがわからず、救難信号も出せずに事態は困窮していた。携帯も通じないため、万事休すだ。
そんな経緯もあり、会長は今や僕達遭難者の中で一番格下の位置付けである。王道ファミリーに嫌われまくっている僕よりもね! フハハハハ!
一通りの資材を外に出し、僕と会長はそれを運ぶ、目指すは無人島の奥で王道転入生が見付けた廃屋だ。
土壁で作られたその家は随分古く、ヒビ割れた壁は所々崩れ、屋根は無くなっていたが、船に積まれていたブルーシートを屋根代わりにして、一先ず雨風を避けることが出来るようになっていた。
「遅かったですね。紅茶が冷めてしまいましたよ」
そんな廃屋に不似合いな若い英国紳士は、船から持って来たタオルケットの上にちょこんと座り、僕達を迎え入れた。
「副会長! てめぇ、どの口がそんなことを……」
「この口ですが何か?」
コテンと首を傾げて、副会長は会長の言葉を遮る。この人が腹黒なのか天然なのか、僕はいまだに判断がつかない。
「ふぅ、それにしても、ここは人が住むところではありませんね。まったく、どうしてこんなところで過ごす羽目になったのでしょう……。紅茶を飲むのも一苦労ですよ。
まあ、それは置いときまして、せめて壁の穴くらいはどうにかなりませんかねぇ?」
良く回る副会長の口から放たれた言葉は、会長にダイレクトアタックを与えたようで、会長は言葉を詰まらせたあと「わぁったよ! 壁の穴くらい俺様がなんとかするよ!」と、半泣きになりながら外に駆け出していった。
結構責任を感じているようだ。
しかし、僕が副会長と二人きりになってしまった。どうしよう、今からでも会長を追うべきだろうか……。
「ところでそこの貧相な君、僕の愛しい人は不良さんとサッカー部さんを連れて探検に行ってしまったし、風紀委員長さんと書記さんは食料を、会計さんは水を捜しに行ってしまって、食事の用意とボクの話し相手をする人がいなくなってしまったんだ。どう思う?」
「……一先ず、その冷めた紅茶を飲んだら、僕が食事を用意します」
さっさと会長を追っていればよかった。
船にあった非常食は、今の人数では三日も持たないだろう。僕は、今日の食事にどの程度出すべきか迷っていた。風紀委員長と書記が食べ物を見付けて来てくれたらいいが、彼らはお坊ちゃまだ。あまり期待は出来ない。そして、水。飲み水は一リットル五本あるが、あのお坊ちゃま達がこの貴重な真水を飲むだけに使ってくれるだろうか? とくに目の前の副会長なんて、潮で肌が荒れるからなどと言い出して、身体を洗うのに使いかねない。……会計が真水を見付けて来てくれればいいんだが……。
「貧相な君、食事はまだかい? まだなら何かお菓子を出してくれないかな?」
……きっと「パンがないならお菓子を食べればいいじゃない」といったお姫様は、副会長のような人だったに違いない。
「お言葉ですが副会長、僕らは明日の食事すらままならない現状です。そのような嗜好品は用意出来ません」
「貧相な君は冗談がわからないようだね。本気で言ってはいないよ。非常食が節約しても三日くらいしか持たないのも分かっているから、大丈夫だよ。
ただ、ボクって黙っているのが苦手なんだよね。喋るのを止めたら死ぬ病にでも罹っているんじゃないかと本気で心配したこともあるんだ。だから、とにかく何か話すことないかな?」
「そうですか、とりあえず黙っていて下さい」
「だからボクは喋るのを止めたら死ぬ病……」
「死ねるものなら死んでみろ」
僕はそれだけ言うと副会長に背を向けた。後ろではまだ副会長が何か言っているが無視だ。めんどくさい。
そうこうしていると食料調達班である風紀委員長と書記が帰ってきた。書記の手にはミニ豚っぽい緑色の何かが抱えられている。
「……」
「……」
暫く、書記と無言で視線を交わす。いや、聞きたいことは沢山ある。その豚どうしたとか、ていうか頭に角あるけど豚なのかとか……。でも何か訴えてきているようなので、まず何とかそれを読み取ろうと思うんだ。
さて、なにか無言で訴えてくる書記、その手には豚らしきもの……、考えていると書記の腹がグウゥッと鳴った。……分かったぞ! 書記は肉食べたいと訴えているんだ!
「わかりました。今捌くのでその豚貸してください」
突然書記は跳び下がり、豚を力一杯抱きしめて首が取れそうなくらい頭を振る。なんだろう?
「ほら、血抜きもしなくちゃ駄目なんですから、貸してください」
僕が立ち上がると書記と僕の間に風紀委員長が入り込んだ。
「まて! これは食用ではないんだ! 食料ならここにある」
言葉と共に差し出された袋には見たこともない木の実らしきものが沢山入っていた。パッションピンクとか緑とオレンジの縞模様とか、これは食べられるのだろうか?
「てか、お肉はソレだけじゃないですか」
僕が豚を指差しそういうと、二人と豚はフルフルと振るえて僕を睨み付ける。
「これ! 肉! 違う!!」
「ピギィーを食うというのか! こんなに可愛いピギィーを食うと!? お前は鬼か!?」
「ぴぎぃー!!!」
さて、貴重な食料を食べないと主張し、しかも名前まで付けているとはどういうことか……。僕はコメカミを抑えてため息を付くと、ピシッと外を指さした。
「うちに豚を養う余裕はありません、食べないのなら捨てて来てください」
「うー!」
「鬼! 鬼!」
「ぴぎぃー!!!」
誰かこいつら何とかしてください。そう思って副会長を見ると、副会長は口を尖らせてお口にチャックのジャスチャーをして見せてきた。どうやら黙れと言ったことを根に持っているらしい。
……まったく、これがあの学園の生徒の憧れをその身に集める人気者集団の実情だと知れば、少しは親衛隊なんて連中も減るのではないか? 副会長は言わずもがな、書記は寡黙というよりただの口下手だし、風紀委員長はしっかりしているようで小動物や可愛いもの好きでそれに関しては暴走しがちだし、……あれれぇ? むしろ学園ではなんであんなにカリスマ扱いされていたんだろう。
少し途方に暮れていると、外からズルズルという不信な音が聞こえてきて、僕らはキョトンと顔を見合わせて外に出た。
「たっだいまぁ~!」
そう言ってニカリと笑う王道転入生の姿はなんといえばいいのだろうか? 彼はその両手でさっき出て行った会長をお姫様抱っこし、その背に豚と人が合体したような白目を剥いた化け物を背負っていた。その後ろではお供の不良と爽やかスポーツマンが、ぐったりとした様子で歩いている。
「いやあ、探検してたらさ、ゲームに出てくるゴブリンとかスライムみたいなのがいて、おっもしれぇーの! で、その途中で会長の悲鳴が聞こえてさぁ、慌てていったらこのオークっぽい奴に襲われてたから助けといた! んで、オークって豚っぽいし食べれそうだから、一応持ってきたぜ! えらいだろ!」
……うん、だからかな? 会長が恋する乙女みたいな目で王道転入生を見ているのは……。ってかさ、緑のミニ豚とか、変な木の実でね、なんとなく変だと思っていたけど……。
「ここは一体どこなんだーーーー!!!?」
そんな叫び声も届かないような場所で、会計と呼ばれる役職を持った少年は体育座りをして川を見ていた。すっかり日の沈んだ空には、流星のような光の線二つが何度も何度もぶつかりあい、強い光を放っていた。しかし、会計にとって今はそんな異常な空に構っている暇はない。
「うう、みんな迎えに来てくれよぉ、帰り道が解んなくなっちまったよぉ……」
王道ファミリー、ただいま一名迷子。
ノリだけで出来た小説です。お目汚し失礼いたしました。
ここまで読んでくださりありがとうございました。




