プロローグ
何度も転生を繰り返す中で、私は彼を捜した。時には地球に生まれ変わることもあったわ。その時はとても期待したけれど、どこにも彼の姿はなかった。
まさか彼は本当に消滅してしまったのではないかしら。
そんな不吉な想いに心が乱れた。
ううん。大丈夫。彼は消えたりしてないわ。ああだけど、どうしてめぐり逢えないの? 私たちは結ばれる運命ではないの?
数えきれないほど泣いた。数えきれないほど一人の夜を過ごした。地球ではいくつもの国を旅し、精霊界では命尽きるまで歩き続けた。それでも彼はいなかった。
哀れな女。
恋人を連れた女たちは私をそんな目で見た。
幻を追いかけている狂った女。
近づいて来た男たちはそう言って離れていった。
なんとでも言いなさい。私が彼を愛したことは事実なの。彼が私の手を取ったことも本当なの。これは私の大切な記憶。
お姉様も教えてくれたわ。
「自分のために命を懸けた男がいるなら、それがアナタにとって初めての恋でも最後の恋よ」
私は意味が分からなくて小首をかしげた。
「どうして?」
するとお姉様は笑って答えた。
「女にとってそれ以上の男はいないからよ」
だけど何千年も過ぎてしまえば、涙もやがて枯れてしまうわ。つらくて心も病んでしまう。
もう忘れたい。
彼のことを忘れて生まれ変わりたい。
神は私の望みを叶えてくれた。