勇気
初恋は叶うのですか?
どんなに辛くても
努力は報われるのですか?
貴方は
誰ですか?
どうして?
何でこれが恋なの?
何で私は貴方に惹かれたの?
何で貴方は私を受け入れたの?
何で?
どうして?
分からないよ?
教えてよ、いつもみたいに・・・・
ねぇ?先生
私の好きな人。佐々木優治。職業、高校の数学教師。年、29歳。バツ1。
この内容・・・終わってる。この恋・・・。
「篠崎!!」
なーんて事考えてたら大声で名前を呼ばれる。声の主は・・・そう。佐々木先生。
「はい。」
「何ボケーっとしてんだ!!この問題解け。」
そう言われ黒板に目をやると、そこには簡単な問題が書かれていた。
「はーい」
もともと私は真面目じゃない。先生に怒られたりなんて日常茶飯事だった。
なんて事を頭の隅で考えながら黒板に字を書いてゆく。その瞬間教室中にどよめきが走る。
「終わりました。」
教室の後ろにいた先生に言って振り返ると、ため息をつかれる。
「お前な・・・たまには俺に聞く事できねーのか?毎回毎回すらすら問題解くんじゃねーよ。」
「解る問題を先生に聞くほど、私バカじゃないんで。」
私のこの反抗的な態度が先生達では気に入らないらしい。この人を除いては・・・
「ったく・・・可愛げのねー生徒だな。お前は。」
「そうゆう生徒好きなクセに。少しぐらい手のかかる生徒が1番可愛げがあるんでしょ?」
「お前は度が過ぎてる。」
そう、私は佐々木先生のお気に入り生徒。先生が高校生の時と同じらしい。私は嫌だけど。
何時ものような会話をしていると、教室中の女子の視線が突き刺さる。「何であんな可愛げの無い、奴がお気に入りなのか」と言うような、鋭い目で。
女子高も大変だ。嫉妬などの感情で凄く人間関係がドロドロしている。こんな場所は1番発作が起こりやすい。特にこの教室は。
「篠崎?どうした?顔色悪いぞ。」
いつまでたっても席に着かない私を不審に思ったのか、先生は優しく問いかけてくる。
「……ッ。大…丈夫…です…ちょっと保健室行ってきます…」
発作は厄介だ。クラスの人の視線が痛い。体にチクチク突き刺さる。
息が…苦しい。
視界が…霞んでゆく。
すぐにこの場から離れないと…
「そうか、気をつけろよ。」
ズキッ
あれ?
今一瞬胸が…
気のせいか……
授業中。誰もいない外の階段に向かう。ここは夏は涼しく、冬は風に当たりたい時にピッタリな場所。
階段に座り込んだ私はポケットから小さなビンを取り出し、白い錠剤を3,4粒取り出す。
「ぁっ……」
何時もより慌てていたのだろう。うっかりして錠剤を落としてしまう。
(ダメ…………コレがないと…)
私は急いで錠剤を拾い、口に含みガリガリと噛み砕く。相変わらず何も感じない。きっと固いのだろう。固形だから。だが私は痛覚を感じない。
勿論……ってのも可笑しいが、感情も感じない。
タノシイ…?
クルシイ…?
カナシイ…?
オカシイ…?
感じるのは恐怖だけ。何をするのも怖い。
「篠崎?」
不意に後ろから声を掛けられ振り返ると佐々木先生が立っていた。
「先生?」
私は急いで瞳に浮かんでいた涙を制服の袖で拭いた。
「泣いてたのか?」
「何言ってんの?私が泣くわけな……」
何時もみたいに少し強がってみた。そうすれば皆ホッとした顔をするから。でも、今日は違った。
先生は私に近づき頬に手を置く。
「な…」
「じゃあ、この涙は何だ?」
そう言われて初めて気づいた。私は泣いていた。必死に我慢していた涙が、溢れ出てしまっていた。
「先生……」
「どうした?何が怖い?」
先生はまるで子供を慰めるように私に優しく問いかける。
「………」
「ん?」
「全部…何もかも分からないのも、感じないのも、全部が怖い…」
気持ちを口にした途端、涙がボロボロと溢れてきた。先生は私を自分の方に引き寄せる。
「先生っ…」
「泣けばいい…怖いなら怖くなくなるまで俺が傍にいてやるから。だから、泣けばいい」
「…っうわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
先生が好きです。
優しくって、温かい。
私に生きる意味を教えてくれた
そんな先生が好きです。
「本当に帰らないつもりか?」
「うん…帰りたくないの」
先生は私の前に座って優しく問いかける。もう時は20時を過ぎようとしていた。
「何があった?」
「今日…来るから…」
私の言葉に先生は頭に?マークを浮かべた。その顔は眉間に皺が寄り、端正な顔が台無しだった。
「親の彼氏が。だからどのみち家に帰っても追い出されるだけだし…」
「いつもはどうしてるんだ?」
「病院。薬とかもらったりしてるから」
すると、突然先生が黙り込んでしまう。私をじっと見つめて。
「何?」
「お前って…綺麗な目ェしてんだな」
「は?」
予想外の言葉に思わず間抜けな声を出してしまう。
「いや…お前ハーフだろ?確か父親がフランス人の家系で…」
「うん。お母さんは日本人。でもそれが何?」
「じゃあその髪も目もお父さん譲りか?」
私の髪は染めたんじゃないかと思う以上に金に輝いている。そして瞳は澄んだ青色をしていた。
「うん。見とれちゃった?」
私は意地悪そうに先生に聞くと、先生は顔を真っ赤にして顔を背けた。
「照れてるの?」
「うるせぇな。大人をからかうな」
「あははは」
ピリリリリリリリリ
その時急に私の携帯が鳴る。ディスプレイには《母》と映されてあった。
「もしもし?」
『結衣?そろそろ帰ってきなさい。10時までには帰ってくるのよ』
「分かった」
『あと、お母さん明け方には出かけるから』
「どこ行くの?」
『旅行よ。1ヶ月ぐらい彼氏とハワイ行くから、生活費は机の上に置いておくわね』
「うん。分かった。気を付けてね」
私がお母さんと会話を終え、電話を切ると先生が怖い顔をしていた。
「先生?どうしたの?」
「お前は何とも思わないのか?」
「お母さんの事?うん。何とも。私感情無いから」
先生は気付いたかな?私が無理して笑ってたのを。
「そうか……」
そう言った顔が、納得していない顔だったから…
「私帰るね。」
「家まで送る」
先生はそう言って私を車に乗せて家まで行ってくれた。
「本当にここでいいのか?」
「うん。大丈夫。ありがとう先生。」
無理して笑ってる…こんなの日常茶飯事。だから別にどうってことない。
「何かあったら言えよ?」
「先生ったら…彼氏じゃないんだし」
先生は本当に優しい。
だから、その優しさに少し、期待してしまう。
ねぇ、私は勉強は教えてもらわなくても出来るけど、
こんな時はどうすればいいの?
先生。教えて。
私が告白しても迷惑じゃない?
教えて。
勇気が出ないんだよ…